HEATWAVE / 夕陽へのファンファーレ #004

11月11日 火曜日 雨

はてさて。

今日はツアー前の最後のリハーサルなのですが、おそらくスーパー全力を出し切って帰ってくるので、帰宅後のblog更新は無理かと思われ(元気があったら、写真だけ更新します)、みなさんに新しいアルバムを是非手にして欲しくて、朝6時にこれを書いております。

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ミキシングのことです。

ミキシングって、これまた知らない人にはぜんぜん分からない話っすよね。えー、マルチトラックの個々のトラックには大抵の場合、一種類の音が収められています。たとえば、ギターとかヴォーカルとか、ベースとか。昔はたくさんのトラックを使っていましたが、今の僕らは極端に少ないです。たいてい16トラックあれば事足ります。24までいくことは最近あまりないです。隙間で語るバンドになったからだと思います。

それらをどのように混ぜ合わせて音楽を作るかってのがミキシングです。ルールはありません。自分のやりたいようにやればいいのです。ただし、かなり専門的な知識も必要になりますが。

僕の場合は短編映画のような動画がスピーカーの間に見えているので、そこに向かっていきます。空想の動画を実際の音が上回ると、ひじょーにコーフンします。

みなさんの日々に響くファンファーレを創るにあたって。主張が強く、痛く、激しいだけのものを創りたくはなかったのです。それに関して、貼られていた戒めの標語は「強さじゃないんだ、風なんだ」でした。笑。ストロングな方向に行きすぎて、耳が痛くなってきたら、その標語が僕を戻してくれます。

とにもかくにも、次第にいろんなつまみが動かなくなってきます。動く範囲も狭くなってきます。最後は0.2dbくらいの攻防が繰り返されて、行きたかった場所にたどり着きます。そこは絶妙なバランスで成り立っている奇蹟的な場所なのです。早くて3日、手こずると1週間くらいかかります。僕は専門的な教育を受けていないので、技術よりセンスで突破しなければならず、どうしても時間がかかります。通常の現場では平均して1日1曲ぐらいです。

自由に生きるってことは、責任を自分で取れば、どのように生きても自由なのです。でも、たとえば今年はソロアルバムも含めると、約4ヶ月、自分のスタジオにカンヅメになっていました。その間、当然収入はありません。本来作家とはそのような職業です。こんなことでビビるくらいなら音楽なんかやるんじゃねーと、これまた無駄に自分を鼓舞します。僕はもうこういうことにビビったりしませんが(多少の危機感はあります、もちろん)、家族が居たらキビシーかなぁ。ここまで集中できないかも。そして家族が居ようが居まいが、人々が手にしてくれる作品を創れなければ、次はないってことです。アウトです。続きませんから。いつだって崖っぷち。いつも云ってますが、続けることが一番難しいのです。その緊張感もいい風に変えて、作業は続きます。

ミキシングには2週間くらいの余裕を取ってあり、フィニッシュは阿蘇でと考えていましたが、耳の疲れもあって、作業は大幅に遅れ、結局ギリギリでした。細部に渡って、丁寧に、そして大胆に気持ちは込めてあります。約3ヶ月の「途方もない航海」はようやく終わりました。

そこからはマスタリングです。全体のバランスを整え、曲順、曲間を決める重要な作業です。これまた専門職なのですが、今回は魚が担当しました。ケチったのではありません。誤解なきよう。あくまでもバンドの総合力で完成させたかったのです。

ツアーが再開してしまった僕とネットで毎日やり取りをします。どこのポイントをどう変えたのか、周波数と変化の度合いが分かってしまう自分の耳が恨めしかったです。僕らの耳は0.2dbの違いを聞き分けます。ちょっとうんざりします。マスタリングも大抵の場合一日で終わる作業なのですが、これまた困難を極めました。そもそもの録音の成り立ちが変わっているアルバムなので、質感を揃え、ストーリーを創るにはいったいどうしたものか、二人で途方に暮れました。追い込まれた日、深夜に魚が解決方法を見つけたとき。ネットを挟んでガッツポーズをした日のことは忘れられません。それは最後の巨大な壁だったからです。格言、「諦めたら、負けだ」。

最後の最後。僕はツアー先の長野から車をぶっ飛ばして魚のスタジオに行き、二人でフィニッシュしました。お土産は横川の峠の釜飯、どうでもいいか。締め切りの前日。滑り込みセーフです。魚のスタジオの(敢えて)ラジカセから1曲目が流れてきたとき。言葉にならない充実感がありました。

家に着くころ、魚から電話。「釜飯ありがとう」。あれ、ときどき無性に喰いたくなるよね。笑。

最後にアート・ディレクション。デザイナーは渡辺圭一です。バンドのアルバムだからです。彼は演奏してから、音楽がどのように変化しているのか、まったく知りませんでした。物理的に離れた場所に住んでいるし、作業そのものは僕ひとりで続けていたからです。

僕の作業が8割方終了した時点で、音楽を聴いてもらいました。タイトルが見えていると、お互い作業は早いです。浮かんできてからは、フィニッシュに向けて突っ走るだけでした。今回ジャケットにはアルバムタイトルも、バンドの名前も記されていません。そこに込められたデザイナーの想いも受け取ってもらえたらと思います。

