blog上地獄アワー第九回、「BOB DYLAN特集」

3月1日 土曜日 晴れ

ぱんぱかぱーん、ぱにゃにゃーん(ジングル)。

blog上地獄アワー、第九回のオンエアです。DJは全力中年、山口洋が担当します。この番組始まって以来、今日は某国の標高3000メートルからネットを通じてお送りしています。原稿は国際線の飛行機の中で仕上げました。時差ボケ、アワー。笑。

まずは特集の前に1曲。

来日中のローリング・ストーンズ。

思うところあって、僕はもうストーンズのライヴには行きませんが、中学に入りたての頃、名盤「BLACK & BLUE」が僕の人生を変えたことは間違いないのです。とても感謝しています。この曲を聴いたのはシリア・ポールさんがDJだった「ポップス・ベストテン」という番組。1回のオンエアで心をすべて持っていかれ、たった2300円のLPを買うのに半年くらいかかったかなぁ。だから、すり切れるまで聴いて、僕の血肉になっていきました。僕が同時代性を意識するのは、いつも時代と共に音楽があったからだと思います。メロディーやグルーヴと共に記憶されていると云うか。イントロを聴いただけで、あの娘とデートした夕暮れとか、あの娘と歩いた海とか、あの娘の横顔とか、あの娘と(もういい!!),,,,,。じゃ、メモリー・モーテル。

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はい。では4月に来日するディランの特集です。

ちょっと前のblogに書きましたが、彼のエージェントなり、レコード会社はかなりの部分で、彼の権利を守っていて、僕がお伝えしたい曲の映像は殆どありませんでした。ある意味、これはマトモな状態だとも云えます。

だから、いつもと角度を変えてみます。僕というパーソナルな存在に、彼がどれだけ影響を及ぼしたか、みたいな。対象はディランのディープなファンと云うより、あまりに膨大なカタログの前でどれを聴いていいのか迷ってるような人に向けてって感じで。

最初に僕を撃ち抜いたのはこの曲。仕方がないのでブートレッグから。65年の演奏(オレ2歳 !)。ギターと歌とハーモニカが描き出す短編映画のような風景。目の前に風景が浮かぶのです。その可能性にむっちゃ高揚したのを覚えています。歌ってすげぇ、みたいな。

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オリジナルはセカンドアルバムの「freewheelin」に収録されています。初期の傑作です。この曲にぐっと来たら、是非手に入れてね。ジャケットでディランと彼女のスーズは冬のNYを腕を組んで歩いてるのですが、もちろん、やりましたとも。福岡で。(笑)。

 

 

続いて「SHE BELONGS TO ME」。オフィシャル・サイトに歌詞が掲載されているのですが、ソング・ライティングにおいて、いったいオレはどれだけ影響受けたん?って自分で笑ってしまいました。詳細は教えません。感じる人だけ感じとって頂ければ。オリジナルはこれまた名盤「BRINGING IT ALL BACK HOME」に収録されています。

65年、マンチェスターのライヴからどうぞ。
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と「BRINGING IT ALL BACK HOME」の収録曲を観ているだけで、ディラン特集という「くくり」がどれだけ無謀なものであるのか、思い知りつつあります。だって、このアルバム1枚だけで、紹介したいと思う曲が↓これだけあるんすよ。それ、無理。でも、せめて3曲だけでも紹介できれば。

Subterranean Homesick Blues
Love Minus Zero/No Limit
It’s Alright, Ma (I’m Only Bleeding)
It’s All Over Now, Baby Blue

 

まずは「Subterranean Homesick Blues」。1996年、31年後に僕は「TOKYO CITY DIARY」と云う曲でようやく彼に返礼しました。これはグーグルがCMに用いている映像。つまりエヴァー・グリーンってことですね。言葉という武器に対して自覚的にしてくれた曲なのです。僕にとっては。

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続いて「Love Minus Zero/No Limit 」。この曲には短編映画のようなストーリーがあるのです。興味のある人はアルバムを買って、歌詞を読んでみてください。この1曲から僕はソングライティングの基礎を学びました。

