失われる一日

2月15日 金曜日 雨

飛行機を3回トランジットして、日本に居ます。何だか「帰った」と云う気持ちになれないのはどうしてなのか分かりません。ほんとうに日本に住まなければならないのか? そう決めつけてるのは自分なんじゃないの?とか。世界市民で居たいだけなんだけど、オレはどうしたらいいんだろう?

くだらないことだけれど。参考になれば。

僕はこのひとつき。携帯とテレビのない生活を送りました。「世界ケータイ」とか云うけれど、ありゃ嘘です。確かに繋がるけど。2年前、3.11以降、まぁ仕方ないんだけど、アメリカから日本に何度も電話したのです。その電話代はですね、ここには書けません。だから、今回飛行機モードにして使わなかった。

あくまでも、僕の実感だけど。「まったく」必要ないです。必要だと思ってるのなら、そりゃ強迫観念です。だって、ほんとうに必要ないんだもん。テレビに至っては、携帯以上に必要ないです。あれがないと、歌を書くとき、自分の脳味噌にアクセスするのがとても楽。テレビはサッカーが観れれば、それでいい。以上。

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朝5時にお世話になった家を出る。オーナーの置き手紙が嬉しかった。

ぐっと来ました。

ぐっと来ました。

某山中を飛びたつ。

某山中を飛びたつ。

山、ありがとう。

山、ありがとう。

一日に3回飛行機に乗るってのはかなりの苦行。二つ目の空港デンバーで(この空港は日本の感覚じゃあり得ないくらいデカい)、乗り換え時間30分未満。間に合うわけないじゃん、と思いつつ、そのスケジュールを勧めたのは他ならぬ航空会社なんだし。で、俺は健脚には自信があって、高地トレーニングもしてきたし、イベントとして受け入れた。さぁ、ギターを抱えて走る。もちろん間に合いましたとも。でもね。多分ギターを抱えて、キロあたり5分切る感じで3キロは走ってる。これ、無理だよ、鍛えてない人は。

ただ、思ったのです。僕が空港を走ってる間に、航空会社が僕の荷物を前の飛行機から下ろして、新しい飛行機に積み替えるなんて、絶対に無理。彼らの仕事っぷりは飛行機から見えてるけど、無理。だったら、こんなスケジュール勧めるんじゃないよ。エクストラの料金までチャージした上に、お互い無駄な労力使うじゃん。まぁ、それを見越して、ギターだけは「預けない!!!!!!!」と突っぱねたけど。

デンバー上空。昔に比べると、無駄なほどデカいアメリカは減ったと思うが、この空港だけはデカい。

デンバー上空。昔に比べると、無駄なほどデカいアメリカは減ったと思うが、この空港だけはデカい。

三つ目の空港、シアトル。そこから僕の隣に乗ったのは若い軍人。沖縄に赴任するのだと。身体廻りは僕の倍くらいある。いや、マジで。でもね、彼は「いまどき、こんなに心の優しい奴居るか?」ってくらい優しい。僕はね、沖縄のこと、思うことたくさんあるよ。でもね、だからと云って、彼は憎くも何ともないよ。田舎の両親のために、一生懸命自分の任務を果たそうとしているだけなんだよ。何だか、やりきれない。

世界の警察を自負するアメリカがまた何かをやらかした時、まっさきに犠牲になるのは最前線に居る彼のような男。

書かなかったけれど、滞在中に、ウインタースポーツの大イベントが隣の山であった。日本の少年、平野くんやショーン・ホワイトの滑りも、僕は生で観た。なんで書かなかったかと云うと、メイン・スポンサーのひとつが「NAVY」だったから。その事実に、僕は咀嚼が必要だったから。会場にはブースがあって、田舎の少年たちは親孝行だと思って「入隊」するのです。

つまりね。沖縄に赴任している軍人たちもオスプレイも確かに「アメリカ」なんだけど、彼らより、僕らはその巨大な組織を理解しなきゃってことです。

シアトル上空。いい街だね。

シアトル上空。いい街だね。

もうひとつ。海外に居て信じ難いのは。

東京にオリンピックを招致するって。誰が汚染されたところに行きますか?世界から日本がどう認識されてるのか、検証した方がいい。これで分かってもらえないなら、チェルノブイリの事故の後、ウクライナ復興のために「ウクライナでオリンピックだ」って、あなた行きますか?

