儚さ

2月18日 火曜日 曇り

”生涯、彼はたったひとつのバンドを続けることに情熱を費やした。”

それが理想とするシンプルな生き方。

乃木坂にあるソニーのスタジオに出向いて、30年の時空を超えるプロジェクトへ。当時のマネージャーと担当エンジニアも参加してくれているので、プチ同窓会のようでもある。違うか。笑

元マネージャーに初めての息子が生まれた日のことをはっきりと覚えている。スタジオにその一報が届き、彼はスピーカーに突っ伏して泣いてたっけ。その息子が36歳になり、孫が産まれ、可愛くて仕方がない、と。笑。

隔世の感、、、。

 

精魂込めて創られたアナログのマスターテープが素晴らしいのはその骨密度!としかいいようがない音世界だから。絶妙な塩梅で入れられたレベルによるテープ・コンプレッション。それを素晴らしい再生装置で聴くと、目前に音風景が拡がっていく。何度も書くけど、デジタルとは世界が違う。過去の自分による、今を生きる自分への褒美と言ってもいい瞬間。

数年前にアルバム「柱」をアナログ化した際にはマスターテープが発見されなかった。それゆえ、禁じ手を使ってアナログ化された。「陽はまた昇る」の際には状態のいいマスターテープからほぼダイレクトにアナログ化された。エンジニアも含め、仕事が素晴らしすぎて、手を加える必要がなかった。マスターテープのダイナミクスがそのまま盤に刻まれた。アナログのいいところがすべて継承され、具現化された素晴らしい仕上がりになった。

今回の作業がなにか、ということはのちにきちんとお伝えするとして。

 

マスターテープは現存していた。今回も胸が高鳴ったけれど、テープ媒体の寿命が如実に現れていた。磁性体の限界なのだった。たった一年の間に、、、。

インスタに書いたけれど。ここ数年で磁性体の限界がやってくる。これだけ厳重に管理されたものですら、この状態なのだから、それがカセットであれ、VHSであれ、オープンリールであれ、急激な劣化が始まるのは間違いない。DATなどはリーダーテープの糊が剥がれ、ヘッドに絡みつく、と。

今回は2006年にレコード会社によって、96K、24bitといういわゆるハイレゾでアーカイブされていたため、ことなきを得たけれど、アナログを一旦デジタル化してアナログに戻すという意味不明なプロセスを経て、アナログ盤が制作されることになった。

むろん、音としてまったく問題はないんだけれどね。

デジタル化したところで、永遠にその音源を遺せるということでもない。でも、1日をかけての作業を見守りながら、失われてもいいではないか、と感じていたのも事実。その儚さがいい気もする。

”生涯、彼はたったひとつのバンドを続けることに情熱を費やした。”

それでいいじゃないか、と思う。

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儚さ への2件のコメント

  1. htnk より:

    色々と残せるものならば残したいけど
    子供の頃、セロテープで綺麗に補強したつもりのノートが
    数カ月後には訳が分からん状態になって、
    破れっぱなしのほうが長持ちしてましたね

  2. ハートロッカー より:

    山口さんは生涯ヒートウェイヴだよね。

    これだけキャリアが長いともう数え切れない沢山の音源がある訳で。

    アルバム制作の段階でどれほどのデモがあるのか‥‥

    完成に至るまでの音源にも興味がある。

    リハ、公演も含めてもエグいやろね。

    聴いてみたいけどね。もう埃被ってるのもあったりして‥‥

    デジタルは整理しやすいね。どうなんだろ。

    僕も負けじとヒートウェイヴファン歴長くなった。リーフレット、半チケなど全部置いてるよん。アナログも良き♪

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