リアリティー

11月23日 水曜日 晴れ

人と人との、過去と現在そして未来との、愛と憎しみとの、現実と理想と諦めとの、エトセトラ。それらがスクランブルより複雑になったグシャグシャな交差点に僕らは立っている。本当は立たされているのかもしれないが、自らの意志で「立って」いたい。その人の流れが、一方通行になってしまうのは、甚だ気持ち悪い。その巨大な交差点の中で、僕らは「同じ人間は一人も居ないこと」を他人との差異を知ることによって、あらためて、肝に銘じる

大事なことは、僕にとって、そこに他人に対する「愛」と「尊敬」があるかどうかだけ。仮にクソったれな政治家が居たとする。僕はカメラのレンズを覗き、彼にフォーカスする。彼の何処を切り取るか。レンズを絞る。僕は良心のない人間なんて居ない、と思う。まずは、否定から入るのか、可能な限りの全面的な肯定から入るのか。肯定から入ることによってしか、彼の(僕にとっての)「負」も写りこまない。その態度がなければ、人と理解しあうことなんてあり得ない。ただし、前述のように僕らは交差点に立っている訳だから、いちいち観察していたら、途方もなく疲れるけれど。

昨日の代官山は交差点だった。アトミックカフェ@代官山。エンケンさんとソウルフラワーと加藤登紀子さんと僕が音楽を奏で、トークは加藤登紀子さん、ピーター・バラカンさん、田中優さん、山本太郎さん、それに僕、司会は島キクジロウさん。

本当に申し訳ないと思うが、僕は自分が思っていることを、言いよどまずに、語れたことがない。何故なら「これは絶対にこうだ」と、公衆の前で、云いきれるものを生まれて一度も持ったことがないからだ。たとえ、そう思ったとしても、本当にそうなのかどうか検証してしまうタイプの人間だからだ。ただ、時に残酷すぎるほど、正直であろうとは思っているのだけれど。僕に出来ることがあるとするのなら、「問いかけ」だけだ。

でも、居並ぶパネラーのみなさんの発言を聞いていて、ひとつだけはっきりと浮かび上がってきたことがある。田中優さんが云われたとおり、僕はリアリティーを大切にしたいし、それを人々に伝えたい。僕にとっては、福島の女の子が「私たちは子供を生むことが出来るんでしょうか?未来はあるんでしょうか?」そう語ったこと。自分の目で観て、感じたこと。それが全てだ。その言葉が未だに頭の中でウルトラセブンのオープニングのグラデーションのようにグルングルンと廻り続け、自問自答を繰り返している。

ジェリー・ガルシアがかつて歌った「人生はうまくいっているときほど危ない」。この言葉がこれほどリアリティーを伴って響いた年はない。

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リアリティー への2件のコメント

  1. 鹿野隆行 より:

    山口さん、こんばんは。アトミックカフェでは素晴らしい演奏、ありがとうございました。RIKUOさんと一緒の演奏、個人的にかなり気に入りました。さて、私は原発国民投票の運動に傾倒しているのですが、この運動ももちろん福島の事故に端を発しており、いまでもその原点、起点、力点はフクシマになければならないんだと、今回のトークセッションで改めて認識することができました。そうでなければ、運動そのものが上滑りの、リアリティーのない、人々の心に伝わらない、伝播しないものになってしまいます。「私たちは子供を生むことが出来るんでしょうか?未来はあるんでしょうか?」。山口さんが目で観て、感じて、真摯に発言したことは、私の心にも刺さっています。たとえそれが山口さんが感じたほどの、リアリティーではないとしても。

  2. toshie より:

    山口さんが出演されなければ足を運ぶことは無かったでしょう。いつもそうするように、それぞれのお話を誰のための言葉なのかなぁ?(誰を代弁しているのかなぁ?誰にとって都合がいいのかなぁ?)と考えながら、拝聴していました。私が思っていることと合致する内容の話だからといって「正しい」と勘違いしないように、むしろ、反対/異なる考えにより耳を傾けるように。
    翌日、知人に”How was it?”と尋ねられたので頭から言葉を絞り出しながらイベントの感想/印象を述べたら、そういうつもりではなかったのだが、間髪入れずに”Propaganda? But the music was good. Huh?”と言われました。なるほど、そう受け取るのか。珍しいことじゃないのだ。そうだった。帰宅してから、単語の意味を辞書で調べ直した。
    ライブ。素晴らしい響き合いを心から愉しみました。惚れボレ。有難うございました。

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