忘れられない2022年夏の体験

8月30日 火曜日 曇り

依頼があったから取り組んだのだけれど。

このひとつきかけて、初めての短編を書いていた。もともと、歌ったり演奏したりする傍らで書くのは不遜だと思っていたから、いつかステージに立てなくなったら、静かにひとりで向き合おうと、老後の貯金なんて考えたこともないけれど、もし自分がそんな齢まで生き延びたなら、ミッションとしてひとつの物語を紡ごうと思って生きてきた。そういうのが貯金だと僕は思うんだ。

blogって言葉がないころから何十年も描き続けてるのは、自分の筆圧を落とさないためで、誰かの目に触れる文章を書く訓練でもあった。子供のころから、人前にでるのは好きじゃなかったけれど、文章ならいつまでも書いていられたし、本を読むのも異常なくらい好きだった。この頃はフィジカルとメンタルのバランスを取るために、活字から意図的に離れていたけれど、最近またブームがやってきて、活字の海に溺れてはいる。

幼い頃に母親に唯一誉められたことがある。「あなたの文章は素晴らしい」ってこと。たぶん、それは自分にとっては永遠の推進力になったのだと思う。俺が歌い始めた日にライブハウスのマスター(故人)が「おまえの歌は未知数だけど、ギターは必ず世界レベルに到達するから諦めるな」、って。

忘れられない言葉ってもんがあるよね。永遠の励まし。

もう書いてもいいか、って思った。試してみたかったんだ。

ソングライターは加齢とともに曲が書けなくなる。でも作家は違う。つまり、これはオレの説ではフィジカルとメンタルのバランスなんだ。

あ、その前に。作家と呼ばれる人に何人も会ったんだけど、ぜんぜん好きになれなかった。どうしてって、フィジカルじゃなかったから。気を悪くしないで聞いてほしいんだけど、ひ弱なんだよね。肉体がってことは精神も。

だから、そこにはまったく憧れはなかった。書くんだったら、フィジカルに描きたかった。

書くためだけのコンピュータを持っててね。原稿なんかはぜんぶそれで書く。数年前のmac book air。軽いんだ。とにかく。それをあちこちに持ち運んで書く。空港のラウンジが無機的でいちばん集中できる。

山の家や、船の中や、あちこちで毎日、毎日描いた。空想の中でいろんな経験をした。ときどき空想なのか、現実なのか、わからなくなることもあった。それはメンタルな体験だけど、僕にとってはフィジカルなことなんだ。

たぶん描けてる。締め切りは明日なんだ。でも、最後までブラッシュアップしてみたいと思ってる。

忘れられない2022年夏の体験。そんなことを与えてくれて、ありがとう。

 

 

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忘れられない2022年夏の体験 への5件のコメント

  1. タカ より:

    短編を書かれているのですね。
    明日が締め切りとのこと。

    個人的に(特に創作における)終わらせ方にとても興味があります。今回は締め切りがその1つにあるのでしょうが「よし、これでいい」という終わりにどのように辿り着くのか、いつか読めるはずの物語を楽しみにしています。

    明日は自分の誕生日でもあって、亡き母が産まれる準備を整えてウン十年前の明日を迎えたのと、山口さんの短編が明日生み出されるんだ!というのを重ね合わせて勝手に興奮しております(笑)

  2. ポレポレジャスミン より:

    とても楽しみに待ってます。

  3. のり より:

    ヒロシさんの文章で思い出したんですが、ヒマールさんが出版しようとしていた本は頓挫してしまったのでしょうか?
    それとももう発売されてる?
    楽しみにしてたのですが。。

    今回の短編もどこに掲載されるのかはわかりませんが楽しみにしてます。

  4. ミホ より:

    山口さんの音楽はもちろんですが、
    文章も大好きです。
    毎日、このブログを読んでいるのは
    山口さんの文章が気持ち良いから。
    短編を読むのがとても楽しみです。

  5. しょうへい より:

    作家さん一人一人の性格は勿論僕には分かりませんが
    作家さんはミュージシャン同様、凄いです。素晴らしいです。これからも良い曲期待してます!

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