11月10日 月曜日 雨
今回の録音の方法について、「途方もない航海」と書きましたが、経験のない人はまったくちんぷんかんぷんだと思うので、触れておきます。
以前から、資質として、僕はレコーディングスタジオがあまり好きではなかったのです。まず、開放的な音楽を作りたいのに窓がない。都会では防音のため仕方ないのですが。僕が好きな場所には窓があります。阿蘇なんて、窓しかありません。雷が鳴ったら、防ぎようがない。でも、それが音楽だと僕は思うのです。
2000年になったばかりのころ。サウンドトラック「ヒヲウ戦記」で大胆な実験をしました。廃校になった小学校跡の牛小屋にすべての機材を持ち込んで録音するという方法です。曲数が半端なかったので、早起きして、食事をつくり、散歩して曲を作る。昼前からその曲を録音して、夜は飲む、みたいな。晴れた日に、雨の曲ができるはずもなく、甚だ第一次産業的な、自然に思いきり左右される録音は困難でしたが、実りあるものでした。何よりも、あれから10年以上経過しても、まったく独自のサウンドは古くならないのです。
ならば、この時代、無駄に多大な予算をかけることなく、情熱を込めていい作品を作るにはどうしたらいいのか?独自のやり方を模索すべきです。僕らもPRO TOOLSを使います。でも、同じ使い方をしたら、世間と同じ音にしかならないのです。
きっかけは魚さんの発言でした。僕自身のパフォーマンスがスタジオに居るときより、ライヴの方がいい、と。僕もバンドのパフォーマンスはライヴの方がいいと思っていました。二人で作ったアルバム「SPEECHLESS」は殆どが千葉のANGAで録音されたものをベースに作られています。それをバンドに昇華させるのは不可能ではないかもしれない。
「HW SESSIONS」という企画ライヴを立ち上げ、バンドでの実験を繰り返しました。そのリハーサルも、ライヴの瞬間も、マルチトラックで記録されていました。とはいえ、ただ記録したものと、中盤から我々がこころから信頼しているレコーディング・エンジニア、森岡徹也が記録してくれたものは、びっくりするくらい音が違っていました。太さも、艶も、音の伸びも。最初から気づいとけよーーー。
合計15時間分くらいのファイルがありました。それを仔細に渡って「すべて」聞きました。結構、苦痛を伴う作業だったので、それは外国の標高3000メートルの宿で一ヶ月かけて、やりました。毎晩毎晩、修行のようにファイルを聞き、どれをどう使えば一枚のアルバムになる可能性があるのか、考えました。云うまでもなく、殆どがNG。ただし、魚が云った通りに、チャーリー・ワッツに負けないくらいの池畑さんのフィルがあったり(そのフィルだけでテイクをOKにしたこともあります。ロックンロールですから)、とんでもないミラクルが記録されていたりもするわけです。ただし、そのテイクに限って音が良くない、とかね。トホホ。
今回のアルバムはシンプルなものにしようと思っていたので、ストリングスやホーンセクションなど、ゴージャスなダビングをするつもりはありませんでした。もちろん、何も足さない状態で歌まで含めてOKなものも数えるほどありましたが、ほとんどのテイクには大幅な何がしかの作業が必要でした。僕はそのことを「オペ」と呼んでいました。「今日のオペは痺れるぜ」みたいな。笑。
標高3000メートルに居る間に、帰ってからのレコーディングの作業工程を決め、帰国して、チャボさんと全国を廻り、ツアーを終えて、3週間ぶっ倒れた後、いよいよ自分の仕事場で作業にかかりました。7月だったかなぁ。かなり悲壮な覚悟をもって。
コンピュータ時代になって唯一よかったことは、トータルリコールが簡単に可能になったことです。アナログだと、こうはいかない。ある曲が煮詰まったとき、とりあえず放置して、次に行くってことはアナログの作業では難しいのです。
そうやって、全体像とピークを想像しながら、砂の城を作るみたいに、基礎から音楽の家を作っていきました。ときどき大きな波に全部破壊されたりして。
まず無駄なものを取り払い、サイズや演奏を編集し、骨だけにして、本当に必要だと思うものだけ足していきます。そのとき、僕はレコーディング・エンジニアで、プロデューサーで、シンガーで、ギタリストやパーカッショニストで、何よりもソングライターなのです。そしてバジェットの管理もやります。ソファーにふんぞり返って、エンジニアに指示だけ出していたら、もはやバンドは存続できません。つまり、長い間に身につけたスキルによって、バンドはどうにか生きながらえているってことです。
これだけの職務を背負うと、客観性を簡単に失って疲弊します。いつ終わるとも知れない痺れる作業です。自分を鼓舞するのは自分だけなのです。なので、ほんとうに小学校の教室みたいに「標語」がたくさん貼られていきます。もはや、自分のためにエゴで作っているのではないのです。僕に出来ることはこれしかないのだし。
ここで、昨日の記述に戻ります。
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“真理”は、自己の思考が完全に終焉したときに、向こうからやってくるものである。
明けても暮れても。僕は毎日、海や夕陽と会話をしていました。ある意味、自分と話していたのですが。それは大切な時間でした。「走る」と云う行為が素晴らしいのは、発想が作為ではなくなるところです。考えないことによって、自分の深層にたどり着くことができます。毎日、飽きずに眺め続けた「夕陽」を、とあるもののメタファーにして、僕はバンドで誰かを鼓舞するのではなく、穏やかな、明日の力になるようなファンファーレを鳴らそうと思ったのです。
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(続く)。
ついしん
明後日、大阪でみんなにアルバムを手にしてもらうことになっているのに、まだ僕すらそのアルバムを観ていないというスーパー綱渡り(大汗)、明日リハーサルをするスタジオに届けられるそうです。ほんとうにできたてホヤホヤにも程があるってか。みんなデカイ声で云うぞーーー。買ってくれーーーーーーっ。
OK !
