日別アーカイブ: 2012年7月26日

道を削る

7月26日 木曜日 晴れ 亡父、誕生日。 死んで30年も経つと、彼の誕生日を覚えているのも、何となくでも祝ってやれるのも、地球上でオレだけか、と。特に何をする訳でもないが、好きだったタバコと酒くらいはくれてやる。 で、いつものように上半身裸で海沿いを走る。炎天下はこたえる。走るときには秘密の儀式みたいなもの(あくまでも自分にとっての)があるのだが、今日は特別に父親も加える。そして、今日もオレは道を削る。 彼が49で死んだとき、オレは18だった。今年の冬には彼の死んだ年齢に並ぶことになる。彼が居なくなって、ずっと考えていたことは、少なくとも彼が死んだ年齢までは生きようってことと、彼が果たせなかったことは、オレがやってやるってことだった。 生まれてこのかた、彼より頭がキレる人間は観たことがない。ほんとうに、信じ難いほどの頭脳と、ガラスのように壊れやすい繊細さを合わせもっていた。でも、すべて未来が予見できるってことは、絶望しかもたらさないこともある。詳しくは書かないけど、戦争と、時代と、安保や体制と、高潔な自分自身の精神の狭間に立たされて、もがいて、アル中になって、車二台に轢かれて死んだ。 死んだ後は、轢いた車のどっちが致命傷を負わせたかという醜い争いになった。オレはそんなことはどうでも良かった。ただし、果たせなかった彼の想いはオレの胸の中にあって、永遠に消えることはない。 オレは彼の血を半分引いているわけだが、運悪く、頭の中身だけは似なかったし、妙に繊細なところだけは似てしまった。しゃあない。オレが彼を超えることが出来るとするなら、ガッツ、つまり情熱、そして人間としての強さだけだった。彼は弱かった。だから、たぶん、そこだけは意識して、自ら火の中に飛び込んできた。そして、そこだけは彼よりもタフになった。 これだけの年月が経っても。オレは彼の存在をしょっちゅう感じてる。だからこそ、闘っていられるってのもある。オレは道を削る。そして永遠の冒険をする。あんたが居るから、オレは寂しくない。でも、ほんとうのことを云えば、あんたと一杯やりたかった。こんな世の中で、あんたならどうするって聞いてみたかった。さ、今日はあんたの魂に乾杯しよう。

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