日別アーカイブ: 2012年2月20日

山との会話

 このダラクサなミュージシャンの僕が朝の6時には起きる。ベランダに出て、山を見上げ、今日のご機嫌を伺う。それからコーヒーを淹れて、バナナを無理やり一本食べ、ストレッチをして、バスに乗り、山へと向かう。リフトを乗り継いで頂上を目指す。標高は4000メートルに近くなる。一日に一回は息を切らしながら、スキーをかついでプチ登山をすることになる。はじめは休まないと登れなかったけれど、もう慣れた。とある頂上はもはやこの世とは思えない。行ったことないけど、火星ってこんなところなんだろう、と思う。エクストリームのサインをくぐる前に、深呼吸をする。山、そして会えなくなった人たちと会話をする。一人だけれど、まったく寂しくない。こんな世界の果てみたいな美しい場所に居て、廻りに誰も居ないのに、ちっとも寂しくなんかない。  切り立った崖を見て、武者震いをする。こんなところ滑ろうとするなんて、イカれてると思う。でも、もう戻る術はない。ターンを一回失敗したら、僕は奈落の底に落ちていくだけ。だいいち僕は経験3年のビギナーだし。骨の一本くらいで済めばいいけど。昨日できたことが、今日できる保証なんてどこにもない。って云うか、同じ状況は二度とない。昨日はパウダー、今日はガリガリの氷。技術はぎりぎり。でも勇気を出して、エッジを立てて突っ込んでいく。この瞬間が好き。しびれる。生きてる、と思う。  ここに来たときは、グルーム(圧雪)された場所しか滑れなかった。でも、今は自然のままの場所が好き。木々や岩や斜面やコブや、無茶苦茶な自然に翻弄されながら、直感と敬意と運動神経と考えることと、考えないことと。とにかく自分の持っているものを総動員して、謙虚さを忘れず、滑っているのが好き。俺は生きてるぜー、ありがとーと大声で叫びたくなる。  山はほんとうに素晴らしい。分かれば分かるほど、何も分からなくなってた。ほんとうに言葉も失ってた。でも、世界と関わるほど、人は一人になる。それでいいんだ。

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無になること

2月20日 月曜日 曇り

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