日別アーカイブ: 2012年11月5日

人の心が奏でる音楽、福島県相馬市にて

11月5日 月曜日 曇り 濃厚な3日間を相馬で過ごして帰ってきました。言葉にできるかなぁ、難しいかもなぁ。でも伝えたいこと、たくさんあるしなぁ。自分の心にもう一度刻むためにも、時系列で書いてみます。 ————————————————— 初日 – 移動日。 相馬で仲井戸麗市さん(以下、敬意を込めてチャボさん)と演奏するのです。嬉しいです。僕らの活動に賛同してくれて、わざわざこの一本のライヴのために、本気で来てくれるのです。 ところで、今回のライヴの首謀者モリタが僕に断りもなく、自身のblogにこう書きました。「山口洋がグレッチを持ってきて、チャボさんとギターバトルを繰り拡げます、云々」。おいおい、そんな事云ってないっつーの。まだチャボさんと内容について話し合ってもいないのに。でも、モリタにとって、チャボさんの演奏を相馬で聴くこと、あるいは街の人々に聞いてもらうことは夢だったのです。妄想の暴走。 僕とてね、アコースティックギターとグレッチ。両方あれば、と思うけれど、相馬に関することは課外活動なので、何もかも独りでやるしかないのです。機材の運搬、運転、設置、演奏、撤収。 でも、チャボさんと都内でリハーサルをしてみて、モリタの妄想が正しかったことが分かりました。確かにグレッチがあった方が、音楽の神様が降りてくる可能性は上がるかも。うっしゃ、ならば運ぶぞ。おーっ。ツアーケースに入っているアンプだ何だかんだ。できるだけケースから出し、軽量化につとめ、アンプ2台、ギター4本、その他もろもろをクルマに積みました。あー、腰痛ぇ。 意気揚々と相馬に向かったはいいものの、時は金曜日の夕方。都内を抜けるだけで3,4時間、東北道は震災で痛んだ部分を集中工事していて、渋滞の嵐。東北道の黒豹にはほど遠く、到着に要した時間8時間。もう日付が変わる寸前。 それでも街のアニキと慕うSさんやモリタ、チャボさんの前乗りスタッフは待っていてくれて、人格破壊最終兵器、最高級バーボンをドバドバごちそうになって撃沈。 ————————————————— 二日目。チャボさんとライヴ。 冷たい木枯らしが相馬を吹き抜ける日。 プロジェクトの女子チームは働くスタッフのために、心を込めて弁当を作った。野郎どもは設営を終え、チャボさんたちを福島まで迎えに行く。そのクルマはどう観てもピカピカに洗車されて、車内はファブリーズされていた。北は北海道、南は九州から援軍が到着し、それぞれが黙々と働く。僕は人出の足りないPAチームのスピーカーのチューニングを手伝う。できることは何でもやる。それがプロジェクトのモットー。誰ひとり「私利私欲」が頭にある訳でなく、街の未来のために、現実を踏まえて働く。こうやって、愛は連鎖していく。この国のあちこちから持ち込まれた愛を観るにつけ、いろいろあったけれど、メゲずに続けてきて良かったなぁ、と思う。ひとつひとつ写真で紹介できなくて、申し訳ない。 相馬の人が6割、それ以外の場所から足を運んでくれた人たちが4割。会場は満員になった。 チャボさんと演奏するってことは、大きな愛情で包まれてるってところを通り越して、カンガルーの袋の中で自由に遊ばせてもらってるというか、絶対的な愛がある。自分が自分で居られるというか、どんなやんちゃも受け入れてくれるというか。あー、言葉にならん。もどかしい。ほんとうはもらってばかりじゃダメだと思うんだけどね。 選ばれたひとつひとつの曲に、想いがあって、全人格が音楽や言葉やグルーヴににじみ出ていて、音楽は人の心が奏でるってことを今更ながらに教えてもらった。チャボさんの音楽は彼のLIFE、そのものだった。素晴らしすぎて、形容不能。僕が若い頃に書いた曲をアカペラで歌ってくれるというプレゼントまでもらってしまった。これを読んでいるあなたが、何か信じられないことがあるのなら、是非チャボさんのライヴに行ってください。この世はまだ生きるに値する場所だよ。 一番嬉しかったことは。 あの日以来、僕はこの街で何度も演奏してきた。正直に云って、社会と人の心の闇は深すぎて、何度もプロジェクトを投げ出そうと思った。その度に、奇跡的な出会いとか、人の思いやりに支えられて、乗り越えられない試練はないと、思い直して今日までやってきた。 客席には晴れやかに笑い、アラレもなく泣き、(泣きながら笑ってる人がいた。ほんとだよ)音楽に心から呼応するたくさんの心があった。音楽には力があるんだと実感できた。ほんとうに、嬉しかった。 チャボさんと僕は満員の観客からスタンディングオベーションをもらった。チャボさんからは、その返礼の方法まで教えてもらった。まったくもう、何と云っていいのか。 チャボさん。ほんとうにありがとうございました。それぞれの立場で力を尽くしてくれたみなさん、ありがとう。そして、お客さん、あなたです。来てくれて、ありがとう。 生きててよかった。   ———————————————— 三日目。年末のイベントの画策。 12月23日に計画している今年最大のイベント「SMILE TOGETHER」の打ち合わせをお寺にて。厚意により、東北名物「芋煮」つき。素晴らしい。イベントを手伝ってくれる街の人々に趣旨を説明するのが、会の趣旨。オレは会を和ませようと、決死のギャクを繰り出したが、ことごとく滑った。 詳細は追ってお伝えするとして、相馬の子供たちとの祭典。NTT福島の厚意により、ネットで生中継されることになりました。全国からエネルギーを送ってください。観てね。 夜は街のアニキSさんに連れられて、70歳を過ぎた少年と愛に溢れた時間を過ごす。東北には凄い人がまだまだ居るのね。 ————————————————– 四日目。 家に戻る。疲労はあるけど、心は元気。みんな、ありがとう。オレ、ガンバル。 追伸 僕はあれから平均して月に二度くらい相馬に通ってる。でも、一度も身体に感じる地震を体験しなかった。今回、初めて相馬で震度3を経験した。街の人に云わせると、「こんなんぜんぜん平気っすよ」と。でもね、僕が体験してきたどの地震とも違っていた。3.11も僕はアメリカに居たから体験していない。長く、不気味でしつこい。ホテルがミシミシと軋む。「今日のと、3.11はどのくらい違うの?」と聞いたなら、「10倍くらいですね」と。 僕の本能がこう云う。気を抜くなんてとんでもない。同時に、地震、津波、余震、原発事故。彼らがどれだけの恐怖にさらされたのか、ほんの少しだけ分かった。 帰りしな。 福島県内のとあるレストランに行った。「食材はすべて県外のものを使っています」と書いてあった。いたたまれなかった。

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