レコーディング航海日誌#040~042

9月2日 火曜日 秋晴れ

ようやく、ようやく。1曲完成した。長かった。そして今までに作業したものがチェックのためにメンバーやスタッフに出荷された。おそらく、ここからもういくつか山を超えなければならないだろう。

何のために音楽を創るのか。

確かに、表現していないと頭がどうにかなりそうな世界に生きてはいる。それができなきゃわたしはクズだ。そして、経験がこころの中で渦巻いて、架空の風景を描く。もはや、動機はエゴイスティックなものではほとんど、ない。この風景が誰かの、何かの役に立たないだろうか、と、夢想するのだ。わたしが生きている理由はそれだけ。

ずっと、生きづらかった。これまでもこれからも居場所はないと思う。やればやるほど、孤独にしかならない。わたしと同じように感じている人のための音楽を創りたい。それでもこの世は生きるに値することを証明したい。

ある人に云われた「force」という言葉が刺さったままだ。その人にまったく悪気がないことを知っているから恨んだりはしない。ただ、わたしは「force」と云うある意味での強さを身につけなければ、ここまで生きてくることができなかった。で、「force」を否定されることは、「死ね」ということに等しい。降伏しかできなかったわたしはここに音楽を創る動機が生まれる。「イノセントと云う残酷」という言葉が生まれてくる。わたしは音楽を創らなければ、生まれてきたことを呪うことしかできなくなる。それは嫌なのだ。どうしても。

そんな曲が完成した。もういい。わたしは乗り越えた。音楽を創ることで。だから、誰かの役に立って欲しいと切に思う。

——————————————-

弘前のバンド、CREEPSの新譜が届いた。わたしは彼らのファンだ。あの美しく厳しい街でなければ、この音楽は生まれなかっただろう。そして、彼らの音楽はいつも、ひどく、情けない。その情けなさはリアリティーを伴って、わたしにポジティヴな風景を見せてくれる。今から走ってくるけど、決してそのBGMにはならないところも素晴らしい。

2014年、りんごがたわわに実り、夏は祭りに燃え、冬はしんしんと雪に閉ざされる。そんな街の音楽。

2014年、りんごがたわわに実り、夏は祭りに燃え、冬はしんしんと雪に閉ざされる。そんな街の音楽。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

レコーディング航海日誌#040~042 への3件のコメント

  1. Froggy II より:

    果てしなく自由で、果てしなく孤独。居場所をもたず、形がない。
    それは光や風や水のような生き方だと思う。美しいけれど、厳しい。
    すべてに潅がれる大らかさが唯一の救いかな。独りじゃないってことが。
    美しさと厳しさの拮抗に漂いながら生きるのはたいへんだったり、ややこしいけど、わるくないと感じます。わたしがそんなポジな気持ちで飛べるのは山口さんのおかげ。ありがとう。心から。アルバムへの航海、いい波をつかまえてくださいね。

  2. 隼斗 より:

    いきづらいというか馴染めない世界に居心地を生んでくれたのが
    ルー・リードでありチャーリー・ヘイデンであり
    愛おしさを感じさせてくれたのが清志郎でした。

    秋の桜坂劇場楽しみにしています。

    アルバム待ちに待ってます。

    とあるドラマーの人が「音楽って魂のすりへらし作業ですよね」
    と言っていました。

  3. きょーこ より:

    数日前の日記ですけど読んで嬉しくそして安堵しました。良かったな。ソロアルバムとバンドの音がどんなふうに違う着地点に到達したのか、楽しみに待っています。何か区切りがついたんだな、と、『わたし』という一人称に勝手に感じ入りました。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>