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Mr.OUTSIDE #011、火を熾すとき

2月18日 水曜日 晴れ 阿蘇の山の家にともだちが焚き火台を残しておいてくれた。たぶん数千円のチープなやつ。 ある日、夕暮れとともに焚き火をしてみて、ハマってしまった。この愉しさは何なんだろう?原始の歓びとでも言えばいいのかな? 毎日続けてるうちに上達していく。燃やすものはそこらに落ちている木だし、焚き付けは落ちている杉の葉。数時間楽しんだあとは灰しか残らなくなった。振り返ってみたなら、子供の頃から火が好きだった。庭でマッチを大量に擦って母親にいつも怒られてたっけ。笑。 薪ストーブの火を見るのも好き。でも焚き火はもっとプリミティヴ。揺らぎと生命の根源があって、それを「護る」ことに使命を感じたりもする。もはや都会では焚き火をすることもできない。阿蘇でさえ、見つかると警察に怒られるらしいけど。もし、自分に子供がいたなら、これは経験させるな。十分な学びがある。火を熾し、それを護ることには。 みんなが思っているほど簡単ではないし、若干の危険も伴う。類焼の可能性は常にあるし、風には気をつける必要がある。それでも、原始の世界で人類が火を知ったとき、その生活が劇的に変化したのはよくわかる。 まるで原始人のようなシンガーのともだちがいる。アイルランド人だけど。彼は音楽でようやく家を建てた。でもある日火事になって全焼。そのときに、「うちに火の神が来た!」と喜びすぎて離婚に至ったという笑えるような笑えないような話があるんだけど、オレはわかるよ。その気持ち。笑。 このアルバムは福岡のJUKE RECORDの松本康さんに捧げられている。彼はティーンのオレに本物のブルースを教えてくれた。この経験は財産以外のなにものでもない。10代にして、黒人の哀しみが奏でる音楽を知り、それが血肉になったのだから。 そのとき、自分に課したことがあって。ブルースを演奏しないってこと。それをやっちゃあいけない、と。10代なりに思った。それほど、身体の深いところに沁みる音楽だった。 オレも60を超えて。火を熾しながら思った。このフィーリングを自分なりのブルースにして表現してもいいんじゃないかって。実に40年以上の時間が流れてたけど、それは礼節でトラディション。誠実さって書いてもいいのかもしれない。 レコーディングは一発録りで。それにわずかに音を重ねただけ。この曲は早期に録音されて、ゲットした瞬間、このアルバムはイケると確信した曲でもある。   というわけで、インスタライヴ第2回は今週末2/21(土)、19時から開催。アカウントは 「heatwave1979」 です。 アルバムへの質問、感想も同時にお待ちしています。2/19(木)いっぱいまでblogのコメント欄で受けつけています。どしどしお寄せください。たくさんあると幅が拡がって嬉しいんです。アルバムの発売がなければ、インスタライヴもやらないと思うんで、遠慮せず投稿してくださいまし。創った本人がお応えします。タンバリンの質問、嬉しいなぁ。そういうこと、聞いてくれるとマジ嬉しい。   続いて番組出演速報です! FM福岡 「Hyper Night Program GOW!!」 生出演(電話) 2月19日(木) 19:13頃~19:30頃 ぜひ!  