買います!買います!
買いますので、何処の何ていう工場かわかりませんが、
間に合わせて下さい、頼んます!(大懇願)
Land of musicから7年ぶりの新譜。
あの時もかなり「途方もない航海」でのレコーディング
だったかと思いますが、今回産み落とされるのは
また新しい「途方もない航海」の音であることが
伝わってきました。
大阪でのライブを心待ちにしております。
どこよりも早く聴けることがとても嬉しい。
工場さん、頼みます!
頼まれんでも買う!(笑)
ファンファーレまでの道程お疲れさまでした。でもまだ終わりじゃない。ここから更なる旅の始まり。
「明日の力」になるようなライヴ楽しみにしてまーす!もちろん買うぞーーーーーーっ。
good job!
出荷間に合って良かったですねー
まさしく出来たてホヤホヤ(笑)
渋谷で買いMAX‼︎‼︎
僕はバンドで誰かを鼓舞するのではなく、
*いつもHEATWAVE、山口さんの曲に励まされ気持ちを奮い立たせて来ました。
そして元気づけてもらっています。
穏やかな、明日の力になるようなファンファーレを鳴らそうと思ったのです。
*今の私にとても響く言葉でした。
ツアーにてHEATWAVEに逢える事、『夕陽へのファンファーレ』を聴ける時間をとても愉しみにしておりま~す!!!!!!!!!!\(*^O^*)/✿.。*♫ ; ゜・
「Fanfare for the Wasteland」も本当に早く聴きたいです♪
早くアルバムの全収録曲が知りたいです!
ライブは仕事の関係もあり、当日券で入る事が
多かったのですが、今回は前売り券を買いました!17日のduo楽しみにしています!
長いレコーディングの想いと、途方もない音楽への情熱、胸に受け止めました。
『夕陽』から受けた穏やかなファンファーレ、心に響きそうです。
明日からのツアー、応援してます。
1枚買って聴きたおします。
もちろん買います!
大阪ライブ楽しみです!
仕事頑張る!
牛小屋での第一次産業的制作のお話、ぐっときました。
ある和楽器が光や龍の声をあらわすように、音・音楽ってもともと自然界を表現するために生まれたもの。あるいはニンゲン以外のなにかと話すための、言葉ではない言語だと思うので、それってどこか伝統的な作り方のような気がしたからです。自然界の音みたいに肌から染み入って、細胞で聞ける音が生まれそうな。
読んでいて「途方もない航海」がどれほど途方もないのかが伝わってきます。破壊と創造、進歩と後退をくり返しながら、らせん状に高くなっていく(完成に近くなってく)風景を想像。内発性の職人であるミュージシャンの、孤独とコツコツの日々にちょっと感動です。すごい。アルバムをじりじりしながら待ってます!
明日、僕も、必ず行きます。
7年ぶりのニューアルバムうれしいがちとショック。
アンガのライヴで音も詩も一番自分の心を鼓舞してくれた「My Life is My Message」が入っとらん!
う〜ん、いつかシングルででもレコードとして絶対に遺して欲しい。切に願います。
私、ヒヲウ戦記のサウンドトラック大好きなんですよ!(^O^☆♪
今年は山口さんのライブにも行けたし、ヒヲウの頃のドラマーの伴さんの演奏も聴きに行くことができて、ヒヲウイヤーだったんですよ!
☆♪*\(^o^)/*
最新アルバムでもヒヲウサウンド感じました♪
これからも、ヒヲウサウンド、響かせよう!
これからも、私のヒヲウの旅は続く、かもね!
(^。^)