family

11月6日 水曜日 晴れ 

 ステージに立っていると、世相が浮かび上がることがあります。

 リクエストはwetめで、特に家族にまつわるものが多かった。そんな時期なのか、時代なのか。

 家族。近くて遠いもの。あたたかく、とてつもなくやっかいなもの。

 正解はないんだと思います。それぞれにそれぞれの形がある。同じものはひとつたりともない。

 うちはね。崩壊系です。笑。

 いちおうあったはずだけど、旅行はおろか、揃って食事をした記憶すらない。その写真もないから、ほんとになかったんだと思うんすよね。だから、家族の意味が今もよくわからない。わずかに小学校に上がる前に、祖父母と同居してた時期があって、超絶可愛がられた記憶が肌感覚として残ってる。それがなかったら、ほんとにヤバかったかも。

 幼少期の愛された記憶ってのは人間形成上でもっとも大事なことだと思うのです。それゆえ、子供を育てる勇気は僕にはない。オレみたいなのはオレひとりでたくさんだって想いもあります。幼い頃、虐待された人間は成人して子供を虐待することが多いってデータは悲しすぎて、恐ろしすぎるのです。業。

 アンビリーバブルに仲のいい家族で育った女性と一緒にいたころ。ものすごく家族に受け入れてもらったんだけど、でもどうしても居心地が悪かった。中華料理屋で円卓囲んでると、ヘンな汗が湧き出てきて、辛かった。どうしていいのか、わからないんです。

 誰も悪くないんだけどね。でも、こういう経験が歌を書かせる。それだけのことです。

 だって「オレは幸せだ!」みたいな歌、聞きたいすか?オレには必要ないかな。笑。

 プライベートなことがパブリックなことにたどり着くこともあるんです。そこを目指して歌を書く。それがたまたま誰かを癒すかもしれない。それだけのことです。

 家族のことを想うとき、いつもあの中華料理屋の脇汗を思い出します。笑。味なんてまるでわからなかった。

 60になって。最小単位の家族ができて、学んでいるところです。正直、ずっと逃げてきたけれど、遅すぎることなんてない、と思っています。

 僕が伝えたいのはね。どんなに異端だったとしても、視点を変えることでプラスに転じることは可能ってことです。いろんな巨大な負の経験に対して、僕は「ありがとう!」と思っています。だって、それらが自分を形成してくれたんだもん。痛みを知っているのは素晴らしいことです。強く、優しくなれる。

 だから、家族にいろいろあるのはわかるけど。たった一回の人生。「どうして、自分だけがこんな目に?」みたいな自己憐憫はなにも生み出さないよ。

 感謝して、今を生きましょう。

 オレは病院行ってきます。それが今日のオレにできることだから。笑。

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family への4件のコメント

  1. ぺぺまし より:

    こんにちは、横浜ありがとうございました。ゆっくり休んでくださいまし。

    らんらんらんの件、承り係りの者なので近藤さんに早速報告しましたところ以下の返信でございます。

    ありがとうございます!
    昨日の山口さんの言葉、ほんとありがたいです。
    でも、山口さんの「らんらんらん」、聴きたかったなあ。。。
    昨日聴けて良かったですね〜羨ましい〜〜!!
    もうやらないなんて言わずに、ずっと歌って欲しいですけどねえ。。

  2. かつらぎ より:

    オリオンへの道 リクエストにこたえてくださり
    ありがとうございました。沁みました。

    コロナの間に犬のメリーが、なくなり
    今年の春に父がなくなり
    故郷も今は年老いた母が待つばかりになりました。

    はじめて、ヒートウェイヴのライブに行った時、
    33をはじめて聴いて
    それより故郷の味噌汁をきちんと飲んだほうがいい
    と唄われる言葉に、無意識に涙がこぼれていました。

    歳月をかさね、
    歌詞をうけとる、私の人生も、いろいろうつりゆき
    あれほど、諍いの多かった両親だったのに、
    母は、亡くなった父のために毎朝5時におきて、雨の日もかかすことなくお墓参りをしているのだと、松山ソロライブの夜に娘の私にはなしました。
    父のことを、母が優しかったと、はなし、
    父を偲ぶ俳句を詠みながら、父を想って泣くのです。

    山口さんが、横浜で、ボロボロになりながらも、唄 を心を込めて、力強く優しく演奏される姿を前に、私は、これまで、なんてたくさんの無償の愛を受け取ってきたのだろうかと、かんじつづけていました。

    それは、29歳の春、心斎橋のクワトロで、月に吠えるのツアーで聴いた時から変わらずに、唄の形をとって、一貫してつたえてきてくれたもので、

    それが、私が両親を赦すことになり、父と母が、妹も巻き込んで、赦しあうことに、繋がったんだと。

    父は、ちょうどフリージアが満開の時期になくなり、黄色のフリージアに埋もれて、妹がコロナの3年間で送り続けた千枚のハガキと共に、煙になりました。

    憎しみは、それをうわまわる愛があれば、上書きされる。ヒートウェイヴ、山口洋さん、ありがとうございました。わたしも、無償の愛を、つたえていきたいとおもいます。凄まじいライブでした!どうかお身体お大事になさってください。枇杷の苗、大切にします。

  3. 萩原晋也 より:

    家族。
    難しいですね。
    何で自分だけがこんな思いに?
    と思います。
    一生懸命生きてるのに問題ばかりが降りかかる。
    山口さん、そんな奴に勇気が出る一曲を。
    けど、勇気を持って歩み出せば超えていけると
    信じています。

  4. SHO より:

    横浜の夜
    FM THUMBS UP という今宵だけのラジオ局
    そんなオープニングのお便り(リクエスト)紹介で幕が開きました。
    名曲とさまざまな人たちの路が語られ、共感、勇気、元気、喝、びわももらい
    明日からもやっていけるなと、家路に着くことができました。
    リクエストにも応えてもらい、モーガンさんとのエピソードも披露していただき、感謝いたします。
    12月もあっという間にやってきて、バンドの音に酔いしれることでしょう。
    磔磔に北極星を探しに行きますので、よろしくお願いします。
    ありがとうございました。

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