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Mr. OUTSIDE #010、ボーダーライン

2月9日 月曜日 天候不明 日本人ってバカの集合体なんだろうか。 でも一般的に言えば、オレが本物のバカってことになるんだろう。選挙の結果を見て、腰を抜かした。予想はしてたけど。ここまでとは。。。すごいね。もはや、言葉も見つからない。 でも、ひとこと言っておきたいのは。あなたの子供が戦場に送られるかもしれないんだぜ。そして奴はそこには「絶対に」行かないぜ。で、その分岐点はここにあったのかもしれないんだぜ。見せかけだけの、強くもなんともないクソリーダーに「お願いします」って半ば盲目的に託したあなたの判断がそれを招いたってこと。 なんで人と人は争わなきゃいけないわけ?殺し合わなきゃいけないわけ?軍備を増強しあわなきゃいけないわけ?いつになったら過去から学ぶわけ?どうして「違い」を受け入れて、平和的に話し合うことができないわけ? オレは理解できない。そして胸クソが悪すぎる。 こういうこと書いて、ファンを失ったらって。んなもん、ぜんぜん構わないよ。 おっと、危ない。ジャーナリストのともだちが教えてくれたんだけど、これってトランプと同じ分断支配なんだってさ。まんまとオレもその罠にはまるわけにはいかないね。彼がいう通りこの国もいよいよ分断社会になるだろうけれど。 知っての通り、オレはまったく政治的な人間じゃない。でもね、今回は本能的に危機感を感じた。あいつはヤバい。かつて見たことがないくらいヤバい。オレの身の回りに自民党を支持してる人間はほぼいない。ってことはどれだけマイノリティーで、どれだけ偏った場所にいるのかってことも示してる。日本的に言えばね。 でもね。「日本列島を強く、豊かに」って、この数十年で弱く貧しくしたのはどこのどいつだよ。お前らだろ?そしてそれを選んだのがオレたちというこの、いつもの構図。 こんなクソみたいなロジックさえ見破れないことに絶望感はある。そりゃ、あるよ。電通あたりが立てたであろう作戦にまんまと負けた気がしないでもない。ほんとに忸怩たる想いってこういうことを言うんだろうね。 まあ、ありえない大勝の振り子の揺り戻しはあると思う。この日本人の不和雷同っぷりを見ていたらね。 でも、オレたちは生きていかなきゃならない。希望をもって。 だから。頭を冷やしてきます。雪山で。 ちょっと、これはオレにはキツすぎる。。。国家ってもんから本気で離脱したいとすら思う。。。   —————————   Mr. OUTSIDE #010、ボーダーライン 一昨年、割と身近なというより、自分に降りかかるリアルな問題として孤独死を体験した。会ったことも話したこともない人だけれど、真夏だったゆえ、数ヶ月発見されることがなく、その状況がどのようなものだったか、書くまでもないと思う。痛ましかった。 人としてソングライターとして。しばし深く考えた。 あなたに起こり得ないと思っているのなら。それは想像が浅すぎる。事実、オレには起こり得ないと思ってたんだから。 こういうことが起きると、さらに責任のなすりつけあいが始まるのが人間社会。亡くなったことよりもさらに痛ましい。オレはソングライターだから、すべて体験することにした。 彼はなにも悪くない。昔、実家の庭の棚で真冬に野良猫がカキンコキンに凍って死んでた。もちろん庭に葬ったけれど、それと同じことじゃん。命としては。 だから彼の人生を想像して歌を書くことにした。僅かな「希望」を込めて。 歌わなかったワンブロックがある。それを歌わないことで、歌の深みが増すと思ったから。あぶりだしみたいにね。 この人が育った家の前の道は舗装もされていなかった。中学校に上がるころ、ついに舗装された。すべて想像だけれど、そのワンブロックはこの人の人生を語る上でとても重要なファクターだから、今日は特別にそこを載せておきます。 この歌は明るくないけれど、とてもたいせつな歌。マイナーコードのAメロからサビでメジャーコードになるところに僅かな希望を託した。   ボーダーライン 右肩上がりの神話に踊らされ すべて失った者に 帰る場所はない 「今さら誰かを恨む気もないし」 そう語る君の目に 夕陽が沈んでゆく 孤独な鳥たちが くちばしを天に向け ラストシーンは遠くないと思い知るとき 「時代や運のせいじゃないのさ」 誇り高く 進んで歯車になったこと … 続きを読む

