Recording day #003、Cat Power Sings Dylan

3月22日 土曜日 晴れ

3日目。

いろんな機材が各地から届く。調整して設置。

90年代の終わり頃。自宅にスタジオを造った。すべてアナログだったので、コンプだけで20ch分あった。卓、レコーダー、アウトボード、エトセトラ。それぞれの放熱が凄まじく、真冬でもクーラーが追いつかなかった。レコーディング中は仕事場が狭くなるけど、それはしゃーない。大志だけは忘れずに。どんな時代であれ。

やるぞ、オレ。

録音されたすべてのバージョンを聞き終えた。どのテイクを採用し、どう組み合わせてアルバムを完成させるかはすべてオレの才能にかかっている。笑。すべてのテイクの特徴を書き留めたところに1073が北海道から届いた。いい音するといいな。これもまた賭けなんだけれど。

 

「Cat Power Sings Dylan」。いいアルバムだった。1966年、あのロイヤルアルバートホールでの伝説のディランのライヴをCat Powerが曲順通りに再現した「大丈夫ですか?」みたいなアルバム。

来日するのは知っていたけど、その会場が好きじゃなかった。一度行って、とってもヒドい音だったし、この手の音楽をスタンディングで聞かされたら拷問そのもの。なので、チケットを取っていなかった。そんなところに、音楽界の重鎮から「お祝いで差し上げます(なんのお祝いかっつーツッコミはなしで)」って。え!まじすか。

なわけで、男2匹で参戦と相なりました。

やっぱりライヴは素晴らしい。音源を聞く限り、弾き語り部分はキャットパワーが一人でやってるものだと。

違いました。ギタリストとホルダー付きのハープの人(本業は鍵盤奏者)と彼女の3人の合わせ技。まるでディランの二人羽織じゃなかった三人羽織。

音が小さいこと、照明がありえないくらい暗いこと、特殊効果が一切ないこと、演奏はかっちり決まっているけれど、進行はなぜかスタッフも含めてスポンテニアスであること。それらが謎のオルタナ感を十分に醸し出している。60年前ってこのくらい暗かったんだろうなぁ、と。それゆえ、一歩間違えると寝落ちの危険の中で、集中する素晴らしさってものがあるのです。

演出と演出でないところの境目がとっても素晴らしい。たいていわたすは演出過多のステージを見て、気持ちが引いていくタイプなので。

まぁ、とにかく楽曲の良さが際立つのです。60年前って、ぜんぜん古くないし。ツアーを重ねてキャットパワーのディラン化(なにを歌っているのかよくわからない状態)も進んでるから、ギリギリのところなんだけどね。ディランって、人間としてまったくリスペクトしていないけれど、ほんとうに楽曲は素晴らしいとあらためて。

とうぜん最後は「Like a Rolling Stone」で大団円を迎えるわけだけど、デジャブ?ん?今、オレはいったいどこにいるんだろう?66年?みたいな不思議な感覚があったなぁ。

キャットパワー。とっても才能と魅力に溢れた人です。バンドもね。とっても良かった。ダイナミクス、ちゃんと理解してるし。ほぼイントロしか聞こえないキュートなギタリスト。彼女はツインリバーブでメインのギタリストがプリンストン。笑。←この違和感、ギターを弾く人ならわかる。

帰りしな、バイクに乗って到達した境地は。「どう生きようと自由だ」ってこと。とっても励まされたよ。Kさん、誘ってくれてありがとう。

ライヴってやっぱり素晴らしい。

ただね。iPhoneで撮影するアホの多さに辟易とはする。あんたの行為で後ろの人間、気が散ってることがわからんのか。いい大人がいったい何してんだか。ハリセンでシバいてやろうかと思ったが、Kさんが隣にいらっしゃったので我慢した。個人で愉しむなら、まだなんとか許せるけど、んなもんSNSにアップする奴の気がしれん。

網膜とこころに刻めよ。頼むよ。

それがミュージシャンにとって、宣伝につながるのだとしても、オレは嫌だね。そういう観客を見つけた瞬間に集中力が切れる。見えてないと思ってるでしょ?オレみたいに目が悪くても、全神経集中してるから、見えてます。その瞬間に気持ちが音楽から一瞬でも離れるとしたら、結局お客さんが損してることもあるってことだよ。

あれだけの客がいて、ライヴ中に電話もメールのアラートも鳴らない。ってことは、そういうマナーはあるってことじゃん?だったら、あなたのそれと同じくらいの節度、持ってくんないかなぁ、、。

先日すみだの素晴らしいホールで見た、ジュリアン・ラージ、ブルーノートで見た、スティーヴ・ガッド。誰一人そんな輩がいなくてほんとうに音楽に没入できた。ライヴ後に楽器を撮影したりするのはいいと思うんだよ。

てか、こんなことを書かなきゃいけなくなる民度の低さが悲しい。

とはいえ、素晴らしいので紹介しておきます。気に入ったら、「買ってね!」。

 

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Recording day #003、Cat Power Sings Dylan への5件のコメント

  1. つかさ より:

    HEATWAVEに出会ったのは17歳
    今は47歳
    たまにここに来てタイトルが更新されてるのを見て、山口さんまだ生きてる、と思うだけになった。
    バイブルのように何度も読んでいた二十歳の頃の気力はもうなくて、疲れた。
    音楽も何も響かない腐った心で窓もないゴミ溜めの中で息をしてます。
    1人。

    どんどん好きなミュージシャンも死んでいく。
    誰かが死んだ時、その頃朝まで語り合った仲間は一瞬でも思い出してくれたりしたかなぁと思ったり、そんな価値ないのに。
    誰もいなくなって、大事な記憶も全てが無意味に感じて何が何だかわからない。

    パワステに通った日々、人生最良に楽しかった。
    まだまだ死なないでくれ、生きてくれ。
    あなたがいなくなるともっと寂しくなるから。

  2. kazz1967 より:

    Cat Power Sings Dylan 久しぶりに聴きました。ディランの曲なんだけど、Cat Powerの唄になっている。ロイヤルアルバートホールのコンサートを丸々カバーするなんて、誰も思いつかないし、CD聴いて凄いことだとあらためて思いました。じっくりゆっくりと聴くべし。

  3. alechil より:

    三人羽織という表現、同感です笑。なんだ1人じゃないのか、反則だ、などと少し興醒め感もありながら観ていましたが、なんのなんの。tell me, momma 以降は圧倒されました。会場の音がシャリシヤリキンキンしていたのはさておき、いい演奏を見せてもらいました。

  4. ozk より:

    ライブに行かれていたのですね・・・私もたった一夜のライブを見に行きました。
    素晴らしいライブで良い余韻が残っています。

  5. しの より:

    つかささん
    通りすがりで失礼いたします。
    私もパワステ通っていた1人です。
    ご事情いろいろあると思いますが、どうしてもお伝えしたくなり、まことに勝手ながら書かせていただきます。
    ライブ、行きませんか?あの頃のようにグレッチを浴びていると、あの頃とはまた違う、新しい1日が始まるかも…と思います。
    通りすがりから、失礼いたしました。

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