福島県いわき市にて

7月29日　土曜日　晴れ　

　いわきにはずいぶん前から何度も来たことがある。

　でも、それはライヴの会場とホテルと焼鳥屋の往復で、街の成り立ちとか、概要とか、歴史とか、そんなことを知る旅とは違っていた。この街にやってくるほぼすべてのミュージシャンも同じだと思う。人とは多いに関わってきたけれど。

　そういうことに違和感を感じていたから、無茶を承知でバイクで来た。

　早起きして、海沿いを走る。いわきがこんな街だってこと、ほんとうに何も知らなくて、恥ずかしかった。聞きしにまさる素晴らしい街。インスタにアップしたから、見てくれた人はわかるよね？魅力ある街のほんのうわべだと思うけど、それでも知ることができてほんとうによかった。海辺しか行けなかったけれど、山も温泉も素晴らしいんだってさ。

　震災から立ち上がっていくこの街を感じられたのもよかった。忘れてはいけないけれど、どうしても忘れてしまうことも。

　震災があって、津波があって、原発事故があって、コがあって、この街がある。

　オレ、街の人たちに、オレのバンドを届けたいな、と思った。書けばこれだけ。でも、これって結構たいそうなことではある。でも、そう思わせてくれるだけの、街で、人間たちだった。これは自分が生きている間の闘いでもある。なるはやで、やんなきゃね。

　大好きになった。以前より、何倍も。ほんとうにありがとう。オレはなにも知らなかった。でも。

　知らないことは恥ずかしくないと。知ろうとしないことが恥ずかしいんだ、と。思い直した。知ることができてよかった。

　あとどれだけ旅ができるのか、わからないけれど、いつまでもこんな心持ちでいたいと思う。

　裏通りにSONICがあって、焼鳥屋があって、素晴らしい声の持ち主CHANOちゃんがいるってこと。

　いわき。ほんとうにありがとう！

　今日は6号線を北上します。3月に車で来たときに、どうしてもバイクで感じてみたかったから。敢えて、ナビは使わず、自分の直感で動いてみようと。

　知らない人のために書いておくと。去年までバイク、自転車、人の通行は禁じられていたのです。理由は書かなくてもわかる、よね。そこにはすべての日本人が知るべきJAPANがあると思ったのです。そして、オレもまた自分の目で見て、感じるまで、なにも知らないから。

　2014年だったか。MY LIFE IS MY MESSAGEでCHABOさんと旅をさせてもらっていて。ツアー先の豊橋で。オリンピックの東京開催が決まった瞬間をオレは生涯忘れないのです。時の首相が「アンダーコントロール！」と言い放って、このオリンピックが決まったことを。こんな世紀の大嘘がまかり通るんだ、と。

　だから、CHABOさんの手紙を胸にオレは旅に出ました。ほんとうにアンダーコントロールかなのどうか、オレがこの目で見て、確かめてやるって。

　原発の処理水（汚染水と書くかどうか、とても考える。書いていいと思うのだが）はもうすぐ海洋放出される。昨日の福島の海の写真、見てくれたよね？ほんとうに美しい豊かな海なんだよ。

　関東に住む、オレたちが使う電気のせいで、どうして福島の人たちは故郷を追われなければならないのか。その気持ちは1ミリも変わらない。はっきりと書いておくけれど、そんな電気だったらオレは要らない。これはね、イデオロギーとかそんなことじゃない。ニンゲンとして、どうしても受け入れらないってこと。そこをなんとなくうやむやに受け入れたなら、自分が壊れるってこと。

　決して深刻に伝える気はないし、淡々と24時間で消える写真をキャプションなしでアップするだけだと思うけれど、よかったら見てください。でも、これはオレが見たことであって、あなたが見たなら、また違う風景であることも忘れないでください。

　あ、昨夜ね。いわきのバンド「明星」って人たちと会った。まだ音楽聞いてないけど、写真だけで、一瞬でもっていかれたよ。笑。たくましくて、ほんとうに好き。笑。

　行ってきます。