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Mr. OUTSIDE #009、Money

1月27日 火曜日 晴れ 能動的に曲を書こうとしなくても、自然に書けてしまうことが稀にあります。 いつもの飲み屋からの帰り道。川沿いをほろ酔い気分で歩いていたら、「Money」が降りてきました。帰る頃にはほぼ出来てた気がする。 翌日、コードをループさせて歌詞を仕上げました。偉そうなこと言ってるくせに、その実行動が伴わないとある誰か。とびきりダサいと思ってました。結局、カネに巻かれてしまう人生。ダサすぎる。死んでもこうなりたくないという自戒も含まれています。 Moneyをどう使うか。人格と品格が問われます。綺麗に使ってこそ、それは生きてくる。使わなければ流れない。それはなかなかな技術だと思います。 オレは売れていないから、もっと貧乏じゃなきゃいけないらしい。そういうこと、面と向って言う輩もいます。リッチではないけれど、ちゃんと生きてます。どうしてかって、Moneyの使い方を身をもって学んできたからです。それが正しいのかどうか知らないけれど、じぶんのところでせき止めないからです。 売れなかったことで、じぶんの承認欲求は粉々に砕け散りました。認められたかったのです。でも認められなかった。それが良かったのだと、今となっては。その価値観から離脱できたのです。じぶんのやることに集中して生きていれば、他人がどう思うかなんて、ほんとうはどうでもいいことなのです。そこに到達したのは大きかった。 うちの愚母の名言。「貧乏はいいのよ。でも貧乏くさいのはダメ」。大した母親じゃないけど、これに関してはよくぞ言ってくれた、と今も思っています。 老後の資金2000万とか。ほんとにメディアはテキトーなこと言うけど。そうじゃない人生もあるってことを証明したいとは思います。 ついしん 昨日、紹介したルシンダ・ウイリアムスの新曲。反応ないけど、彼女、オーバー70歳です。でね、なににこころ打たれたかって。アメリカは銃社会なんです。州によってはスーパーに銃が売ってるような国です。そこでこの表現を貫くって、どれほどのことなのか分かります?あなたにその勇気ありますか?僕はそこに感銘を受けたのです。いくつになっても長いものに決して巻かれないこと。尊敬します。      

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Mr. OUTSIDE #008、大雨洪水警報

1月17日 土曜日 晴れ 今日は水戸へ。歴史あるジャズバー、bluemoodsの最後のコンサート。もちろんオファーを受けたからには全力です。体験した人はただ音を浴びるだけではなく、bluemoodsの復活までぜひ見届けてほしいのです。よろしくお願いします。 ————————— Mr. OUTSIDE #008、大雨洪水警報 長谷川さんが書き遺した曲の中でも、特別にたいせつな曲。 互いによく話し合ったネイティヴ・アメリカンのイメージがずっとあったのです。ロビー・ロバートソンが創ったネイティヴへのサントラがあるんだけど、それにイメージは近い。でも、なるだけジャパネスクでもありたい。彼は小樽だし。それを人力トランスで表現したかったのです。もうコンセプトがめちゃくちゃ。笑 トランス感はもちろん同期ものなんか使いません。魚ちゃんのオルガンの左手。もちろん生演奏です。それを僕がミックスでステレオに振った。これ、アナログだと針が飛ぶので無理なのです。CDならではのミックス。振ったというか、ファイルを二つ作って微妙にずらしてLRに配置。 謎の鳴き声をどうやって創ったかは秘密。コンセプトは象です。象が危険を仲間に知らせる鳴き声を表現したかった。なかなか、うまくできてる。実は全編にわたってうっすらと入ってます。もはやどうやってリズムをゲットしたか忘れたけど、もちろんクリックなしで、ドラムとオルガンと生ギターと歌を録音。そして、ドラムとオルガン以外はすべて僕が一人でダビングしてやり直し。ギルドのギターでアルペジオのリフとリズムカッティングを作り、おかんのストラト(1万円!)でオブリを弾く。例によって、一人で黙々とコーラスを入れて、「悪魔を憐れむ歌」並みにマラカスとタンバリンを振る。この曲のためにスライベルを2回買い直して、アルバム最後の録音はこの曲のスライベル!もちろん人力で僕が演奏。音楽が完成するまで、3回くらいコンセプトからやり直してると思うけど、そのおかげでnowhereなものに仕上がったかな、と。 いつだって大雨洪水警報は出てると感じているのです。いや、まじで。 数年前、関東に数センチの雪が降って。東京から車で帰ってくるのに6時間くらい要したわけです。そのリスクマネージメントのなさに愕然としたのです。いや、だから、大雨洪水警報はいつだって出てるって。ほんとに。 警鐘を鳴らすというより、そんなつもりでこの世を生きてる方がいいと思うのです。それゆえ、トランスで仕上げたかったってわけです。 長谷川さん!伝えたよ。笑。    