北朝鮮の核実験がひどいって、そりゃヒドいけど、福島の方がよっぽどヒドいだろって、僕はアメリカで頭を抱えた。人のこと、云えるのかね、日本人。

嗚呼。

そして成田に僕の荷物はひとつも届かなかった。「シアトルにあるらしい」とな。さすが、だ。どうでもいいけど、身体と時間と金を使って、一心同体になってきたスキーとブーツだけは戻ってきてほしい。金じゃないんだよ。こういうこと、日本じゃまずあり得ない。どっちも、どっちです。ほんとうに。

日本の上空。

日本の上空。

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失われる一日 への4件のコメント

  1. きょーこ より:

    わたしも横須賀生まれで、街に出ればネイビーがたくさん歩いている環境で大きくなりました。
    実家のラーメン店にもお得意さんの海兵隊の若者がいて、船が出るときは父母を日本のParentと慕って別れ惜しみに来ていました。
    原子力船反対のデモがあった頃です。
    でも、彼はホントにいい若者だった。
    今でも実家には記念写真があります。

  2. きょーこ より:

    街に出ればネイビーが歩いていた横須賀で育ちました。
    実家の飲食店の父母を日本のParentと慕って来ていたネイビーもいました。
    原子力潜水艦入港反対のデモがあった頃。
    でも、船の出るときの記念写真が今でも実家にはあります。すごく優しい、誠実な若者でした。

  3. Froggy II より:

    3.11の震災で作物が放射能汚染された、ある有機栽培農家さんから伺ったお話です。
    某放送局が「取材させてほしい」というので承諾したところ、オンエアを見たら、まるで真意が伝わらない内容になっていた・と。

    その農家さんは自分の作物を放射測定器にかけて、汚染数値をきちんとお客さんに公表したい。でも組合や同業者は「そんなことをしたら、自分たちの首をしめることになる」と協力的ではない。この現状にとても悩んでいる——–
    ということをインタビューで話したのだそうです。
    ところがオンエアでは「放射能に汚染されて、農家は大変なんです。私たちも被害者」的な内容に編集されていて、農家さんはとてもショックだった・・・と。

    以前、私は現場で働いてたことがあり、幾つかの理由でマスコミの仕事を辞めました。先の農家さんの話にリンクするようなことも理由の一つでした。その世界が視聴者に対してどこか誠実じゃないこと、虚構とか、いろいろ。
    もちろん素晴らしいPDも存在するのだけれど、製作者側の主観 あるいはスポンサーによって事実が捻じ曲げられてしまうことは少なくないと感じています。

    そんなこともあり、3年ほど前からテレビは見ていません。年に一、二度見るくらい。新聞もやめました。仰るとおり、まったく困らないですね。ネットは情報選別の難儀はあるけれど、スピードと表現の自由さが生かされているからまだいいかな。

    ところで。「自分はどうして日本人に生まれてきたんだろ?」と以前友人に聞いたところ、彼女いわく「原爆を落とされた国に生まれてきたのは、過ちを二度と繰り返さないようにと魂がリベンジかけて日本を選んだのだと思う」と。私はこの考え方、好きです。

  4. K-GO より:

    洋さん、こんばんは。
    先日の出雲でのライブ、楽しませて頂きました!
    終演後にはTシャツにまでサインを書いてもらい、狂喜乱舞する気持ちを抑えながら帰路につきました。
    ついさっき、71歳になる母から「山口さんのサインば見せんね。」と言われ、母に見せました。
    以下、母との会話です。

    母「ほ〜、これが山口さんのサインばいね。ん?この『69』っちゅうとは何のことね?」
    私「う〜ん、何やろね…。」
    母「69やけん、ロックやろ。つまり、これからも『ロックばし続けろ』ちゅう、山口さんからのメッセージたい。有難かね〜、これは洗濯ばしたらでけんばい!」

    …ありがとう、お袋。俺も願生(がんば)るけんね。

    洋さん、本当にありがとうございました。お疲れが出ないように、お体をご自愛下さいね。

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