未来を創ること#2

8月3日 金曜日 晴れ

全国を廻るうちに、震災や原発事故で直接被害を受けなかった人たちも、また別の形で傷ついているのだと云うことを知りました。「自分も何かをしたいのだけれど、遠く離れていて、日々に忙殺されて、何をしていいのか分からない」。大まかに云って、心ある人たちはそのような傷つき方をしていました。

やがて僕は自分の口で「寄付してくれ」と一度も云ったことがないにも関わらず、そのような人たちからお金を託されるようになりました。街を歩いていて、いきなり千円札を渡されたこともあります。本当の話です。正直に書くなら、重かったです。人々は何故、こんな不良中年にお金を託そうとするのか?その金額が日に日に膨らんでいったとき、僕はそれらの気持ちが還流するシステムを作らなければ、被災していない人も救われないのだと知りました。

僕らの仕事は現代という荒野に生きる寅さんみたいなものです。今日はあの街、明日はあの街。ときどき、朝目覚めると、自分が何処に居るのか不明なこともあります。そして、ネットがいくら発達したと云っても、人々はダイレクトな繋がりを求めることは止めません。

ある日、こんなことがありました。

どう考えても、僕のライヴ会場では見かけないタイプの化粧の濃い、香水の匂いをプンプンさせている女性の一団が居る。聞けば、彼女たちはキャバクラ(僕はその手の店に行かないので、正式な呼称を知りません。間違ってたらごめんね)で働いていて、遠い福島のことに心を痛め、お客さんから募金を集めたのだけれど、有効に使ってくれそうな団体が見つからない。そこで、誰かから、このような不良ミュージシャンが居るので、ライヴを実際に観て、信じるに足りる人物かどうか、自分たちの目で確かめた上で、お金を渡しに来たのだと。僕は奇妙な感動を覚えました。狭い楽屋に複数の強烈な香水の匂いが立ちこめる中(余談ですが、僕は香水が苦手です。百貨店の1階に10分居たら、お腹を壊します。ほんとです)、僕は彼女たちに聞いたのです。「ほんとうにオレでいいの?」。彼女たちはまっすぐに僕を観て、こう云いました。「お願いします」。

現代社会は自分の暮らしや仕事がどのように世界と繋がっているのか、と云う感覚が希薄です。目を向けない人も多いのだけれど、極端な例を挙げるなら、福島県相馬市とアフリカのキンシャサですら、必ず何処かで繋がっているのです。ヴァーチャルではないのです。自身の暮らしを守ること、それを美しくすることは大切です。でも、もっと大きな対象に愛を注ぐことも同じくらい大切だと思うのです。その愛はいつか形を変えて、自分のところに還ってきます。自分のことを考えるだけでなく、見返りを求めることなく、まずは他者を思いやる。それが自分を美しくすることのほんとうの意味だと僕は思います。

ライヴを重ねるたびに、各地に驚愕のアホ(褒めてます)が増えていきました。「君は何でそこまで人のことを思えるのか?」。そのような人物が僕や、相馬の人々を励まし、そして動かしたのです。

僕はコンサートやツアーに来てくれた人々の想いが相馬に届き、相馬からまた想いが還ってきて循環する。そのようなことを夢想します。ただし、大人がやるべきことは夢を観ることではなく、結果を出し続けることです。

今日はここまで。そろそろ具体的なことも書こうと思います。(つづく)

最近独立したテーラーのともだちの店に頼んでいたシャツを取りに行きました。彼の洋服を一度着たなら、もう既成のものは着れません。プロの仕事はどの道も同じところに繋がっています。

最近独立したテーラーのともだちの店に頼んでいたシャツを取りに行きました。彼の洋服を一度着たなら、もう既成のものは着れません。プロの仕事はどの道も同じところに繋がっています。

白いシャツには「SOMA」と刺繍が入ってました。何だかなぁ。相馬で着なきゃ。

白いシャツには「SOMA」と刺繍が入ってました。何だかなぁ。相馬で着なきゃ。でも、白は着すぎて飽きちゃったよ。

追伸

相馬の人々が日々を綴るプロジェクトのblog。これからも街の生きた情報を届けてくれるそうです。嬉しいなぁ。

http://mymessage.jugem.jp/

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