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Mr. OUTSIDE #007、裸足のマリー

1月12日 月曜日 晴れ たくさん感想をありがとう。みんなの日々で力強く響いていて、とっても嬉しい!引き続き、聞かせてください。 まず、たいせつなお知らせから。 ニューアルバム「Mr. OUTSIDE」の先行通販は今日いっぱいまで。通販の窓口は一般発売の日まで一旦閉じます。どうしてって、昨日も説明したけれど、こんな時代にバンドを支えてくれた人たちに「自分の手で」ちゃんと届けたいからです。 それをきちんとやり終えてから一般発売、そして最後に配信。世の中と逆行します。笑。でも、これはオレに言わせれば当然。一般発売の日もまだ決めていません。なんだ、それって、時代の中で自分たちの「意志」をもって生き抜き、そして責任をもって届けるには、こちらも考えて行動したいからです。 毎日たくさんのオーダー、ほんとうにありがとう。シャチョー、ひとつひとつにサインを入れて発送しています。残念ながら未だ真っ赤な赤字でございます。次に繋げていくためにも(最後かもと言っておきながら、またアルバムを出したいと思っている 笑)、みんなが働いてゲットした尊いお金でゲットしてくれたら嬉しいです。 本日24時まで。明日までには発送します。オーダーはこちらから。     ———————— さて、6曲目「裸足のマリー」。たいせつな長谷川さんのロマンチシズム。 どうしても表現したかった。曖昧模糊とした世界がずっと頭の中にあったから、形にするのはとっても難しかった。モロッコなのか、鳥取なのか。笑。砂漠と砂塵と素肌と未来へのヴィジョン。作っている間、僕は風景しか見ていなかった。 バンドのメンバーにはなんにも説明しなかった。そうやってヴィジョンをピックアップして、さらに強固な「曖昧の世界」を構築する確信だけはあったから。魚さんはさすがな人でギターを弾くと言い出した。なので、左がオレ、右にうっすら聴こえるのが魚さんのギター。いきおい、ただでさえベースがいないのに、ベーシックトラックはスッカスカで揺れ揺れのものが出来上がる。テンポもヴィジョンも揺れ揺れ。それゆえ、完成させるのは難儀だけど、面白いものになるとは思った。 まずは歌って、芯を定めた。それはそんなに難しくなかった。次に揺れてるものを支える柱が必要で、ベースを弾いた。ふにゃふにゃなものから、強固なものまで。ベースまで曖昧にしてしまうと「クラゲ」みたいな音楽にしかならない。ここはどうしてもいい楽器が必要だったので、家人が留守の間に、64年のジャズベースを勝手に弾いた。揺れるリズムにベースで柱を立てるのはなかなかな高等技術だった。もちろん曲の途中で繋いだりはしない。スルーで弾くのには相当時間がかかった。 調べた。12テイク弾いてた。 最初から「なんだかわからないギター」が頭の中で鳴っていた。「曖昧の世界」にはマストで必要。クリス・ウィットリーのアルバムでマルコム・バーンが弾いてるようなやつ。そういう演奏、長谷川さんが愛していたから。ともだちが貸してくれてるレスポールのゴールドトップを思いっきり歪ませて弾いた。それにナショナルのドブロを加え、最後にパーカッション類、大量のコーラスを独りで(悲しい)。 なにが悲しいって、コーラスを独りで録ってるときが一番悲しい。ほんとに身近に歌える人がいない。。。トライセラトップス、抜群にコーラスが素晴らしくて、オレは羨望の眼差しでライヴを見てる。笑。 音楽が完成したところで、ミックスがまた困難を極める。楽器のバランスが超絶に難しい。たかがロックンロール。でも、絶妙な塩梅ってものがある。これがいちばん時間がかかってる。マスタリングも低音が出過ぎて、一度やり直してる。 この曲がアルバムにあるかどうかはオレにとってはでっかい問題ゆえ、収められてとってもよかった。実は左から出てくるギターを弾き出した瞬間、これはイケると思ってたけど、完成させるのは難儀だな、と。気づいていて、その通りになった。ははは。 やり遂げたよ。長谷川さん! このアルバムに収められなかったたくさんの曲がある。中でも「収穫の季節」という曲は第一次産業に従事するともだちから多大なインスピレーションをもらったから、どうしても収録したかった。完成させたのに、どう曲順を考えても、場所がなかった。。。。。 なので、どういう形でか、聴いてもらえるようにします。   アルバムの到着後の問題、未到着など、トラブルは遠慮なく連絡してください。マッハで対応します! 楽しんでね!      

