日別アーカイブ: 2016年9月1日

9月1日　木曜日　晴れ 音楽には力がある。と信じている。バカみたいに。 かつて九州の人々が福島を思いやり、今は福島の人々が九州を思いやっている。そのことをどうやって伝えたらいいのか。単純に音楽を愉しみに来た人も居るだろうし。落としどころを見つけるのは難しかった。それが熊本でも、東京でも。 でも、スタッフも含めて。僕らは音楽を、それを奏でる人のスピリットを、情熱を、志を。全面的に信じることにした。それしかできないし、一番の近道であることを、皆がそれぞれのキャリアと共に知っていたのだと思う。 このコンサートに舞台監督は居ない。敢えて、居ない。だからミュージシャンは前の演者のステージを見ることになる。そうやって、バントで次の塁に走者を送るように、スピリットは受け継がれ、それぞれの個性が発揮されていく。スタッフもミュージシャンも、一切の手抜きなく、その日できる最大の努力をする。愛でできたパイは幾層にも重ねられ、中空にはさまざまな風景が描かれる。それでいい、と思う。あとは受け取ってくれた人の自由でいい。愛のミルフィーユ、みたいにね。ふわふわなんだ。その隙間がいい。人が想いを委ねるだけの隙間があること。 毎年だけど。チャボさんが投げかけてくれる言葉で、僕は一年生きていける。僕の人生において、彼以上に誠実で、優しく、強い意志を持った人を見たことがない。どんな状況であれ、人として、音楽家として、どうあるべきか、背中で教えてくれる。一夜のステージに賭ける凄まじい情熱。けっきょく、それが音楽家にできることのすべてなんだと。 出演してくれたミュージシャンはそれぞれに主旨を理解してくれて、それぞれのやり方で風景を描いてくれた。コータローくんはメモ書きをもって、コンサートの主旨の説明しようとした僕に「それは意味がない」と言い切ってくれた。うまく喋れるかどうかより、何を伝えようとしているかの方が大事だと。彼のロックンロール・マナーに目が覚めた。ほぼ同級生。語ることは山ほどある。ほとんど、くだらない話だけど、それ大事。そしてステージでは音楽で会話する。ロックンロール・マナー、アゲイン。会うのに随分遠回りしたけど、ともだちは素晴らしい。 ヤイコさんは初日と二日目でギターそのものも、弾き方も変えた。より、アンサンブルが美しく聞こえるように。それって一日でできることではない。でも彼女はチャレンジする方を選び、そのスピリットは僕を奮い立たせた。勇気に乾杯。この5年間、彼女はずっと同じ体温で支え続けてくれた。何だか、トシの差なんて遥かに超えて、戦友みたいな気がする。「ヒロシさん、ずっと続けましょう」。5年前に云ったその言葉を実践し続けてくれているのは、もはや彼女だけ。だから、深い感謝と敬意で結ばれている。 TOSHI-LOW。体験した人は分かるよね？あんな男は地球に2匹居ないし、その必要もない。今になって思うけど、去年NHKでオンエアされたBRAHMANの番組への出演。ほんとうにオレは騙されてた。あんな演出だって、スタジオに行くまでオレだけ知らされてなかった。知ってたら、オファーを断ることを奴は知ってたんだろうね。だから奥の手を使った。笑。そして、今回初めて彼らが「満月の夕」を歌い続けてきた理由を、僕に伝えてくれた。正直に云って、とっても感激した。でもさ、それを先に云ってくれてたら、テレビだって喜んで出たっつーの！そのあたりが志のある策士TOSHI-LOWの彼たる所以なのかもね。でもチャボさんの横で嬉々として歌ってるとき、目がパンク少年に戻ってたの、見逃さなかったけど。笑。美しい光景だったよ。TOSHI-LOW、騙してくれて、ありがとう！ 最後になるけど。 本編の最後で一緒に演奏させてもらったチャボさんの曲「R&R Tonight」。曲が送られてきたときから、冷静に演奏する自信がなかった。その曲が素晴らしすぎて。どうして彼がこの曲を選んだのか、とか、いろいろ考えると演奏不能になる。ぐっと来た瞬間に感情をコントロールできなくなるのが怖かった。 でも、大丈夫だった。単なる感激を超えた場所に僕は立たせてもらっていたから。そのとき、自分ができるベストのことをやることに100%集中できていたから。そこで表現させてもらええることに深い感謝があったから。皆が信頼しているチャボさんのギター・テック、マサミさんに「もう少し弾いた方がいいですよ」とアドバイスをもらった。それも、深い愛だった。あの夜、グレッチは奇蹟的な音がした。甘くて、優しくて、意志の強い音だった。あれは僕が出したんじゃないと思う。みんなの愛で、それがロックンロールのマジックなんだと思うよ。 関わってくれたすべての人に。来てくれた人々に。ほんとうに、ありがとう。 ついしん 写真は後ほどたくさんアップします。