僕らの音楽、その力。青森県弘前市にて。

3月26日 土曜日 雪

音楽を続けていて、良かった。
「gift」をもらったのは、実のところ演奏している僕らの方だった。
心から、ありがとう。

人は信じるに足りる生き物。それが僕の実感。僕らは前日から弘前入りしていたが、悪いヴァイブレーションはまったくなかった。ほんとだよ。欲も得も、何もなかった。ただ、みんなが音楽の力を信じていただけ。素晴らしかった。全国各地からこの公演をサポートするために友人たちが集まってくれていた。

首謀者サイトー・ヒロシはあらゆる手段を使って、宣伝活動にいそしみ、楽器やPAは弘前じゅうから集められ、弘前学園大学はほとんど無償で会場を提供してくれ、新聞記者たちは記事を書くため集まってくれ、複数のカメラで映像は記録され、音はマルチトラックで録音され、全国の友人たちは誰に云われるでもなく勝手に配置についた。何てビューティフルな眺め。僕らはただ、ステージの上で音楽に集中すればいいだけだった。オープニングで魚先生のエレクトロニクスと共に、詩を朗読してくれたカトウ・ノボルのステージを脇から見ていて、僕はこのコンサートの成功を確信した。

たくさんの取材を受け、僕ら史上初めて、u-streamでライヴは生中継された。遠くはドイツから、石垣島から、たくさんのファンがメッセージを送ってくれた。中継に使われていたカメラはiphoneたったひとつ。素敵な眺めだった。

大切なこと。僕らは「募金してください」と一言も発しなかった。スタッフたちも、オーディエンスにそれを一切強要しなかった。それは暗黙のモラル。「募金」の「募」の字を書けなかった僕が、ひらがなで書いた「ぼきんばこ」が会場の入り口に置かれていただけ。だから、終演後、箱を開けるのが怖かった。コワモテのサイトー・ヒロシはその役目を誰かに押しつけた。ヒロシ。分かるぜ、その気持ち。ところがどっこい。そこにはたくさんのお金が入っていた。びっくりするくらいの。金額は生々しいからここには書かない。人の思いやりは金額じゃ推し量れないから。

話は前後するけれど、リハーサルが終わった頃。福島県相馬市からの電話が鳴った。僕らをずっとサポートしてくれたレコード店、モリタミュージックだ。彼の家は津波で流され、店舗も壊滅的な被害を受けた。震災後、初めて会話ができた。何というタイミング。閃いた。モリタ君は避難生活を送っている。彼が現場をいちばん良く知っているはずだ。彼にすべてのお金を送って、使い道は現場で考えてもらおう。ライヴが終わった頃、彼からメールが来た。もうすぐ相馬に60世帯の仮設住宅が建設される。音楽を聞きたがっている人たちがたくさんいる。でも、その道具がない。だから、そのお金でCDラジカセを買いたい。ラジオも聞けるし。こうやって、オーディエンスからの募金は60台のCDラジカセになって、相馬市で音楽を奏でることになった。コワモテのサイトー・ヒロシも僕も、実のところ、このプロセスにはぐっと来た。みんな、本当にありがとう。たかがラジカセ。されどラジカセ。僕はその60台にほおずりしたい。尊いラジカセだよ。

関わっていた誰もが食事をすることも忘れ、働いていた。しかし、腹減った。函館からパスタの麺や具材、そして美味しいパンが運び込まれた。長崎からはシェフが本職の工藤ちゃん(彼もまたヒロシ)が送り込まれた。工藤ちゃんがシェフ。僕がアシスタント、speechless最終公演先の函館の首謀者、浜野某はパンを焼きまくる。こうやって夜はふけていく。美しい夜。さぁ、帰るか。みんなで弘前の魔界、アサイラムを片付けて、外に出ると、激しく積もった雪が僕らを出迎えてくれた。悪くなかった。本当だってば。