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Mr.OUTSIDE #006、EMPTY (空)

1月6日 火曜日 晴れ 世界の警察?、大国の大統領ならば、他国に攻め込む暴挙が許されるのか。そのクソみたいな大統領にノーベル平和賞をと言った首相のことを、オレは決して忘れない。 胸クソが悪すぎる。 宝、勇気、信じる力、命、自由、知恵、愛、信念、心、未来、宇宙、忍耐、野生のバラ、記憶、軌跡、太陽、ハングリーさ、愚か者、覚悟、淡い悪意。 世界は相変わらず君と共にある。 労働の尊さを。逞しい腕に知性を。 ↑ 詩の断片を書き留めておくノート。早朝にこう書かれていた。脳みそを使うべきだ。暴挙に対峙するには。 ————————————————— 新しいアルバムの5曲目、Empty (空 )。 書いたという記憶がない。その自覚もない。不思議な曲。でも、アルバムにとってはなくてはならない中核をなす曲でもある。 Nothingは無。それはない、のだ。でもEmptyは空。実在する。空っぽだからこそ、そこにはなにかが注がれる。決して作為ではない。 その境地に至るまで、バンドを始めて46年もかかった。素晴らしい演奏をしているとき、空っぽなのだ。なにも考えていない。勝手に身体が動いて、勝手に歌が身体から湧き出てくる。近未来も予測できる。決して作為じゃない。こうやってやろう、なんて考えて、うまく行ったためしがない。流れるのだ。流されるのではなく。それが「空」の意味。 空っぽでいれば、それはなされる。ただし、空っぽでいることはとても難しい。それを表現しようと思ったから、自ら空っぽになることが必要だった。 そして、それは割とあっという間に形になった。歌詞もまったく悩んだ記憶がない。オレはただ、なにかの受信機だっただけだと思う。 録音するとき、魚ちゃんが珍しく音符ではなく、歌詞カードを鍵盤の前に置いて演奏していた。池畑さんは2小節目の1〜3拍目にどうしてもシンコペーションを入れたがった。最初オレは意味がわからなくて、それがあるがゆえに超絶歌いにくかった。でも、慣れたらしっくりきた。要するに、それぞれが空っぽになっていたんだと思う。 最後にグレッチを思いっきりフィードバックさせて弾いた。ガラスの向こうで魚ちゃんが立ち上がって「丸」のサインを出した。こういうときはテイクワンでいいのだ。実際聞き返す必要もなかった。 この曲はこのバンドがたどり着いた最新型の表現だと思う。それゆえ、ライヴでは最後に演奏するべきだと思っている。観客はその余韻の中に自らの未来を見つけてくれると思うから。     アルバムの予約はこちらから。1月中旬に発送予定です。  

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Mr.OUTSIDE #005、ディスタンス

12月31日 水曜日 晴れ 1ミリの後悔もなく2025年を終えられることに感謝しています。2025年は全力で走るのだ、と決めて最後にちょっとだけ息切れしたけど、グンと前に進んだ気がしています。いろんな意味で。老成する、とか、ゆっくり過ごす、とか。そういう種類の生き物ではなかったってことを実感しています。 旅路の中で強く感じたことを2025年最後のblogに記しておきます。   人は誰だって、誰かの希望になれる。 望んでなれるものじゃないけど、たしかにそういうことはある。 そのことをもう一度考えてみてくれたら嬉しいです。 誰かが誰かの希望になって、支えあうこと。 それは金や名誉より遥かにたいせつなことだと思うし 互いの人生はより実り豊かなものになると思う。   アルバム4曲目、ディスタンス。 これはコと別離がもたらしてくれたもの。「かけがえがないからこそ 離れていなくては」。この一行を書けただけでも、アルバムを出してよかったと思う。コって果たしてなんだったのか?究明されることもなく、世界はどんどんそのことを忘れて進んでいく。それもまた、たまらなく気持ち悪かったのだけれど、一矢を報いたいと思ったときに、怒りをそのまま表現したくなかったから、とっても難しかった。自分の脳みそを通過している以上、豊かな表現にしたかったし。 もともと書いたときはとてもゆっくりした曲だった。それゆえ、スローバージョンも実は完成している。それをプリテンダーズだな、と言ったのは魚ちゃんで。毎回、彼の感受性にはびっくりするけれど、左手でそのようなベースラインを弾いてくれた。おかげで僕の頭の中にはプリテンダーズがキンクスをカヴァーしているイメージ(実際にそんな曲はある)が湧いてきたので、12弦や、おかんのストラトを使って表現した。ドラムはいい音で録れていたものを敢えてEQで痩せた音に削った。なんでもかんでも太ければいいってものでもない。 僕とあなたの間の絶妙な距離。あなたと世界の間の微妙な距離。誰かと世界の絶望的な距離。エトセトラ。ディスタンスはいつだって難しい。 もう一点だけ。メディアやSNSによって、日本人から「間」がどんどん失われていってると思います。矢継ぎ早に自分の言いたいことを言うのではなく、「間」で語ることもできるんです。句読点、だいじ。個人的にそこに気をつけたいと思っています。   2025年、みんなのサポートにこころから感謝します。ほんとうにありがとう。良いお年を迎えてください。

