2月12日 月曜日 晴れ
静かだからここに暮らしてるんです。夜は風の音と、雨の音しか聞こえません。
ロック的なものなんて、ここにはなにもありません。うちで行き止まりだから、車が通ることもなかった。
家を見に来たとき、リビングの窓の真ん中にでっかい富士山があって、それだけでここに住むことを決めたんです。
ところが、コになって。
東京からこのエリアにやってくる人が増え、不動産価格は急上昇。リスが棲んでた裏山を切り崩し、宅地を無理やり造成し、近隣だけでなんと今7軒の家が建築中。コになってからはちょっと耐え難かった。
ただでさえ、行き止まりなのに重機、ダンプ、ワゴン、軽トラック。家の前に数珠繋ぎに駐車され、僕は仕事に行けない、とか。ステレオで打ち鳴らされる騒音、また騒音。埃、エトセトラ。
行き止まりだけど、人だけは通れる小径。それはおじいさんおばあさんがスーパーに行く近道で、小学生の通学路でもあるんです。危険極まりなかった。ある時、おばあさんが止むなく踵を返すのを見て、僕はキレた。
それぞれ違う業者が入っているので、何度も言いました。止むを得ない場合を除いて、駐車場に停めろ、と。でも、家を建てる行程で違う業者に仕事が受け渡されると、ほぼ伝達されておらず、彼らはいつだって道を堰き止める。
ついにはこちらも目が肥えてきて、建設を司る業者の質もわかるようになる。上質なところは、周囲と調和して仕事を進める。でも、そうじゃないところは自分の利益しか考えていない。
こちらもちょいと調べます。いちばん酷かった業者は「ヤンキーの立志伝」的な宣伝がされていて、本まで出版されていて、こりゃ言っても無駄だと。アーメン。
こういうプロセスは価格に見事に転化されています。安いってそういうことなんです。
思うことはたくさんあって。
逆説的に学ぶしかない。自分だったら、こうはしないって意味でね。にしても払う代償が多すぎるんだけど。
志、だけなのにね。
きちんとやるには金がかかる。調和するには時間がかかる。すべては価格に転化される。時流がどうであれ、そこを理解してもらえるように生きるか、生きないか。それが問題なのです。
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大阪は高槻の親戚が、近所が開発されまくっていて、おだやかに暮らしていられなくなったから、工事が済むまでのあいだ、静かな場所を求め、賃貸物件を借りて、数ヶ月か数年になるのか、期間限定移住?をしているんだと電話で言ってました。