こうやって、宣伝のため、仕方なく、言葉で説明していますが、ほんとうはイメージを限定するような行為を何ひとつしたがらないのがHWというバンドの良さだと思っています。「またヒロシが言葉で説明しすぎ」とバンドのみなさんに思われていることでしょうが、今回は僕も云いたい。「じゃ、売ることに協力してくれ」、笑。

てな訳で、ツアー前に、このシリーズの記述は一旦終わりです。読んでくれて、ありがとう。2014年、HW。全身で魂込めました。みなさんの日々で響きますように。

一番大切なことを。どんな状況であれ、僕らをサポートしてくれる皆さんが居てくれなければ、僕らは成り立たないのです。これまでのたくさんの声援にこころから感謝します。ほんとうにありがとう。

とにもかくにも、ツアーに来て、手にしてくれると嬉しいです。今日も大きな声で云うぞ。買ってくれーーーーーーーー。

アルバムに収録されている曲は以下です。僕のソロで知っている曲も多いでしょうが、全部新録です。

夕陽へのファンファーレ / HEATWAVE

1. Don’t Look Back
2. Life Goes On
3. I Believe in You
4. 冬の朝
5. 愛と希望と忍耐
6. 焦燥のブルー
7. プレシャス
8. Force = Surrender
9. Fanfare For the Wasteland
10. 相馬盆唄
11. Alone Together
12. Starlight

 

ついしん

これからはツアーをしながら、特設サイトを作って、購入方法などを伝えていきます。それでは、最後のリハーサルに行ってくるでよ。

 

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ふえふえふえーーーーーー。最後のリハーサルから帰ってきました。帰ってきたらきたで、メールの数を見て吐きそうになっております。おぇ。もう、無理。

えーー、まず。午前中に工場より「夕陽へのファンファーレ」が納品されました。よって、明日、大阪から、みなさんに手にしてもらうことができます。つ、綱渡りー。リハーサルからの帰りしな。爆音で聴いてチェックしました。我ながら、素晴らしい仕上がりでございます。自信を持って、買ってください。と大声で云えます。わんわんわーん。

圭一係のローディーTが今回スケジュールが合わず、なんと22歳のうら若き女性タワシちゃん(ひどいあだ名だ)がツアーに帯同。女性だからとナメちゃいけません、僕よりはるかに力持ち。重たい機材もひょいひょい運んでくれます。た、頼もしい、タワシちゃん。ステージで見かけたら、是非声援を送ってあげてください。

HW、なんと10時間もリハーサルをしてヘロヘロです。その上、スタッフたちは満載の機材と共に、さきほど大阪に向けて旅立ちました。え、偉すぎる。その過酷なスケジュールを気遣ってたくさんのローディー君たちが自主的に手伝いに来てくれました。あ、ありがとね。

てなわけで、明日は大阪の夜空を焦がすぜーーー。

演奏に忙しくて、写真を撮る暇もなく。

演奏に忙しくて、写真を撮る暇もなく。

久しぶりにチームHW、スタッフもかなり揃ってたのに。

久しぶりにチームHW、スタッフもかなり揃ってたのに。

ってか、オレも早く寝なきゃ。

ってか、オレも早く寝なきゃ。

みんなのリクエストのおかげで今までになかったライヴになるよ、きっと。

みんなのリクエストのおかげで今までになかったライヴになるよ、きっと。

オレの自撮り。あ、圭一がいない。

オレの自撮り。あ、圭一がいない。

居た。

居た。

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HEATWAVE / 夕陽へのファンファーレ #004 への20件のコメント

  1. グレキチ より:

    「夕陽へのファンファーレ」特集、とても興味深く読ませて頂きました。

    大航海の記録、東京で楽しみにしております!

  2. 桃子 より:

    まとめれば「夕陽へのファンファーレ」までの航海は#4ですが、思い返せば紆余曲折、波瀾万丈の大航海でしたね。ブログやコンサートで送られたファンからの声援は”戒め標語”に匹敵するくらい洋さんを支えたと自負して良いですかね。つまりは私たちも参加したアルバムということです、勝手に♪たくさんの人に届くと嬉しいし、まず自分が早く聴きたいです。タイジさんのラジオで「Don’t Look Back」聴きましたが、今思い返してもちょっと言葉には出来ないくらいの感動でした。収録9曲目楽しみです。収録の順番に流れも感じたいし私なりに想い入れのある曲満載。
    洋さんのライブで聴いてきた曲がどうなってHEATWAVEで魅せてくれるのかドキドキです。

    明日からツアー初日♪まさか渋谷でファイナルって事はないですよね!!全国にアルバム届けに行かなくちゃ。チームHEATWAVE怪我や事故のないように楽しんでいってらっしゃーい(^o^)/

  3. MDTY より:

    朝6時起きで、何でこんなに緻密かつ長文のテキストが書けるのかと驚き、と同時に、毎朝6時半起きで始業時間ギリギリのくせに、シンドイシンドイばかり言ってんじゃねぇよ、自分!と猛省してるそんな昼休み中に書いてます。

    今日一日、バッタバタのバッタバタだと思われますが、昼ご飯だけはしっかり食べて下さいね〜。

    ライブもアルバムもいよいよ明日ですね!
    楽しみにしてます!