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善きものたち

12月30日 火曜日 晴れ 見事にぎっくり腰と発熱を併発して、年末のともだちとの行事をすべてキャンセルせざるを得ませんでした。まぁ、身体があなたも老体なんだから、休んでくださいってメッセージだと受け止めることにします。数年前、新年1月2日にコを発症するって正月がありまして、ほんとに年始からひとつき最悪の時間を過ごしたので、2026年はスタートからコケないようにしたいと思います。 ええ、わたくし。元旦から走る気満々です。 正月はスタッフと話しあって、楽しんでもらえる企画も考えたので、お楽しみに。元旦からblogに遊びにきてください。今年は「カモネギシャチョー」のセールをやる余裕もないので。 アルバム音源の試聴環境ですが、もちろんすべての環境に対応できるよう制作しています。家のステレオセットはもちろんのこと、車、ヘッドフォン。ヘッドフォンだと音の分離とパニング、奥行きが楽しめるようになっています。「大雨洪水警報」はヘッドフォンで聞くと魚ちゃんが弾くベースラインがステレオで180度開いています。これはアナログでは針が飛ぶので、ぜったいにできないミックスなんです。もし、アナログ化することがあれば、この曲はモノラルミックスにせざるを得ないので、それもまたCDならではの楽しみ方ってことで。 製作者としてスマホでの試聴はお勧めしません。なぜって、スマホで聴くことを前提に創っていないからです。いまどき、マスタリングはスマホで聴かれることを想定して行われたりするのですが、我々は断固拒否しております。笑。まぁ、もちろん聴けないことはないし、聴く人の自由なんですけど。我々のコンサートをプロモートしている某イベンターの長にアルバムを送ったら、なんと彼は「聴く機械がないのでまだ聴けてないんです。すいません」って。おいおい。プロですら、そうなのかい。。。そりゃ、CDなんか売れるわけないよね。トホホ。   なので、年末企画。 長谷川博一さんとは事あるごとに会って、飲んで、夢を語ってました。彼と僕が「善きもの」だと思っている音楽を紹介しておきます。あえてどれも有名なものばかりだけれど、知らない人もいるだろうしね。大きな海に漕ぎ出すきっかけになればいいな、と。 Bobby Womack – Daylight     World Party – Way Down Now     Robbie Robertson – Shake This Town     Jerry Garcia Band – Waiting for a Miracle   … 続きを読む