もう一度だけ。

音楽を続けていて、良かった。
「gift」をもらったのは、実のところ演奏している僕らの方だった。
心からありがとう。

僕のギャラはあの木村さんから差し入れられた「奇蹟のリンゴ」。充分すぎる。sprit of 津軽。

僕の宝物は「仲間」だ。あんたら、最高だよ。

羽田はロシアの空港みたいだった。でも全然オッケー。いつもこれで問題ないぜ。

羽田はロシアの空港みたいだった。でも全然オッケー。いつもこれで問題ないぜ。

あの小林さんから「奇蹟のりんご」が一箱差し入れられた。絶品!!!!!!!!!!津軽魂。

あの木村さんから「奇蹟のりんご」が一箱差し入れられた。絶品!!!!!!!!!!津軽魂。

ヒロシ3。左からクドウ・ヒロシ、ヤマグチ・ヒロシ、サイトウ・ヒロシ。

ヒロシ3。左からクドウ・ヒロシ、ヤマグチ・ヒロシ、サイトウ・ヒロシ。

弘前イチのベーシスト、しょういちとおかん。おかんと息子が飲めること自体、アイルランドみたいだね。

弘前イチのベーシスト、しょういちとおかん。おかんと息子が飲めること自体、アイルランドみたいだね。

魔界アサイラムに飾られたサントー・ヒロシの友人、奈良さんの絵にメロメロになる魚氏。

魔界アサイラムに飾られたサントー・ヒロシの友人、奈良さんの絵にメロメロになる魚氏。

奈良さんの絵をヤニだらけにしているのがこの店の凄いところです。

奈良さんの絵をヤニだらけにしているのがこの店の凄いところです。

さぁ、じょっぱるぜ。弘前学園大学礼拝堂にて。

さぁ、じょっぱるぜ。弘前学園大学礼拝堂にて。

魚先生リハーサル中。

魚先生リハーサル中。

弘前学園大学。本当にお世話になりました。

弘前学園大学。本当にお世話になりました。

贈ってくれたのはプロデューサーのきくちさんかな?ありがとう。

贈ってくれたのはプロデューサーのきくちさんかな?ありがとう。

カトウ・ノボル、リハーサル中。

カトウ・ノボル、リハーサル中。

ひらがなですいません。でも、本当にたくさんの気持ちをありがとう。

ひらがなですいません。でも、本当にたくさんの気持ちをありがとう。

心あるメディアの人たち、ありがとう。共同通信、北海道新聞、取材中。

心あるメディアの人たち、ありがとう。共同通信、北海道新聞、取材中。

津軽の怪人、カトウ・ノボル。あんたの才能は離さないぜ。

津軽の怪人、カトウ・ノボル。あんたの才能は離さないぜ。

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僕らの音楽、その力。青森県弘前市にて。 への13件のコメント

  1. たまみず より:

     PCの前で拝聴させていただきました。本当にありがとうございました。

  2. 15:00過ぎからサイトを開け、最小化して仕事…リハの一部始終を垣間観て、ライヴは閉店後の事務所にて。
    電気消して、じっくり楽しませて頂きました。

    素晴らしい時間をありがとうございます。心から。

  3. mana より:

    覗き見している気分のリハ風景から、ライヴの最後まで、しっかり拝見させていただきました。
    暗くした部屋に音のひとつひとつがキラキラとやってきました。
    素敵な時間をありがとうございました。

  4. toshie より:

    毎日、震災というビカビカ光る鏡に写る自分を見るのもだんだんとキツくなってきた今、ストリーミング配信を見ることができました。大好きな音楽とこういう風に流れる時間。私は、幸せを感じました。有難うございました。

  5. ながわ より:

    初めて書き込みます。ヒートウェイヴは10年来聴いております。

    昨日のライブは素晴らしかったとのこと、ボクは残念ながら
    昨夜は渋谷にソウルフラワーユニオン&カーネーションのライブを
    見に行って山口さんのライブ中継は拝見できませんでした。

    ただ山口さんのライブの状況を友人がツィッターで都度書いていて
    丸でライブを目の前で視てるかの様に楽しく読みました。
    で、ここからが本題。そのタイムラインを読んで気付いたんですが
    山口さんが「満月の夕」を演奏した時間とソウルフラワーが
    この曲を演奏した時間がほぼ同じ時間帯でした。

    単なる偶然でしょうが。偶然とはいえ、なんとステキなシンクロ。
    このエピソードお知らせしたくて初めて書き込みました。
    今後も魂が溢れる歌を期待しております。
    当方も魂込めて聴きたいと思います。またライブ行きます。

  6. こゆき より:

    一日遅れで弘前のライブ体感できました。

    昨夜は私も渋谷に行ってました。
    それぞれの満月の夕。
    心に響いています。

    ラジカセから流れる音楽が光になりますように。

  7. つくし より:

    ↑満月の夕♫シンクロ万歳!!
    北国の礼拝堂にて温かな宇宙空間☆
    尽力された方々の愛が集結した素敵なひと時でした。
    きっと多くの魂たちにも届いてますね。。。

    夜勤をしながら拝聴させていただきました♫
    iPhone様様です(=^ェ^=)

  8. kazu より:

    遅ればせながら、本日speechless 届きました。
    洋&魚ワールドにどっぷりつかっています。

    ん~~~。

    今プレシャス・・・。

    心にしみわたる・・・。

  9. けいこ より:

    弘前のライブ、観せていただきました。

    佐賀とも長崎ともまったくちがう空気に驚き、そしてお二人の音に歌にガンガン胸を叩かれているようでした。

    観終わった後いろんな想いが溢れましたが、『ありがとう』としか言葉にできませんでした。

    山口さん、魚さん、素晴らしいライブをありがとうございます。

  10. 烏ねこ より:

    弘前のライブ、一日遅れで見させていただきました。

    阪神大震災後に初めてライブで見た満月の夕べ
    そして、今回の満月の夕べ

    心が痛くて、涙が出てきます。
    でも、涙は心を軽くしてくれます。
    もう少し繰り返しみていたかったです。

    魂をありがとう。被災地の皆様に光が届きますように。

  11. まきこ より:

    PCから流れる画質も音質も決して良くはなかったけれど、音楽はそういうものが一番大事じゃないということがよ~くわかりました。
    しっかり伝わってきました。
    そして今日またこのブログを読んで涙、です。
    いつも素敵な音楽を、時間をありがとうございます。
    お体ご自愛くださいね。

  12. きょーこ より:

    もうすぐ1週間が経とうとしてますが、佐野ファンでもある自分には、
    あの日[君をつれて行く]が[満月の夕]と一緒に奏でられたのは
    とても印象的な出来事でした。
    自分のブログに感想を書いたらすごく長くなってしまいましたが、
    もし良かったら興味のある方に読んで貰えたら嬉しいです。
    なかなか体験できない、本当に良いLIVEでした。
    山口さん、魚さん。
    あらためて、ありがとうございました。

  13. ピンバック: 3.11と音楽 | 【es】エンタメステーション

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