老婆心

7月17日 火曜日 晴れ

あるミュージシャンから、近くの町で演奏するから観に来てほしい、と。

あまり、こういうの、気が進まないのだけれど、奴もなにか思うことあって、俺に声をかけたんだろうと。でかけてみる。

はっきり言って、自分が演奏してる方が遥かに楽。そもそも音楽家に先輩も後輩もないわけで。演奏中、奴になんて伝えたらいいかなぁ、とか。不純きわまりないよね。音楽なんて楽しめばいいだけのことなのに。

ようやく見つけた言葉。「お前には伸びしろしかないよ」。照れ隠しで、奴の機材を片付けたりして。

まぁ、それから飲み屋に連れていって、うちに泊めて、飯作って、一緒に演奏して、できることはやってみたさ。それって、奴のためというよりは自分のためだったりもするわけで。

30代のはじめ。ぐわんぐわんに迷っていた子羊みたいなオレに「かの」ミュージシャン(外国人)がこう云ったのだ。

「いいか、ヒロシ。お前が今、俺に問いかけているように、数年もすればお前の前に若いミュージシャンがやってきて、お前と同じように問いかけるだろう。でもな。どんなに忙しくても、面倒でも、そこから逃げるな。誰かに何かを伝えることは、お前が教えているのではなく、学んでいるのだから」。

ずっとその教えを守ってきた。ほんとうに、それは間違っていないのだ。今日もそれを果たした。いちばん嬉しいのは10年くらいして電話がかかってきて「あの時、言われてたこと、やっとわかりました。ありがとうございます!」って。こういうこと、よくある。

で、もって。俺が偉そうに伝えてること。まんま俺が誰かに言われた言葉だったりするんだよね。笑っちゃうよ。でもね、それは咀嚼して、俺の言葉になったんだよ。こうしてスピリットは受け継がれる。老婆心。でも付き合い方を間違えなければ、悪くはないかも。

何も言わずに「良かったよー」なんて言ってる方が楽なんだけど、たぶん、それは一生できないね。アーメン。

さ、俺はレモン・チキンを作るんだ。

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老婆心 への3件のコメント

  1. かつらぎ より:

    こういう、おはなし、幸せになる。10年後に、届く言葉、つたえていきたいなぁ。

  2. Masako より:

    師の教え、あやかりたい。憧れであれば尚更、嬉しい。10年後、20年後、同じ立場に。話さなくても、きっと伝わってると思う。

  3. rie より:

    「マチネの終わりに」読み終わって
    心が柔らかくなった気がする小説

    「野生の呼び声」は
    心にいろんなものが渦巻いて、読み終わったあと、日が経つにつれ、少しずつまとまってスッと一本になっていく。心に強いものが残った小説でした。

    私は、感覚でしかなく、的確な、しっかりした言葉は書けないみたいです。
    ちょっと情けなくなりました…

    今日も休みなので、思い出したワイヤープランツの剪定を。
    すでに汗だくになりそうな日差しです。

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