  4. tko より:

    ain’t no way !

  5. ながわ より:

    ニューアルバム聴く前はなるべく情報を入れまいと思ってましたが
    つい読んじゃいました笑。
    でも作品には作り手の時間、生活、意志が込められている。
    その過程を知るのは良いことだと思います。

    そして、桃子さんの意見に大賛成!
    是非全国ツアーやってニューアルバムを日本中のHWファンに届けてほしい。
    そして・・もし、もし可能であれば相馬他東北でHWのライブをしてほしい。
    相馬でHWのライブがあるなら何があっても絶対駆けつけます!

    東京者の勝手な要望スミマセン。
    来週の渋谷行きます!魂のロックンロール、こっちも気合い入れて聴きます!

  6. Froggy II より:

    アルバムが完成するまでのストーリーを教えていただいて。大事に聴かなくちゃ、と思っています。夕焼けに染まる小さな鳥たちを、手のひらにのせるのが楽しみ。買う気みなぎってます。笑

    あと最後に一言。えー、失礼だったらゴメンなさい。「山口さん、青春してますね (^-^)」

  7. alechil より:

    読みました。
    ハッとはしませんでしたがグッときました。
    名盤に違いない。
    名盤でない訳がない。

  8. なおみ より:

    今日見たドラマの再放送に「諦めたら、終わりよ。」って出てきたんです。一日に二回もこのフレーズw 自分の胸に問われた気がしましたw

    アルバムの音をワクワクして待ってます。
    久々のバンドのライヴが楽しみなのですよ!!
    もちろん、アルバム買いまーす\(^^)/

    窮地の中で希望を見いだすように、ライヴの日が休みになってくれてた事に感謝しつつ明日のライヴ、楽しみにしてます。

    ソロで聴いた音楽がバンドでどう昇華されているかこの目で耳で確かめますね!
    初めてヒートウェイヴを聴く友だちにガツンといっちゃって下さいw

  9. 萩原晋也 より:

    明日、大阪行きます。
    アルバム未収録のLIFE is messageが聴けたら。
    とにかく明日、行きます。

  10. LUCA より:

    言葉に傷ついても、言葉に救われる感じがする〜。愛で返せば愛で返ってくるんだねのファンファーレ。
    全国ツアーも相馬のライヴも良いね~。するべき‼するべき‼願えば叶う。叶えてください、ヒロシさーん。

  11. makiko より:

    なんかちょっとうるっときちゃった…。
    サポートしてる、なんて気持ちはさらさらないですよ。
    いつも音楽でもこのブログでも勇気をもらってサポートしてくれているのがこのバンドであり山口洋なのだ。
    道中お気をつけて。

  12. のり より:

    宣伝ブログお疲れ様でした(笑)
    僕は17日の東京で手に入れます!
    凄く楽しみです♪
    売り切れで買えないって事無いですよね??

  13. ジン より:

    お疲れ様です。
    間に合いましたね。良かった、良かった。
    待ちわびてましたよ、新譜。
    明日は、博多で会いましょう!!

  14. しお より:

    13日博多のライヴに行きます。
    ただ素直に感じて楽しみたいと思います。
    ニューアルバムも買いますよ。

  15. ひで より:

    博多に参戦します。
    車で行って帰路に爆音で新しいアルバムを聴きたいと思います。

    連チャンライブは大変でしょうが頑張って下さい。

  16. kumiko より:

    「夕陽へのファンファーレ」特集お疲れ様でした。
    Inter FM特番でDon’t Look Backが流れた時 心から嬉しく思いました。
    この曲は山口さんが標高4000mの山の風景にいた時に
    やっと見つけた大切な言葉だから。

    昨年某ライブハウスでレーコーダーが回っていた時も一度目納得いかず
    アンコールで演りなおしたこともありましたね。
    今年2月千葉ANGAで録れた音源になったのだと聴いて想像できました。

    作り手は一曲一曲を大切に魂込めてこの世に誕生させるのだと思います。
    ソロアルバムで発売した曲を新録してバンドに昇華させるミュージシャンに
    誠実さを感じます。

    音楽も心が産み出す子供のようなものだと思うから。
    沢山の人の心に夕陽へのファンファーレが鳴り響きます様に願っております。

  17. たまみず より:

    バンドでのI Believe in You、めっさ楽しみにしています。

  18. ショーケン より:

    大阪ライウ゛
    47のオッサンを泣かせるなよ!
    在阪九州人泣きました。
    フルノイズよかった。
    九州で見たら漏らすぜ。

  19. かつらぎ より:

    @大阪 よかった。会場から出たら光っていた お月様も きれいに 見えました。
    人生のいろんなことを 背負いながら聴く HEATWAVE の醍醐味。
    職場の若い子たちにも 聴かせてあげたい ライヴ でした。 多謝!!
    2枚買ったので、明日 「夕陽へのファンファーレ」を 同僚にプレゼントしようと思います。

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