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「It’s Alright, Ma (I’m Only Bleeding) 」。9年後の1974年にザ・バンドとのライヴ盤としてリリースされた「Before the Flood」に収録されたライヴ・ヴァージョンの話です。「時にはアメリカ大統領でさえ裸で公衆の面前に立たねばならない」という一節の後の観客の声援がすごいのです。音楽が世界に果たす役割を教えられた瞬間でした。とうぜん、その映像はありません。でも、これも素晴らしい。グーグルとyoutubeとソニーに「頼むから削除しないでくれ」と投稿者が懇願するだけのことはあります。

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と、ここまで来たところで、(まだデビューから2年間しか来てないけど)彼のことを詳しく知りたい人はwikiをどうぞ。

僕は正直に云って、こういうことにあまり興味がないのです。音楽から伝わってくるメッセージだけでいつも充分だと思っています。

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角度を変えてみますか。

ディランも人の子。たくさんのルーツミュージックの影響を受けています。一番有名なのはウディー・ガスリーですが。

初期の映像作品「DON’T LOOK BACK」の中でハンク・ウイリアムスの「LOST HIGHWAY」をドノヴァンに歌って聴かせているシーン。僕は好きなんです。曲も、彼がこの曲を歌っていることも。

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続いて、ギリシアのパルテノン神殿の前でヴァン・モリソンと「CRAZY LOVE」を歌うシーン。記憶が正しければ、これはヴァンのドキュメント「ONE IRISH ROVER」のワンシーンでした。す、すごいよね。これ。

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ディランを特集するって、こんなに大変なことだったんですね。で、何と云っても「LIKE A ROLLING STONE」です。これは大変な曲なのです。ブルース・スプリングスティーンも「ママの車からこの曲が流れてきて人生が変わった」と。わたくすもです。聴いたのはママの車じゃないけど。

僕のとっても親しい友人がとても追い込まれていたとき。車に1枚のCDRが積載されていて、すべてヴァージョンの違うこの曲だったのです。つまり、ひとつの曲が彼の闇に光を照らし続けたってことです。転がる石のように。

もちろん、僕にとっても大変な曲なのです。もう20年以上前。どうしてもこの曲を聴きたくて、日本公演を追っかけていました。でも、ぜんぜんやってくれない。最終公演はたしかNHKホールだったかな。諦めきれずに、ダフ屋から券を買って、立ち見で観ました。何故か隣にどんと氏が。聞けば、僕と同じ理由でそこに居たのです。そして、最後のアンコール、闇を切り裂く一発のスネアと共に始まったのがこの曲でした。2人して失神寸前。

運命とは不思議なもので、どんとさんとHWはこの曲を演奏したことがあるのです。その時の彼のMCが忘れられません。「この曲はスネアのタンってリズムから始まります」。その言葉が全てです。

そのライヴのためのリハーサル。どんと氏は遠くから2時間かけてやってきたのです。「どこから来たんですか?」と云う僕の質問に、彼は今僕が住んでいる街の名前を応えました。渋谷のド真ん中から、どこか海の近くに引っ越したいと思ったとき、20年の時を超えて、その時のどんとさんの台詞を思い出したのです。ほんとだよ。つまりこの曲がなければ、僕はここに住んでなかったってことです。運命ってほんとに不思議だよね。

じゃ、どんと & HW。これは多分23年前の演奏。「LIKE A ROLLING STONE」。

LIKE A ROLLING STONE

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HWをかけてしまったので、カヴァーによるディランってところにスポットを当ててみます。花田裕之さんと僕の意見なんですが、ときどきジェリー・ガルシアさんによるディランのカヴァーはオリジナルを超えていると思います。1991年に出た「Jerry Garcia Band」という2枚組のライヴ盤。そこに収録された「SIMPLE TWIST OF FATE」。これを、これを、これをーーー、みなさんに聞いて欲しいーーーーーーーーーーーー。でもyou tubeにない。泣。なので、それに近いものを。でも、このアルバム、本気で勧めます。一家に一枚、「Jerry Garcia Band」。ジャケットはこれ。

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世に腐るほどあるディランのカヴァーの中で、ジェリー・ガルシアさん(ガルシアさんは尊敬しすぎていて、呼び捨てにできないのです)と並んで好きなのが、これです。聴いて頂ければ分かります。

