日別アーカイブ: 2020年11月14日

封印

11月14日 土曜日 晴れ 人生は有限。 残された時間をどう使うか、同輩にとっても由々しき問題だと思う。 芸術学部美術学科油絵科ってとこに通ってた。ありがちなドロップアウト。絵を描くのは好きだった。でも、音楽ほどにはひらめきがなかった。スパークしない。だから大学卒業を境に描くことを封印した。音楽で生きていくことはそんな簡単じゃないことくらいわかっていたから。 でも描いていたことは、音楽を創る上でじゅうぶんに役立っていた。いつだって曲作りは絵を描いてるのと同じ感覚だったし、曲には明確な色彩があったし、曲ができるときは頭の中で風景を見ていた。それを音楽に置き換えただけ。 なによりも、静物や人物を数時間見続けるという行為。それは僕の造語で「見切る」というのだけれど、たとえばリンゴの反対側が透けてみえてくることがある。存在理由を理解することもある。まれに存在の本質にたどりつくこともある。それは音楽を創る上では貴重な経験だった。   あれから34年経過して、絵を描くことがふたたび向こうから歩いてきてこう言った。「もうそんなに頑なにならなくていいじゃん」、と。確かにそうかもしれない。筋トレルームを小さなアトリエにしようかな、と夢想してみる。今なら、音楽で経験してきたことを絵筆にフィードできるかもしれない。だいいち、そんなに肩肘張る必要もない。好きなときに好きなように描けばいいと思う。   そんなことを考えている間、あたまの中に流れていたのはロイ・オービソンの「She’s a Mystery to Me 」。 彼の声には、彼の歌には、いつだって独自の色彩がある。奇蹟の声だよ。            

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