Recording day#054

8月30日 土曜日 晴れ

完膚なき作品を完成させることに疑問を感じるようになりました。

これって魚さんの影響も大きくて、こう見えてオレは完璧なものを創ろうとするタイプなのです。そこに歯止めをかけてくれるのが彼の存在。いい意味でね。

このトリオはもともとベースが不在。資金が乏しいこともあるけれど、その「レス」な部分に可能性を見出すことによって、みんなに希望を感じてほしかったりする。ってことは必要以上に僕がベースを加えたりすると、得るものもあるけれど、失うものも多い。途端に安定感は増すけれど、バンド感が失われる。

それゆえ、不安定ゆえの安定という甚だ難しい落としどころにチャレンジしておるわけです。その塩梅が難しい。いちばんの悩みどころかな。昨日取り組んでいた曲もベースを入れないことによって、風通しが良くなった気がしています。定食でいう「おしんこ」みたいな。そんな曲だって必要。

ところで

アムステルダムにあるゴッホ美術館が存続の危機を迎えているそうです。主に経営的な意味において。

ゴッホには多大な影響を受けてきました。それゆえ、大部分の彼の作品を見ることができるゴッホ美術館にはどうしても行ってみたかった。30代の頃だったか、ようやくそれが叶いました。アムスはね、とってもいい街です。アートに優しい。

年代順に並んだ作品群を見ていて、ある一年間のパートで足が動かなくなった。なんだか訳がわからないまま、こころの一番深いところが揺り動かされて涙が止まらなくなった。こんな経験は初めてです。ゴッホの筆致が平面を超えて自分のこころと身体をぐわんぐわんに揺り動かすのです。

生涯苦しみの中にいたゴッホがいちばん苦しんでいた時期に描かれたものでした。

いったいどれだけの苦悩の中にいたのか、、、。それを作品に昇華させる彼の気持ちはいかほどのものだったのか、、、、。どれだけ描いてもまったく評価されないことへの絶望、、、。

あの絵を見て、こころが動かされない意味が僕には理解できなかったのです。

かようにアートは誰かを救うことがあります。あのとき、僕もまた評価されていなかったけれど、そんなことはどうでもいいのだ、と強く励まされました。それでも自分の道を行くかどうか、だけなのです。他人の評価なんて、どうでもいいのです。いつだって無責任極まりないのだから。

逆に言えば、そのときにたったひとりだけ激賞してくれた人、長谷川博一さんのような人、は永遠に忘れません。

前にも書いたけれど、佐野元春さんにプロデュースの本質はなんですか?と。「励ますことだよ!」。そして「境は超えていくのではなく、ぼかしていくんだよ」。

それらの忘れ難い言葉たち、ゴッホの筆致。僕のポーラースターなのです。

永遠に北の空の真ん中あたりで輝いている。

願わくば、自分のそんな人間でありたいと思っています。

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Recording day#054 への6件のコメント

  1. 今城真人 より:

    麦秋や最晩年のゴッホの絵
    洋さん、ゴッホの話、ありがとうございます!

  2. ハートロッカー より:

    前に記したけど‥‥ゴッホ展に行って来た。人多くてビックリした。

    めっちゃくちゃ作風があっちゃこっちゃしてるの
    凡人の僕でさえ彼の苦悩。どうすれば受け入れて貰えるのか?自分の描きたい物は何故ダメなのか?

