素晴らしい世界

1月18日 水曜日 曇り

「素晴らしい世界」って歌を書いた。それは「なんだかなぁ、な世界」な比喩でもある。

所得は下がり続けているのに、政府は防衛費のバカ上げを画策。結局、増税でそれを賄おうとする、まったくどっちを向いてんのかわからない政治家を選んでるのが国民自身というアイロニー。

ネットで垂れ流される情報は情報ではないこと。情報はタダではない。なぜなら情報にはきちんとした取材が必要で、それには金がかかるから。つまりタダで流れているものはなにがしかのバイアスがかかっているの理解した上で接していないと、こちらの頭がやられてしまう。よく見てみれば簡単にわかる。誰かの投稿から抜いてきたような薄っぺらい記事ばかりで、まったく体を使って取材していないことが。そんなものは斜めに読んで、自分の審美眼を鍛える材料にした方がいい。

映画を鑑賞したら1900円はかかる。制作、宣伝にかかった経費、映画館の取り分を考えるとそれが高いとは思わない。なによりも、一時停止できないのが最高。鑑賞中にトイレに行けない緊張感もいい。一方で、過去のものが大半とはいえ、見放題で月1000円というのがどういうことなのか。誰が儲かり、誰が一方的にその皺寄せを食っているのか。サブスクもしかり。そこを見据えて生きていないと、結局は文化の衰退をもたらす。自分の首を絞めることになる。だって、次作を制作する資金を回収できないのだから。

コの間に制作したインストアルバムの著作権を放棄してみた。結果、音楽を映画で使ってもらった。それはほんとうに嬉しかった。なにがって善き世界のために役に立っていることが、だよ。

かくいう自分もバカだったから。デビューしたときはなにも知らなかった。音楽にまつわる世界が巧妙に絶妙に搾取に富んだ世界で、それが世界の縮図であることを。自分が音楽を続けるってことは、そのシステムからの限りない離脱を意味した。随分抜け切れたと思うけど、完全には無理。そこの信号を守った時点で、残念ながら飼い犬であることに変わりはない。オレは信号無視をしろと言ってるわけじゃないからね。念のため。ただ、なぜ赤信号は止まらなきゃいけないのか、という疑問を忘れないでいたいってこと。システムの中で、できるだけ自由でいるために。

かようにどんな世界でも、搾取のシステムは確立されている。その中でどう生きるか、は。なかなか生きがいのあることではある。そのためのガソリン。たとえば、オレにはウォーレン・ジヴォンの歌だったりする。ショーン・ペンの映画もしかり。システムの中で健闘してると思う。ディランなんて、システムの中心にいる。世間的に成功するかどうかなんて、才能よりもマネージメントの力によるところが大きい。そこを見抜けるかどうか。

ひとつだけ例をあげておく。悪名高い著作権管理団体のことは名前くらいは聞いたことがあると思う。彼らが著作権の管理を委託されて、著作権料を権利者に分配している側面は確かにある。それは認める。ただ、その一方で理事と呼ばれる人間たちは文化庁の役人が天下り、ロクな仕事もせず、椅子に座っているだけで高額な退職金を得る。その金のために、地方にいるハイエナみたいな仕事をする連中が小さな喫茶店にまで押しかけて「著作権料」をむしり取る。それってヤクザのみかじめの方が守ってくれる「かも」しれない分だけまだマシな気がするよ。しかも、その金がきちんと著作権者に分配されたって話は聞いたことがない。だって、喫茶店でどの曲をかけました、なんて記録があるわけないんだから、そもそも分割できないわけで。それでも彼らは音楽教室からもむしり取る。いったい誰のために?

音楽はそんなことのためにあるのではない。もっと気高いもので、民衆のためにあるべきもので、もっと開かれたものであるべきだ。だから、勝ち目はないけど、屈したりはしない。ネコパンチくらいはお見舞いしてやる。

過去に某ソニーと裁判になったことがある。(知りたい人はblogを遡れば出てくる)いくらこちらが正しかったとしても、勝ち目はない。企業弁護士軍団によって、完膚なきまでに負ける。それは音楽家の権利のために立ち上がったのだけれど、応援してくれた音楽家は「たった一人」だった。笑。そんなもんだよ。

もうひとつ。コの最中に考えてたこと。今だって独裁者が罪のない人間を殺してる。ニュースは飽きて(これもヒドい話だよ)あんまり取り上げないけれど、ingで行われてる。じゃ、縁あってオレがその独裁者と面会したとする。そいつを殺せる立場にオレはいる。オレがこいつを殺したら、罪のない人たちは殺されなくなる。じゃぁ、お前(オレのことね)はどうする?

