日別アーカイブ: 2016年3月10日

劣化とともに

3月10日 木曜日 曇り   何だか、少し空気が抜けたバランスボール、みたいな。島から帰ってくると、久しぶりに寂しいって感覚を思いだすよ。さびしーーーーっ。  歯医者に行った。ボロボロの歯をメンテしてくれている凄腕のKさんが産休に入ったから、今日から担当が変わる。そして抜歯の宣告。ああ、また抜かれるのか。僕の歯がボロいのは貧乏時代の栄養不足と、ギターを弾くときに、激しくくいしばるからだ。どこかのMCで云ったけど、歯と目だけは鍛えられないんだよ。だから、若者よ、歯を大切にしたまえ。ちゃんとした磨き方を学びたまえ。オレはね、それを知ったのが遅かった。どんな高級車でも劣化していくのと同じ。ニンゲンのパーツにスペアはないのだから。  目もね。いつの間にか、複数の眼鏡を使い分けなきゃならなくなった。僕の場合、極度の近眼だから、老眼鏡は必要ないのだけれど。運転用、コンピュータ用、普段用、眼鏡を探す用。苦笑。ただし、ライヴとスノーボードはコンタクトゆえ、装着した瞬間に老眼の中年と化す。劣化とともに。  閑話休題。  僕らが知っているレコーディングの技術はビートルズとジョージ・マーチンがほぼやり尽くした。それから画期的なものは発明されてはいない。ビートルズのレコーディングの履歴と音源を重ね合わせて聴いてみると、彼らがどれだけ挑戦的で、機材を発展させ、なおかつ僕らが恩恵を受けているのかが分かる。  ただし、彼らは天才だけれど、驚異的な努力を重ねているという意味で天才なのであって、持って生まれた才能だけであの音楽を創っているのでは、決してない。  ストロベリーフィールズを、ジョンが作曲してから完成するまでのプロセスをすべて記録した音源を聴いたことがある。天才だと思っていたジョンや彼らが「これほどの」試行錯誤を繰り返して曲を完成させていることに震えた記憶がある。あれから、僕は確かに音楽への向き合い方が変わった。向き合っていられることが「幸福だ」と思えるようになった。  当たり前だけれど、人は誰しも一度だけ死ぬ。それはとてもナチュラル、かつプレシャスな経験なのだろう。小学校5年生のとき「LET IT BE」を福岡市天神のフタタで観なければ、僕の人生は違うものになっていたはずだ。親父にアルバムを買ってもらって、家にあったピアノで一ヶ月かけて、コピーした。楽譜もないし、あったところで読めないから。ひとつひとつ音を耳で拾って。キーがCだったのがラッキーだったんだね。だから、僕のピアノは未だにC専門。それもまた恩恵。  何を手渡され、何を手渡すのか。CHABOさんの歌詞がぐっと染みる年頃。劣化とともに。

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