繋ぐこと

12月8日 土曜日 曇り 

 真珠湾の日。そしてジョンの命日。

 ステージにチーフタンズが現れた。でも、それは僕が慣れ親しんだチーフタンズではなかった。僕の大好きなメンバーが3人も居ないのだ。それでもメンバーは前進をやめなかった。何という50年だろう。その胸中を察しているうちに、音楽と相まってぐっと来るものがあった。

 新たにカントリーの要素を取り入れ、素晴らしいダンサーを従え、加齢という抗えない強敵を総合的なエンターテイメントとして昇華する形で、推進力に変えていた。天晴としか云いようがなかった。

 何よりも、彼らはすさんだ世界中を音楽で繋ごうとしていた。女性ばかりで結成された日本のレディー・チーフタンズしかり、バグパイプバンドしかり、ガリシアしかり、宇宙空間しかり、キューバやメキシコしかり。最後にはオーディンスと手をつないで、望む者たちをステージにまで上げてしまった。あんなにステージに一般人が上がっているのを見たのはイギー・ポップ以来かも。イギーは興奮したオーディエンスをなだめるのに必死だったが、彼らは最後まで人を信用しているように見えて、狂乱のステージの中、さっさと楽屋に帰っていった。

 ステージに上がってしまった人たちは表情が変わっていた。醒めやらぬ興奮って顔をしていた。ああやって、すべての人たちにエネルギーを与えていくこと。人と人とを繋いでいくこと。厳しいツアー、そしてスケジュールをこなしながら。

 したたかであること。貪欲であること。プロフェッショナルであること。人を信じること。自分を信じること。音楽には力があること。ニンゲンは諦めない限り進歩すること。音楽には人そのものが表されること。エトセトラ。エトセトラ。あまりにも多くのものがステージと客席の中空に浮かんでは消えた。

 さて。自分は何処を目指そう。振り返ることに、あまり意味があるとは思えない。ありがとう、チーフタンズ。あなたたちの音楽が好きでよかった。

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繋ぐこと への1件のコメント

  1. えんどう豆 より:

     チーフタンス、来日したんですね。

     山口さんを知る前から、ファンでした。

     20年ほど前、CD屋さんで偶然聴いて、気に入って買いました。

     伝統の中に精神性も入っている感じがして、大地を感じるのが好きです。

     山口さんともつながってるなんて、不思議です。

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