Overture

10月26日 火曜日 晴れ 

 一年かけて録音したものを聴いてみた。

 とっても好きだったけど、ピンとこないものもあった。だから、バッサバッサと捨ててスリムにした。3分の2は捨てた。なんで録音をストップしようかと思ったって、コに振り回された日々がようやくなにかひとつの「希望のかたちとして」結実したと思ったから。長かったと云えば、長かった。ほんとにコロナのバカ野郎。

 それをシンプルに演奏してOvertureにした。明日、朝、散歩して聴いてみて、これでぐっときたら、ほんとうに終わり。

 どうしてバンドやらないんですかって、具体的にできなかったから。ようやく、これでバンドに向かえるかな。コさえ、落ち着いてくれたなら。オレ、バンドマンだから。

 ところで。

 楽器を演奏する人に伝えておきたいことがあって。あなたがプロであれ、趣味で楽器を弾いてる人であれ。

 音符の長さを気にしたことある?どうやってノリを出すかって、いかに音符を詰め込むかじゃなくて、いかに音符を間引いて、その音符の長さによってノリを出すかってことなのです。弾きまくってるもののほとんどは自己顕示欲。それを否定はしないけど、エヴァーグリーンにはならない。

 いかに弾くか、じゃなくて、いかに弾かないかってことを意識してほしいと切に思うのです。youtubeになんでもあると思ったら大間違いで、教則ものなんて、弾きまくってるだけで、あれを真似してたら、結構上手いと呼ばれるけどなーんの個性もない楽器奏者が量産されるだけ。

 いま、あなたがつま弾いた、その音符の長さを意識してみてください。音は減衰していくから。それはとっても儚いのです。部屋にたとえ誰もいなかったとしても、誰かを想って弾いてみてください。そしたら自ずと音符の長さが気になるようになると思うよ。ほんとだよ。

 なにもかもが手に入るってことは、なにもないことに等しい。

 なにもないところにはすべてがあるのです。

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Overture への11件のコメント

  1. 中村文弥 より:

    「音は減衰していく」というフレーズが心に沁みます。演奏された音は、記録装置で保管しない限り、そのとき限りのものであり、そしてそれは世界に拡散して消滅していきます。ライブ会場で、あるいは時々関わる合唱で、演奏が、音が、唄が、声が次第に消えていくとき。至福なのか寂光なのか、分らない一瞬があります。音楽、音、声。これらは物ではない、物質ではない、ということを、再認識させられます。しかし、心の中、意識の中には、何かを残存させてくれます。そして、それを想い返すことも出来ます。音楽を演奏する、聞くということは、やはりプレシャスなことなのだと気づかされます。

  2. 中村文弥 より:

    追伸です。作品、楽しみにしております。大切なことを書き忘れました。

  3. 甲斐 より:

    〉いかに音符を詰め込むかじゃなくて、以下に音符を間引いて、その音符の長さによってノリを出すかってことなのです

    料理の世界にも通じる事だと思います。

    映えるが悪いとは思わないけれど足し算の料理には「本質」が見えなくなり、引き算の(素材をストレートに味わう)料理には感謝の念を感じます。

    寒くなり出しましたから、お風邪など召しませぬように。

  4. かつらぎ より:

    美しい文章で、こころにしみました。

  5. Masako より:

    音符の長さ?演奏するのは、聴くよりも、何十倍も大変ですね。表裏の拍があることを教えて頂き、裏拍を叩いた時、「おー!」と感激しました。(笑)先日ブレイクを覚えました。音が無い部分を作る。リズムが安定すると、快適に聴こえます。4分音符、8分音符。聴いている分には、気にしたこともなかったけれど、演奏するには、とっても重要ですね。ギターを弾くときに足でリズムをとることも大切だということ。音符の長さが分かるのはずっと先だと思いますが、意識してみます。

  6. カジ より:

    今日のダイアリーの後半の部分を、モーターサイクルダイアリーに書き写しておきたいと思います。ありがとうございます。(生活していて出会った素敵な言葉や、大切に残したいと思った言葉を、都度、モーターサイクルダイアリーに書いています。たのしいです。)可能であれば、2022年版として再販希望します。

  7. YUJI より:

    萩原健一さん、ショーケンが大好きです。そのショーケンが特別番組で「井上尭之さんのあまり弾かないギターが最高なんだよ。」って言ってことが、今更ながら頭にストーンと理解出来ました。ありがとうございます。

  8. 放射線1号 より:

    精進します。

  9. fken より:

    openのギターソロ、大好きです。

  10. to the moon より:

    土曜日の素晴らしいフリーコンサート。私は仕事でほんの少ししか参加できなかったのですが、『遠い声』での洋さん、コータローさん、おおはたさん三人でギターを鳴らしている時、無意識が美しくて、まぼろしさえ見えました(おもちゃで遊んでいる子供の頃の洋さんまで!)。全部を体感したかったです。素晴らしいライヴを有難うございました。

    最近、『魂のこよみ』を毎日朗読していて、「予感と憧れに誘われながら みずからの深みへおりていく」という箇所を読んだ時、すぐ洋さんを想い浮かべました。
    新しいアルバムで一瞬で部屋の空気が変わる日を楽しみにしています♡

  11. ミホ より:

    弾かない音があるから、美しい音楽となるのですね。
    山口さんのギターも文章も大好きです。

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