日別アーカイブ: 2012年7月29日

野馬追と珍獣、福島県相馬市にて

7月29日 日曜日 晴れ しかし。相馬は絶妙に遠いのです。原発の事故後、常磐道は原発付近で通行止めになり、ただでさえ広い福島県がまた一段と遠く、そして広くなった。東北道で福島市まで行き、一車線の道で霊山という山を越える。長距離の運転に慣れている僕ですら、その道程にメゲそうになるときがあります。いつものように、線量を自分の目で確かめながら進むのですが、大きな推移はもうなくなった、というか、この地区はこれくらいだよな、と自分の身体に刻まれている数値が現実として機械に表示されるのです。もはや、事故は収束した、とか、街は復興を果たした、とか。そのような情報を鵜呑みにしている人が居るとするなら、それはまったくのデマであって、今だからこそ、同じ国に住む人間として、未来をどう描くのか、深く考えるときなのだ、と僕は感じています。 果たして、愛する相馬は復興へと進んでいるのか?こんなこと、書きたくないのですが、「YES!」と太文字で書けるような状態ではありません。人口は着々と減り続けています。放射能と云う共生できない未知の敵を前にしては、それはある意味で、当たり前のことなのですが、じっさいに街を歩いて、人々と話して、自分の五感で感じてみると、胸が痛い現実が目の前に山積しています。オリンピックで浮かれている列島とのコントラストが、いっそうくっきりと浮かんできて、苦しくもあります。何よりも、誰かの無策をののしる前に、自分たちがやっていることが、自己満足にならないよう、効果的に未来に対して機能するよう、細心の注意を払う必要があります。 話は変わりますが、街に不可欠なものがいくつかあります。アイルランドのパブのような人々の「止まり木」となる場所。そして、ローカル・ヒーロー。それはサッカー選手でも、オリンピックの代表でも、ミュージシャンでも何でもいいのだけれど。 相馬が生んだ珍獣、シンガーの堀下さゆりは希有な才能を持っています。震災後書かれた歌の中で、彼女の「この街に咲く花のように」という歌がいちばん、僕の心を撃ち抜きました。そこには願いと、現実と、当たり前だったはずの日々の暮らしを求める人間として当然の欲求が描かれています。それすら当たり前でなくなった状況で聞いていると、ひどく心を動かされるのです。 彼女は昨年、「SMILE」と云うアルバムをリリースしました。相馬市に残っていたほぼすべての子供たち、約1300人が参加したアルバムです。これを貫徹することは並大抵のことではありません。そして、視点を変えるなら、街中の子供たちはほぼ、堀下を知っていることになります。 彼女が定期的にこの街でライヴを行い、そこに人が集まってくることにはひどく意味があると思いました。会場も普段ライヴが行われている場所ではなく、今回は地元が誇るお菓子屋さん「船橋屋製菓」が街の人々が集える場所を目指して、このライヴの日のために突貫工事で完成させたスペースで行われるのです。 このblogでおいおい書いていこうと思っていますが、僕らは今年、堀下や街の仲間たちと組んで、大きなイベントを開くことを目標にしています。その第一歩として、今日のライヴに僕は参加したのです。 おりしも、今日は相馬が誇る野馬追の日でした。満員のオーディエンスと一緒に一時ライヴを中断して、祭りを観に行く。そこに夕立が降りそそぐ。通常のライヴではあり得ない、相馬ならではの美しい光景でした。 何日かかけて、今年の僕らの活動を書いていこうと思います。彼の地でたくさん、たくさん意見を交わして帰ってきました。是非、読んでください。今日はこのくらいで。

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