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The Sound

12月29日 月曜日 晴れ     アルバム、これからみなさんの手に徐々に届くのですが、残念ながら現時点ではスーパー赤字。それゆえ、次作を創るのはほぼ100%不可能な状況です。年が明けたら、スタッフを含め話し合い、プロモーションの施策を考えますが、いちばん効果があるのは受け取った誰がが誰かに伝えてくれることなんです。なので、この時代、一人で楽しんでくれるのもいいんだけれど、ぐっと来たら、誰かに伝えてくれると嬉しいです。 リリースしたところで、困難な状況なのは最初からわかっていたことなので、メゲたりはしません。よろしくお願いします。アルバムの受付はこちらからです。1月中旬には発送します。 なにか、効果的なプロモーションはないのか、と。何度も書いたけれど、映像は好きじゃないんです。特に自分が出てくるやつは。この時代、強力なシンパシーをもって活動を見守っているJeff Tweedyが新譜のプロモーションで、自車を運転しながらアルバム3枚ぶん口ずさんでるだけってのがありまして。笑。これいいなぁ、と。この3枚組、僕にとって2025年のベストアルバムなんで。ぜひ。この映像以外では、録音したバンドとのライヴ映像が多く露出してるんで、それもアリなのか、と。     ————- 今日は音の話です。The Sound。 ロックンロールは瞬間の芸術。あの瞬間を逃したら、それはもう二度とやってはこない。だから、ダラダラやっちゃダメなんです。このアルバムのために20数曲録音しました(すべて完成しているので、どういう形でか聴いてもらうつもりです)。すべて2.3テイク、曲によってはたった1回しか演奏していません。ファーストテイクにはなにがしかがあるのです。それが「その瞬間」という意味です。 古いNeveのコンソールをたまらなく愛していて。でも、もうそれらもほとんど現存しません。Neve博士の創ったコンロールは音があたたかく、太いんです。僕らのソニー時代、信濃町と六本木にあった、それらのNeveの恩恵をたっぷり受けました。サブスクのおかげでどんどんスタジオは潰れていきます。Neveは解体、あるいは国外流出。アーメン。みんなたつせつなものは亡くしてから気づくのです。 渋谷にあるともだちのスタジオ。博多時代からの古い仲間です。Neveもメンテナンスをしなきゃ動きません。潰れたスタジオからNeveを買い取って、予備のモジュールを持っています。僕らのエンジニア、森岡さんはソニー録音部の出身でNeveを使わせたら日本一。で、我々、彼と話し合って賭けに出ました。通常、ドラムをいちばん大きな部屋に置くのです。ジョン・ボーナムの音をイメージしてください。でも、今回逆転の発想で、ドラムをブースに閉じ込めたのです。これは80年代初頭までのチャーリー・ワッツをイメージしてください。Neveと森岡さんと池畑さんなら、きっと太くなるに違いない、と。 何度も書きますが、我々のスタジオにはクリックさえ(メトロノームのようなもの)ありません。だって、人間が演奏してんだもん。揺れて当然なわけで。60年代の音楽が素晴らしいのはチューナーもクリックもなかったんです。いまどき、クリックを使わないレコーディングもほぼないと思います。それゆえ、すべての曲でテンポは揺れ揺れで、ほとんど走ってます。でも、いいんです。それで。それが人間が演奏する意味だから。 そうやって20数曲を記録したのはわずか5日間。メンバー3人とエンジニアが揃っていたのはその期間だけです。そこから先の95日間はすべて僕がひとりで自分のスタジオで作業しました。演奏するのも、歌うのも、録音するのも、ミックスするのも、僕ただひとり。。。 どうしてそうしたかって?僕が一人で向き合うことがいちばんコストをカットできるからです。 エンジニアって専門職なんです。なんの教育も受けていない僕がやることじゃない。でも、自分の音楽のイメージは誰よりも僕の頭の中にあるわけで。そこに向かってさえいけば、到達できるはずなんです。そして、やるからには誰にも負けたくない。いい音だと言わせたい。それゆえ、阿蘇の山の中に機材を持ち込んで(僕はバイクで帰ったので、運んでくれたのは奥さんです)一人で向き合って完成させたのです。正確には阿蘇ですべてミックスし、持ち帰って細部をやり直すのにひとつきかかりました。 HWの特徴であるベースレス。半分は僕がベースを弾いて、半分は魚ちゃんの同時演奏による左手です。これまたなかなかなことでして、僕ももちろんベースを持っていますが、うちにはもっといいベースがたくさんあるので、許可なく勝手に弾きました。ポール・マッカートニーも細野さんもあとからベースを差し替えてたって聞いていたので、「オレにできないわけないじゃん」って根拠のない自信ってやつです。いろんな人が僕のベース、褒めてくれましたが、我ながらなかなかな演奏をしてると思います。同時に演奏していないので、難しいんです。うまくいかないときは日程を変えて、ベースを変えて、気分を変えて、録りました。 最後にソニーの録音部の最後の生き残りであるマスタリングエンジニアの酒井くんにどうしてもやってほしかったのです。なので、自分でソニーに電話しました。普通、個人相手にはやってくれないと思います。笑。「どちらの山口さんですか?」と聞かれたので「えっと、音楽やっています。山口です」って。笑。 酒井くんががっつり仕事をできるだけのマージンを確保しておきました。7dBはあったかな。ほんとうに素晴らしかった。しかも、1日だけではなく、気に入らなかったらと修正できるようにしてくれました。匠!そうやってさらに細かい修正を施して完成しました。 プレスもね。通常は個人では相手にしてくれない優秀な国内の某工場を某レーベルの社長の手引きで裏から入らせてもらいました。すべてがmade in JAPAN。古いNeveとソニーの録音部の受け継がれた技術、バンドの瞬間、メゲない情熱、阿蘇と湘南と渋谷の空気。すべてが詰まっています。 楽しんでください。