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ここまで来て、彼のキャリアを一日で網羅することが不可能だってことがよーく分かりました。僕はずっと彼の音楽が好きだけれど、その理由をと聞かれるなら、うーん。

一カ所に留まることのない本物の流れ者だからだと思います。流されるのと流れるのはまったく違います。流れることには強靭な意志と独立心が必要なのです。彼はもう26年もの間ずっと「ネヴァー・エンディング・ツアー」を続けています。セットリストも毎日違います。ステージの上で次の曲を相談してるのも観たことがあります。そして、たぶんほぼ全部の曲を聞いているはずの僕ですら、何の曲か分からないくらい完膚なきまでに自分の曲を破壊(創造とも云う)していたり。

何よりも、人間というステージを超えてしまった「眼光」ですかね。もはや「孤独の向こう側」に存在しているとでもいうのか。

割と近年の曲をいくつか。1983年の「INFIDELS」からJOKER MAN。

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そしてこの曲は前に紹介しましたね。でも、ほんとうに好きなんで、もう一回。JOKER MANの次に収録されています。

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じゃ、最後に2006年の傑作「MODERN TIMES」から「WORKINGMAN’S BLUES 2」を。このアルバム、記憶が正しければ全米NO.1になったのです。つまり彼は過去の人ではなく、「今」を評価されているっってことです。

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じゃ、リスナーのみなさんのために、山口洋が選ぶ、BOB DYLANの名盤10枚を。

1963 The Freewheelin’ Bob Dylan

北国の少女、など名曲満載。

北国の少女、など名曲満載。


1965  Bringing It All Back Home

1965年に名盤を2枚リリースしたってことに呆れます。

1965年に名盤を2枚リリースしたってことに呆れます。


1965  Highway 61 Revisited

highway 61、行きましたとも。

highway 61、行きましたとも。


1974 Planet Waves

the Bandと奏でられた奇蹟のような音楽。

the Bandと奏でられた奇蹟のような音楽。


1975 Blood on the Tracks

1枚だけ選べ、と云われたら、これかな。「simple twist of fate」1曲だけでもその価値が。

1枚だけ選べ、と云われたら、これかな。「simple twist of fate」1曲だけでもその価値が。


1975 The Basement Tapes

地下室でthe Bandと繰り返した実験を後にロビーが中心になってまとめた作品。

地下室でthe Bandと繰り返した実験を後にロビーが中心になってまとめた作品。


1983 Infidels

マーク・ノップラーの手腕とスライ&ロビーのリズムが光る名盤。

マーク・ノップラーの手腕とスライ&ロビーのリズムが光る名盤。


1989 Oh Mercy

ダニエル・ラノア、プロデュース。このあたり興味がある人は自伝を読むと面白いです。

ダニエル・ラノア、プロデュース。このあたり興味がある人は自伝を読むと面白いです。


1997 Time Out of Mind

「月に吠える」をレコーディングしていた頃、スタジオで毎日流れてました。

「月に吠える」をレコーディングしていた頃、スタジオで毎日流れてました。


2006 Modern Times

近年稀にみる傑作だと思います。

近年稀にみる傑作だと思います。

 

ディランの特集は一回じゃ無理があったなぁ。雪山に居るDJへの励ましのお便り、リクエスト、感想などはコメント欄にどうぞ。じゃ、また来月。

 

 

 

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blog上地獄アワー第九回、「BOB DYLAN特集」 への12件のコメント

  1. 函館ゆうげん より:

    思わぬ形でどんとさんの声に再会することが出来て感動しちまいました・・・
    ワタクシもその昔、彼に出会ってお話をしていなければ
    人前で演奏するなどという事はしていないと思えます。
    ありがとうございました。

  2. うっちゃん より:

    どんとHWの「LIKE A ROLLING STONE」感激!!
    名盤10枚中9枚あります。しまった…Modern Timesが手元になかった…
    『Jerry Garcia Band』Amazonで中古盤を頼んでしまった…糧にします。

  3. きょーこ より:

