HOTEL EXISTENCE

12月11日 金曜日 晴れ / 強風

伝えたいのは決してネガティヴなことじゃない。たぶん状況が厳しいときこそ、ほんとうの表現が生まれてくる。どんなときだって、気高く、ドリーマーで居たい。

確かにCDは売れない。だからコストはかけられない。でも、僕らにはスキルがある。状況を追い風に変えて、新しい方法を探せばいい。必要は発明の母。僕はそう思う。

そしてミュージシャンは多少ミステリアスで、あまり饒舌じゃない方がいい。語り過ぎとSNSには気をつけろ。笑。でも興味をもってもらわなきゃいけないから、そのさじ加減は難しいんだけど。

—————————————————-

HEATWAVE、今年で36年目。

ぐっと会って、集中してぱっと録って、仕上げにやたらと時間をかける。僕らが顔を合わせるのはスタジオのみ。住んでる場所も違うから、あとは魚とネットを通じてやり取りする。会話をしなくても、送られてきたファイルの中に刻まれた音がメッセージ。あとはひたすら僕が音に向き合い、最後の化粧の行程を魚が担当する。

若い頃。ネイティヴ・アメリカンの住む大地で、勝手にヴィジョン・クエストをやった。彼らは12歳になると、荒野の中で、宇宙と地面を、自らの身体を通して結ぶ場所を自分の力で見つけだし、そこに水だけで3日間滞在して、ヴィジョンを得る。そのヴィジョンをメディスンマンに伝えたとき、初めて彼は名前を得て、少年ではなくなる。雷鳴を見たものは「ローリング・サンダー」という風に。

内包する宇宙と、ほんとうの宇宙に境はない。そのことを知る人は少ない。テレビを見てたら気づかないよ。その曖昧なエリアのことを、ポール・オースターの新作に書かれていた言葉「HOTEL EXISTENCE」と呼ぶのがふさわしい、と僕は思った。そこにはトラウマやヴィジョンが映し出される。これ以上の説明は野暮だから止める。2016年を生き抜くのに必要な叡智だと僕は思う。オースターさん、ありがとう。

————————————————–

ジャケットの絵を描いてくれた人と僕は会ったことがあるらしい。彼がこの曲を聴いてくれたかどうか、敢えて確認しなかった。でも、きっと会うことになるだろうね。

————————————————–

12/26のライヴでみんなに届けることができます。通販は年明けの1/6くらいからを予定してます。みんなの日々に響きますように。

————————————————-

Hotel Existence

野生の鷹のように気高く
風とともに去ってゆけたら
いつか君にまた会えるかもな
雨粒として あるいは ひかりとして

日々は意義ある悲劇で喜劇
世界と関わるほどに 孤独になっていくだけ
それでも探し続けているものは
きっと理不尽の向こう側にある

花を飾ろう
白い花を
イグディスタンスと云う名のホテルで君の
明日のために花を飾ろう

いつか君は気がつくのかな
自分がしでかしたことの 傲慢さに
けれど期待は裏切られるだろう
ならば今 感謝と祝福を

この目で見たことを 知らなかったといえず
知ってしまったことを なかったことにできず
ブルーに絡まったまま 投げ出したなら
何もかもが この世界と同じ

荒地に種を撒き続けたら
いつか慈しみの雨が降るだろうか
生きながら 嘆いて 死んでいるよりは
いつだって理不尽の向こう側をゆけ

ひかりが輝いて 影が生まれて
木の葉が枝から そっと離れてゆくとき
すべてに敗れ去ったとしても
未来だけは君に残されている

ホテル・イグディスタンスの壁に
存在と云う名のホテルの壁に
あの日のヴィジョンが絵になって飾られてた
まるで幻を見ているようだよ

君の顔を忘れてゆく
君の声が思い出せなくなる
君の夢は何だったっけ?
でも、ようやく君が理解できそうな気がしてる

野生の鷹のように気高く
風とともに去ってゆけたら
いつか君にまた会えるかもな
雨粒として あるいは ひかりとして
雨粒として あるいは ひかりとして

by 山口洋

素晴らしい絵をありがとう。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

HOTEL EXISTENCE への16件のコメント

  1. エイジ より:

    12/26のチケットを買いました!
    やっとついにとうとういよいよHEATWAVEのライブに行けます!!
    嬉しい!!!
    CDも楽しみです!!!!