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Mr.OUTSIDE #004、Seize the Day

12月25日 木曜日 曇り 明日、みんなの手にアルバムが届くかと思うと、ほんとうに嬉しいです。2025年は全力で走る、と決めて、本気で全力で走ってきました。最後になって、息切れしたけれど、形にしてオーディエンスに届けるというのが最大の目的だったからして、明日は望む人たち全員にサインをして、実際に手渡して、2025年を締め括りたいと思います。 いわゆるプロモーションの時期なんだけれど、前にも増して正解がないのです。なので、受け取ってぐっと来たら、身近な人に伝えてくれると嬉しいです。昨日、古市コータローくんから、「ストーンズのエモーショナル・レスキューを2025年に聴いてるみたいだ」と最大のお言葉をいただいて、とっても励まされました。人力グルーヴ、ベースレスゆえのボトムの太さ、なによりもアナログ感、パッケージの未来感、受け継がれるもの、エトセトラ。受け取ってくれたら嬉しいです。 HWは一切のクリックとシンセサイザーの使用、コピー&ペースト、リズムとピッチの修正をやっていません。すべて人力によるものです。 昨日、久しぶりに悪友で同級生でもある「ミスターアウトサイド」の書籍編集者とやりとりしました。彼と長谷川さんとはことあるたびに、新宿の安酒場で身体が裏返るくらい飲んでました。食事も摂らずに。笑。じゃあねって、彼らが視界から消えたらぶっ倒れるみたいな、若気の飲み方。 「ミスターアウトサイド」って長谷川さんの発案だと思ってたんです。ところが、違った。編集者の彼がブルース・スプリングスティーンの未発表曲から思いついて提案したのだと。え!そうだったの!と34年後に知る事実。直後に佐野元春さんが同名の曲をリリースされ、僕らのアルバムが明日、みんなに手渡される、と。ちょっと感慨深い。そうだったのかー!!! 「ミスターアウトサイド」は80年代の後半に出版されたビル・フラナガンの「ロックの創造者たち」って名著の日本版みたいな本なんです。「ロックの創造者たち」もとうに絶版だと思うけれど、28人のソングライターにソングライティングについて深堀りしたインタビュー本で、超絶面白いんです。もう中古でしか手に入らないと思うけれど、歌を書く人は「ミスターアウトサイド」と合わせてぜひぜひ読んでください。 僕が「柱」をリリースしたとき、世界は変えられると勘違いしてたんです。でも、びっくりするくらい反響がなく、6000枚しか売れなかった。そんなとき、長谷川さん、ただひとり、その年のベストアルバムに選んでくれました。ミュージックマガジンだったかな。とっても励まされました。ちゃんと受け取ってくれている人がいるんだって。 長谷川さん。ありがとう。ようやく、明日、みんなに届けられるよ。あなたの歌。長かったね。諦めなくてよかった。 書籍編集者と、もう飲みにいくこともないけれど、池袋あたりで美味しい鮨とかどうかな?日本酒ちびっと飲みながら。元気でいてくれよな。俺もまだやりたいことやまほどあるからさ。   ————— 3曲目。Seize the Day。 いつだって、未来を創る唯一の方法は、目の前にある今を全力で生きるだけ。だから、短い、駆け抜ける曲にしたかった。 でも、ずっとメロディーの伏線があるって感じていて、それがなにかわからなかったんだけれど。古いトラッドなのかも、と。昨日、はっと気づいたんです。長谷川さんが亡くなったとき、彼の部屋で流れていたあの曲だって。ちょっと鳥肌が立つような気づきでした。 ————— 明日、お渡しするはずだった植物の件ですが、車両の都合で会場まで運搬できなくなりました。今回のはデカいんです。すいません!また機会をあらためて!

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