2月22日 金曜日 晴れ
また、あの「ものすごい男」に会ってしまった。今日は会っただけではなく、コミュニケートしてしまった。
知ってる人も多いだろうが、僕は海辺の道をほぼ毎日走っている。休むのは雨の日だけ。距離は12キロから21キロの間。目的は健康のためではなく、マラソンに出るためでもない。日課で、それが好きだから。
そのコースに現れるのは善人だけではない。スポーツマンでもロクでもない奴は居る。思い返すのもムカつくから詳細は書かない。で、その極めつけがこの「ものすごい男」だ。
年の頃は僕くらい、身長180センチ、75キロくらい、英語圏の外国人で、かなりへたくそな日本語を操り、常に自転車に乗る。問題は甚しい人種差別主義者で、容赦ない言葉を僕に浴びせてくることにある。ある意味、旬な人物。そんなに日本人が嫌いならば、自国に帰ればいいだけのことだと思うが、おそらく帰れない何がしかのの理由があり、それが日本人嫌いに拍車をかけている。推測だけどね。
この男とすれ違ったのは3度目。これまでは起きたことがあまりに信じ難く、あるいはこちらは走ることに夢中で、決定的な怒りまではたどりつかなかったのだが、本日、僕が聞き取れる間に、奴が浴びせた罵声の詳細は以下の通りである。
「このオカマの日本人が」→ 複数回。しつこい。
「オカマの日本人は早く死ね」
「日本人は気持ち悪いんだよ」
「梅干しみたいな口して走るなよ、日本人」
今となっては笑ってしまうが、決定的に奴にキレたのは最後の言葉である。理由は不明。とにかく許し難かった。その言い方にひどい憎しみがこもっていたのもある。僕はつい最近まで英語圏に滞在していたこともあって、まずは流暢に四文字言葉をお見舞いした。僕も立ち止まったし、奴も踵を返した。さーてと、インターナショナルに一触即発。おまえ、身体が細くて小さいからってナメない方が身のためだと思うよ。30代なら、かなりの部分で嬉々として闘うところである。でも、僕は37歳のとある日を最後に人を殴ることを止めたのだ。暴力に意味はない。でも、オカマの日本人の目はマジでキレてたとは思う。威圧なら、それで充分だ。
奴の目は薬物などにイカれた者の目ではなかった。ただし、発言はイカれ続けた。基本的に云ってることは前述の内容の延長。議論にも会話にもならず。だいたいからして、奴は日本語、僕は英語。もう書きたくもないが、奴は例の捨て台詞を吐き続けながら、呪いの言葉とともに去っていった。こういう時のために奴は自転車に乗る。卑怯極まりない。この男と闘う価値なんてどこにもなかった。僕の心に残されたのは哀しみと憐れみとかすかな吐き気だった。
この男がどうしてこうなってしまったのか、知りたいような、知りたくないような。でも、まだ憎悪が表に出てくるだけマシな気もする。まったく、生きてるってことはよ。
あの、不謹慎かもですが、かなり笑わせていただいてしまいました…。
むきー!「梅干しナメんなよ。梅干しは美味しい、そして殿下だ!」と言い返してやりたい。
でも他者に浴びせる言葉って、本当は自分に対して言ってるんだよね。無意識に。その人辛いんだろうなあ…