Recording day #064

10月17日 火曜日 雨

猫の手を借りたいほどいろいろやることがあって、集中しすぎて、音の壁の向こう側まで聞こえるようになって、冷たい雨が降り注いでいるとき。嫌な予感。

若い頃、とってもお世話になった人が亡くなる。ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ。ちょっと待ってくれよー。まだ何にも返してないでしょうが。あんた葬式で「ゆきてかえらず」歌ってくれって、冗談になってないって。てか、オレ、ツアーだから葬式行けないでしょうが、、、、、、。そんな約束さえ果たせないでしょうが。バカ。

しばし10分くらい、頭の芯までじんじん痺れるのを感じた。あんたさぁ、ずいぶん年上なのに(女性に失礼だから訊いたことないけど)タメ口きいて、わがまま放題のオレをいつも愛で包んでくれて、美味しいものいつも喰わしてくれて、オレとバンド、いや世界やこどもたちや動物や音楽のためにいつも溢れる愛を注いで、、、、、、。病気だったのに誰にも云わないなんて、、、、、、、、バカ。死んでんじゃねーよ。

しばらく連絡もしてないから、どうやって消息確かめていいのかもわかんない。まったくなんという不義理。検索したら、あんた律儀にblog書いてた。最後の記述はオレのおかんの誕生日。

「明日死ぬと思っていきなさい
永遠に生きると思って学びなさい」

ガンジーの言葉、、、、、、、。

書きかけの手紙、散らかった納戸、作りかけのシチュー、未整理の冬物衣服、銀行振込も、花の植え替え、、、、、、、。

はぁ。切ねぇ。もう一回会って不義理を詫びたい。叶わない。だったら、注がれた愛を誰かに注ぐことしかできない。ごめん。

今日には23曲、すべてのミキシングが終わるはず。これからはエンジニアと二人で最終的な仕上げに入る。オレは自分にできること、全力でやるよ。

明後日、あんたが愛した街の上空を飛ぶんだ。葬式行けないけど、たくさん愛をありがとう。どこかであの歌歌うから。あんたを思って。これで俺の母ちゃんみたいな人はみんな死んじゃったよ。でも男子は母を失って初めて一人前だよ。アイルランドの母ちゃんが教えてくれたんだけど、僕はあんたの素晴らしい人生を祝福する。生まれてきてくれて、ほんとうにありがとう。

たくさんの愛。

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Recording day #064 への8件のコメント

  1. YUJI より:

    小倉で「岬にて」をリクエストさせてもらった後、スタジオヴォイスを見ようと思ってた探したら行方不明。しかし今日、再会。すぐに読み返そうとページを開けば2ページだけ。何ページかに渡っての特集と思ってたけど、記憶にある写真と合致したのは確かにこの5枚だけ。勝手にその後の体験が記憶を膨らませていたのかも。だから残念じゃなかった。
    あの雑誌に出逢ってから確かに僕の人生は変わったと思います。
    山口さん、記事を書かれた松山晋也さん本当にありがとう。

    P.S.齋藤亮一さん撮影の犬に触れながら写っている少女はナタリーなのかななんて妄想しました。

    • 山田 より:

      スタジオヴォイス1995年12月号ですね。私も持っています。
      当時ケルト特集に惹かれて買いました。
      思えば、この雑誌のケルト音楽の記事で、Donal Lunny, Paul Brady, etcを知り、山口洋に興味を持つようになったのでした。
      当時は東京に住んでいて、アイルランド音楽を聴くたびに
      故郷の青森を思い出し、勝手に「青森は日本のアイルランドだ」(笑)などと思ったりしたものです。(実際にこちらに帰ってみると全然違う・・・
      というか、未だにアイルランドに行ってないのでわかりません。)
      まあ、そう考えると、あの特集は確かに私にも大きな影響を与えたと言えるかもしれません。
      あ、話が逸れますが、このケルト音楽の記事にも名前が出ていたスコットランドのDick Gaughanですが、現在闘病中のようです。一度生で見たかったのですが、叶わぬ夢となるのでしょうか。彼のHeartful of Earthは名盤です。まだ聴いてない方がいらしたら是非聞いてみてください。(長々と書いてすみませんでした。)

    • 山田 より:

      訂正。上のDick Gaughanのアルバム名、HeartfulじゃなくてHandfulでした。

  2. MIN より:

    『YOUR SONG』の7月17日福岡ROOMSで、“ゆきてかえらず”をリクエストされた方がいらして、「いい曲だなぁ」と思ったことを思い出しました。亡くなられた方も、この曲が大好きだったのですね。今、“Live at Cafe Miton”の中から“ゆきてかえらず”をリピートで聞いています。私は、その方のことは知りませんが、この歌詞のように、魂はけむりとなりて、永遠の旅人になったのでしょうね。お葬式で、歌えないことはとても辛いですが、きっとどこかで聞いていらっしゃると思います。

  3. Masako より:

    冷たい雨の日々。寂しい知らせ。
    今年1月のソロライヴで初めて「ゆきてかえらず」を生で聴きました。詞が心に届き、とても悲しい気持ちになりました。ずっと大丈夫だと思っていた自分の心が揺らいだことに、まだ、大丈夫ではないことに気付きました。忘れようと日々忙しくしていましたが…。でも、ブログを読んで涙が溢れました。何も返せなかったこと、後悔が残ります。
    洋さんの歌を届けに行く場所には、たくさんの愛があると思います。だから大丈夫ですね。
    久しぶりの太陽。ミキシング作業、お疲れさまです。「荒野の風」新ヴァージョン、楽しみにしています。

  4. Satoko より:

    ほんとに、哀しみの雨に、今日は祝福の青空ですね。
    空を見上げて思い出すたくさんの愛が増えていく。感謝しながら、日々。

  5. D.H より:

    色々重なって、涙がでました。もうずいぶん経つけどやっぱり。。。
    私、一人前になってるかな~~なんて。
    きっと、歌と想いは届きます。ツアーお気をつけて。

  6. miwa より:

    「明日死ぬと思っていきなさい…」
    明日逢えるとはかぎらない、
    そして、
    少しでも悔いが残らないよう過ごすこと、
    大切な3人の方から学んだこと。
    思うことで、私の中で甦り、思い出すことで、生き続けると思っております。

    愛した街の上空を飛ぶ瞬間その方の想いと山口さんの想いが引き寄せあうのでしょうね。

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