    長旅、無事到着良かったです。
    ディラン特集、PCがいまご機嫌ななめで肝心な音が聴けないけど、
    文章だけで楽しく読みました。
    そして、時差?のせいか3月フライング、なんかいいな、韋駄天。
    ありがとうございましたですにゃ。

  4. のり より:

    どうも僕は初期のフォークギターとハーモニカのディランが好きなようです。
    よく聴いてたアルバムも『Bringing It All Back Home』だったんだなぁと気づきました。
    「DON’T LOOK BACK」の中では「It’s All Over Now, Baby Blue」が凄くカッコ良くて、これが聴きたくて『Bringing It All Back Home』を聴いたという気もします。
    それでも、今日初めて聴いた「JOKER MAN」は妙に耳に残りました。こういうのが良い曲って言うのでしょうかね?(笑)

    ディランを聴くようになったのは兄の影響なのですが、兄も20年前の日本公演には行っていて、やはり「何の曲か分からない」って言ってましたよ(笑)

    最後にどんとさん & HWの「LIKE A ROLLING STONE」は凄く熱っぽい「LIKE A ROLLING STONE」で良かったです^^

  5. aki より:

    ほとんどディランのことを知らないのですが、
    勢いで4月の大阪ライブのチケットを買いました。

    とりあえずレジェンドを観とかなくちゃ、と。

    今回の地獄アワーで予習しておきます!多謝!

  6. 30's より:

    地獄アワーを拝見して、学生時代に録画して何度もみた彼の30周年コンサートを思い出しました。初めてルー・リードを見たのはその時で、このブログで昨年久しぶりに再会しました。スティーヴィー・ワンダーの風に吹かれて、リッチーのジャストライクアウーマン。シニード・オコーナは会場のブーイングで唄えなくてボブ・マーリーを絶叫したり。熱いコンサートでしたね。3月にNHKのBSで2夜に渡って放送されるみたいで楽しみです。

  7. 桃子 より:

    ボブ・ディラン特集1回では無理ってわかります。地獄アワーアップからYouTubeを彷徨い続けています。ストーンズもガルシアさんも良いですね。ジミヘンで寄り道したら、洋さんの火の鳥と重なったりして楽しんでます。いつか特集して下さい。
    ディランが恋人と寒そうな冬の街を歩くジャケットにはやっぱり憧れますよね。真似した事はないですけど。
    地獄アワーも9回になるんですね。続けてくれてありがとうございます。
    雪山のDJさん!あったかーいファンがみんなでライブを楽しみに待っていますから、怪我や風邪引かないように全力で楽しんで下さい。こちらは春の気配がだいぶ感じられますよ。

  8. 奥村徹志 より:

    「地獄アワー」

    ここに札束が
    あったとしても
    最も必要な人には
    届かない世界
    それくらい、ボクは無知で
    それくらい、ボクは無力で

    ここに小さな愛がある
    やはり、この世界の
    ルールと同じ様に
    この愛は届かなくていい
    この愛は届かなくていい
    そんな感じ
    しかし世界の人々には内緒で
    深く、深く、近く、近く
    踏みしだかれるほど近く
    君へ、君へ、君へ

  9. たまみず より:

    おおはたさんの仙台でのライブでの「Don’t think twice, it’s all right」のカバーも素敵でした。
    また突然ふたりで北に行きたくなっていただきたい!
    ヤイリ、カントリー・ジェントルマン、ファイアーバード、ジャズマスター、・・・鼻血出るな(笑)

  10. たづ助。 より:

    とても楽しみにしていました。
    血の轍、私も好きです。
    また、ぜひ続編も希望です。

    きっとどんな制限もない、地獄アワー。
    思うままにやってくださいね。
    あの深夜のラジオを聴いてた身としては
    それが今も何よりも楽しみです。

  11. ゆか より:

    紹介してくれた「Jerry Garcia Band」がやっと届いて聴いています。
    たしかに一家に一枚ですね!
    英語を理解しないのに、どうしてこう気分良くなるのかと改めて思いますが、それが音楽なのでしょうね。
    大きなスピーカーで聴きたいCDです。

  12. nami より:

    はぁ~。癒されました。

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