松本にて

12月7日 金曜日 曇り 

 さぁ、チーフタンズを観にいくぜ、と松本のホテルでスタンバイしていたら、不気味に地面が揺れた。本能的にこれはタダ事ではないと思った。テレビをつけ、まず頭に浮かんだのは原発は大丈夫かってことだった。

 こんな時に電話をしても意味がない。迷惑をかけるだけだ。TWITTERで福島の友人たちの行動を追っていたら、多くの友人たちは逃げようとしたが、渋滞でどうにもならないようだった。まったくもう、何と云うか、その。復興と人は簡単に云うけれど、彼らには逃げ道さえ用意されていないのだった。嗚呼。

 何人たりとも、そこに住みたいという権利は認めなきゃならない。でも、その上で、彼らの心の上に2年近くに渡って暗雲のように低く、深く垂れ込めている「いつ、何が起きてもおかしくない」と云う不安。それだけは取り除いてあげたいと思うし、そこに住んでいる限り、取り除くことは難しい。

 よく僕はこう云われる。「あなたは何をしようとしているのですか?そこに住むことを積極的に応援しているのですか?それとも、移住してもらうことを望んでいるのですか?」。僕は云いたい。100人居れば100通りの事情があるのだよ。そりゃ、本心を云えば、そこには住んで欲しくはない。でも、どうしても離れることができない人だって居る。だから、どうにかしようと思えば、それは国策レベルでしかあり得ない。僕らは真剣に候補者を選ばなきゃならない。そして、民意でこの「逃げ道さえない」状況を伝えなければならない。せめて、二車線の「逃げ道」くらいを3方向に作ることくらいはしておかなければ。

 僕らは忘れてはいけないことがある。今回の地震にもメッセージがあるはずだ。死者が出なくて良かったということでは決してない。

 松本のコンビニで、新聞の見出しを見た。「世論調査で自民過半数を確保」みたいなものだった。暗澹たる気分になった。彼らは原発さえ止めようとしない。憲法を変えようと云う。妙なナショナリズムの風に乗っかって、国民は強いリーダーを求める。誰かに頼るのではなく、ひとりひとりが現実を見つめ、自分に出来ることを考えて欲しい、と思う。彼らに「逃げ道」さえ作れないのであれば、彼らを見捨てたのと同じだ。体験したことはないけれど、「戦前」とはこのような空気だったのではないか、と僕は思う。どうしようもなく気持ちが悪い。

 チーフタンズの話はまた追って。

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松本にて への2件のコメント

  1. michio より:

    僕は山口さんの音楽がめちゃめちゃ好きです!
    三年ほど前に初めて聴いてから、日本語の歌詞の音楽の中では今だに1番好きです!

    でも憲法改正は必要だと思っています。
    世界が平和になれば良いと思っています。
    でもそれは、まず自分が、家族が、友達が、地域が、日本が、友好国が、敵対国が、世界が、ってゆう順番です。
    こんな考え方が世界中の争いの火種なのかもしれません。
    でもその一つ一つに嘘偽りがなければ、きっと世界は良くなると思っています。

  2. 楠生晃士 より:

    原発の有無、消費税増税、TPP、もちろんこれらの是非について様々な考えがあるのは当然だと思います。ただこれらと同じくらい大切な問題だと思う「外国人参政権」についての各党の主義主張をどのマスコミも報じないことに怖さを感じるのは俺だけかな。マスコミが流す問題だけの是非に感情的になるのでなく、独自が学び、より客観的、俯瞰的な視点が必要なように思います。

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