  2. うっちゃん より:

    素晴らしい歌(詩)をありがとう。
    ここを見ている多くが、そううなずいてるはず…。

  3. makinosaka2 より:

    なんでだろう・・・
    両手をギュッと握って、ウワァーーーと叫びたい気分です!!!
    12月26日行きます!!!
    楽しみです!!!

  4. shinta より:

    この曲をLIVEで聴いたとき、懐かしい気がしたのはなんでだろうか・・・

    「同じ時代に生きている」と感じることができたということでしょうか。

      ひかりが輝いて 影が生まれて
      木の葉が枝から そっと離れてゆくとき
      すべてに敗れ去ったとしても
      未来だけは君に残されている

    名曲!(だろ、この曲!?)

    オレの中では5本の指に入るね。マチガイナイ。

  5. スズキコウイチ より:

    この詩は凄い、鳥肌もの。
    敗北の連続で勝利の美酒に酔いしれることなんて一度もない自分でも、ブルーに絡まったまま投げ出さずに行こうと思える。知ってしまったことをなかったことにはできない。

  6. knz より:

    荒地に種を撒き続けたら
    いつか慈しみの雨が降るだろうか

    のところ。読んでて涙が出た。
    (T_T)

  7. daisy より:

    歌詞を読んで、ジャケット写真を見てほんとうにグッときました。
    歌詞すごい。なんだか、ネクストステイジに突入したような…これまでの歌詞とまた少し違う感じがします。
    いま、このときに、音源として出したいと思わせるだけの想いがこの曲に込められてるんだろうと勝手に想像しています。
    12/26にライブへ行くことは叶いませんが、年明けに手にすることができるのがほんんとうに嬉しい。感謝感謝です。
    これを糧にハードな年末を乗り切ろー!
    で、新しい年を祝福しーよー!

  8. ぽぽ より:

    ここ数年の活動と想いが積み重なった集大成のメッセージだなぁ(涙)
    静かに強くなられたのですね。益々。頼もしい。

  9. Masako より:

    ソロライヴの記憶をたどりながら、詩を何度も何度も読み返し。いつもとは違う感情。タイトルとジャケットに見える情景、想い。
    今、抑えきれない高揚感。涙。
    洋さん、HEATWAVEのファンであることに感謝。
    CD沢山の人々に届きますように!

  10. nakamura より:

    完成を楽しみに待っていました。
    2015年に届けてくださってありがとうございます。
    ジャケットも素敵ですね。部屋に飾ります。

    ライブで聴くたび今の自分に響くものを感じていました。
    大切な人を想う、私にとって大切な曲になっています。
    一年の終わりにHEATWAVEのライブを観れること 本当に嬉しいです。
    26日を楽しみにしています。

  11. saw より:

    ジャケットに使われている作品、福岡が縁の、ある作家さんのことを想起しました。熊本でお渡しした(押し付けた!f^^;届いてますよね?)音楽のミュージシャンにも交差した。
    その方のいまの作風を存じ上げないのですが、たぶん別の方だとは思うんですが。
    でもこんなジャケットの音楽をいまのヒートウェイヴは出すのだなあとなにか感慨。
    かわらずなにもない年の瀬明けですが、年を越して迎える愉しみがひとつできました。
    ぶじ暮れて明けて新譜を聴くのを心待ちしております。

  12. y より:

    雨粒、ひかり、風、香り・・・
    形を変えて、過去と未来の別なく時を超えて、
    敵も味方もなく、あなたとわたし、彼、彼女、・・・
    すべては一つ、大きな宇宙の一つであり、すべて

    洋さんのHotel Existenceから、そんなことを思いました。
    早く聴きたいです。

  13. かなた より:

    以前、加古川のライヴで聴かせていただいた時から、好きな楽曲の一つになるに違いないと確信していました。手元に届くのが今から楽しみです♪
     穏やかな年末年始を、過ごせますように。

  14. こびど より:

    理不尽の向こう側…、ゆきたい‼︎

  15. ヘンテコリン より:

    私も、理不尽の向こう側・・・ゆきたい!!わん!

  16. ピンバック: 【服飾日記】明日のために花を飾ろう - okadaic.net

shinta への返信 コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>