    アーティスト、表現者ならそりゃもう俺より悩んでるのすげぇわって思うんだろうね。
    根拠無き自信って大事すな。山口はんの言う通り周りは無責任ばっかり!
    そんな彼を信じたテオやその嫁さんのサポートも無ければ‥‥
    アーティストの羨ましいところは本人亡き後でも作品は生き続けるってところだよね。
     
    話は変わりますが山口さんにベース理論を聞きたいんだけど‥‥
    今のヒートウェイヴを聴いててベース無くても困らないって思ってるんだけど。
    それでも特にガールフレンドに関しては渡辺地獄のベースに何度酔いしれた事か?本人にも何度も伝えた。
    ストーンローゼズのマニのベースにどんなに心ワクワクさせられたことか!
    絶対必要では無いけどやっぱり深みと厚みがますのは間違いないから

    今のヒートウェイヴはベースの変わりの音の様なのを混ぜてるから一体感が増してるからマジで遜色無いから凄いわ。

  3. 佐渡の渋谷陽一 より:

    ・Radikoで「J-POP LEGEND CAFE」を聴かせて頂きました、後の回で3枚目まで四畳半の世界に拘ったという述懐が特に印象に残りました、デビューした頃の魂の焦燥が伝わりました。還暦過ぎても老成せず怒っている、一生懸命抑えておられますがどうしても怒りが滲み出ているインタビューだと思いました、大丈夫だろうかと大きなお世話ですがちょっと心配してしまいました。
    ・そのあとに「FAB NIGHT」を聴かせて頂きました、中村さんが話し相手だからですよねリラックスして楽しそうでおられて、なんだかホッとして心配は無用と思いました。

    元気をいただきました、出演ありがとうございました。

  4. 万友美 より:

    山口さんは8/21に…私にポーラースターを気づかせてくださった方。山口さん本人が(私にとっての)ポーラースターなのかもしれません。

  5. cotton men より:

    昨年、オランダに留学していた弟に会いに家族でアムステルダムに行き、子供たちと一緒にゴッホ美術館に行きました。燃油代が高い中、行くのを迷っていた時に、このブログでゴッホの絵を見るためなら、貯金はたいても行った方がいいと書いていた言葉も後押しになりました。有名な作品はもちろん、牧師時代の絵や、晩年、精神科入院時代のスケッチなどに心打たれたのを覚えています。ヒートウェーブの歌に励まされています、励ますこと、他者と生きる上での本質だと感じます。

  6. 西川達之 より:

    またも、超いいねを押しそうになりました、、。
    もちろん、そんなものはありませんが、、。
    ぼくが山口さんと佐野元春さんにプロデュースを依頼したときはびっくりしました。
    佐野元春さんの音楽の虜になったのは、彼のデビューアルバムから。ハートウェイブの音楽の虜になったのは、バンドがデビューする前。きっかけは先輩のバンドが宇都宮でヒートウェイブと対バンして衝撃を受けて、インディーズでリリースされたCDをメンバー全員が買って、ぼくの分も買ってくれました。
    もちろん、ぼくも「うぉー、めっちゃいい!」「ライブみたい」な思いでした。そして、すぐ、ヒートウェイブはぼくのバイト先の名古屋ハートランドでライブを観ました。
    なんだか得体の知れないものを観てしまいました。
    もちろん、褒め言葉です。だって、山口さんステージに出てくると、タバコを吸い始めたんだもの。そして、アンコールはおそらく、山口さん自身が思いついた逆。だって、コードが変わる時にGとかDとか言ってましたから。
    えっと、何が言いたかったことはまるで、接点のないミュージシャン同士が接点を持ったことが、とても嬉しかったです。
    そして、ぼくの好きなミュージシャンは山口さんと交流しました。
    チャボさん、藤井一彦さんなどなど。
    それと、今池得三でぼくが山口さんのソロライブを観て、そのあと、ぼんやりと飲んでいたら、山口さんとギター関連の仕事ををしているかたと話しをしているのを盗み聞きしました。
    いや、聞こえてきました。山口さんが楽屋に引き揚げたら、速攻にその方がヴィンセントというブランドでアコースティックギターを売っていると。そのかたは小川さんという人で隣の県に会社を構えていると。すぐさま、美濃加茂市に行ってギターを作ってもらいました。すごくとりとめのないことを書き散らかしてしまいました。ほんとうは、これらの「縁」を書きたかったのです。ほんとうにありがとうございます。

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