もちろん、そんなことはするわけはないけどさ。でもさ。突き詰めて考えるのは自由。脳味噌の中では。創作物が素晴らしのは物語の中で、殺人も不倫もできるってこと。それを自分の立場で考えてみるってこと。それは経験とは違うけれど、想像の素晴らしいところだとオレは思うんだよ。想像って創造する力だし、言い換えれば「思いやり」に等しい。

「なんだかなぁな世界」をクリエイティヴに生きようと日々もがいてる。衰えていく身体と向き合いながら。苦笑。

文書なげーな。まだ脳が回復しとらんのかもしれん。以降もっと簡潔に、こころがけます。

 

ついしん
あ。今日はスタッフと「秘密のお年玉」のパッキングをやります。グッズをゲットしてくれた人にね。もうすぐ届くんで、楽しみにしといてくださいまし。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

素晴らしい世界 への4件のコメント

  1. くぼ より:

    長文が書けるまで少しずつ体調が回復に向かっている様で良かったです。ここのところ毎日「Swindle」をしつこいくらいリピートで聴いています。だから今日のブログはいつも以上に響きます。

  2. ナカムラ より:

    今の時代が「素晴らしい世界」なのか否かはもがきながら生きている人たちが大半なのではないかと思えます・・。
    表現することが職業ではないけども、「素晴らしい世界」になればと日々の生活や社会への働きかけが必要で、そういう意味でも日々とてもHWの音楽に励まされています。

    数年前に西川美和監督による「すばらしき世界」という映画がありましたが共通するこの世の中のアンチテーゼになっていると思って観てました。
    そんなことを思い出してしまいました。

    いつもありがとうございます。

  3. ペペロンチーノましろ より:

    山口さん 皆さん こんばんわ
    先週のタイジさんとジョーさんのラジオで”満月の夕”演ってたよ。ほとんどはゲストの片平里奈ちゃんが歌ってたんだけど、タイジさん(お満月♪は)苦手といいながらもだいぶ上手になってたよ。まだ聴けると思うので、聴いて点数つけてあげてー。そこで”山口くんと中川くんとトシロウ&洋子ちゃんの歌詞が違うのに今気づいた”って話しててたのを聴いて、また昨日はちょうどlive for nipponのイベントだったから、家にあったソウルフラワー本をジョーさんにあげて読んでもらおうと持っていったら、なんと!ジョーさんはコロニャで欠席だったので、タイジさん本人に渡してきた。分厚い本だけど、ここ読んだら解るぜっちゅうトコにばっちり付箋をつけてあるので、そこだけでも読んでくれたらいいな(ふふふ)。そんな1月17日でしたの報告。私はずっと平常運転だけど、まだまだ平日はお客さんが戻ってこないねぇ。
    例のタピオカドリンクの店は、台湾からあげ屋→京わらび餅屋になったよ。せかせか生きてて長井の報告もせずにすみませんねぇ、でもあれはあれで年末のHEATWAVEのライブに、いい意味で影響があったと勝手に思ってます。

  4. タカ より:

    歌を書かれたのですね。「素晴らしい世界」どんな音に乗るんだろう?早く聴きたいです。

    映画の「すばらしき世界」自分も観ました。以前このご時世に苦戦する映画館が2,700円でしたかで一日映画見放題という企画をしていて、そんな機会に小学生の息子にいろんな映画を観せようとヒーロー戦隊ものをだしに使って連れて行って、はじめて子供向けじゃない映画を観させたのが「すばらしき世界」でした。子供ながら、世の中の生きづらさを、素直に生きる難しさを感じ取っていたようでした。映画館だったから集中してその世界に入り込めたのでしょう。この企画のおかげで映画館で観ることが多くなりました。洋画の字幕はまだ早いようで、年末に行った「Flag day」はさすがに難しかったようです。「IN TO THE WILD」(こちらはDVDで吹き替え版でした)が好きだって言ってたから連れて行ったんですけどね。

    そんな息子に「もうすぐヒロシさんからお年玉が届くよの品が届くよ!」と、LINEのビデオ通話で伝えたら喜んでいました。楽しみです。まだお身体も大変なのに少しでも早く届けて下さる気持ち嬉しいです。ありがとうございます。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>