現状、福島県相馬市にて

8月18日 土曜日 曇り

ほんとうに、何と云っていいのか。この二日間、何度も途方に暮れた。

僕は全国を廻る。マスコミの報道も次第に少なくなり、多くの日本人は着実に復興に向けて物事が進んでいると思っている。

こうやって、このところ月に二、三回は相馬を訪れる僕の目に映るものは、そこに暮らす人々から聞かされる話は。嗚呼。良くなるどころか、深い深い、ほんとうに根深いところで悪化しかしていないのだった。ほんとうだよ。

僕は「もう折れない」と云ってきたけれど、ときどき自分の無力さが情けなさすぎて、どんなに力を尽くしても、状況は悪化しかせず、ニンゲンであることを止めたくなる。多くの人は僕のことを情熱に溢れ、決して諦めない、強い人間だと思っている。そりゃね、ヘタレだと思われるよりはマシだよ。でも、ほんとうはそんなことはない。弱いし、情けないし、疲れるし、一日に一回はここから逃げ出したいと思う。でも、それをやったら、自分で自分を許せなくなる。だから、徳俵に足をかけて何とか踏ん張っているだけ。僕は自分が正しいと云う気はない。正しい訳がない。でも、すべての日本人が自分のキャパシティーの中で、5%だけ、苦しんでいる人を思いやってくれれば、こんなことにはならないとは思う。

いくつか。書いておかなければ。

街ではプールがオープンしていた。屋外だよ。確かに客は少なかったけれど。言葉を失った。そこの線量は0.30マイクロシーベルトだった。

夏休み期間中。多くの学校で「除染」が行われていた。学校の除染は必要だ。当たり前だ。誰も文句を云うはずがない。でも、聞けば、除染はゼネコンが受注する。孫請けを通り越して、7世代まで達して行われる工事もある。いったいどれだけピンハネされているのか。働かずとも、カネを手にする人間がいる。新しく生まれた巨大な利権。カネの出所は税金。そして、おそらく消費税は上がるだろう。原発作って、事故を起こして、誰も責任を問われず、人々は苦しみ、今度は亡者たちが新しい利権に群がる。ほんとうに大切にしなきゃいけないことは何だ?

来週、僕はこの街のとある小学校の始業式の後、子供たちの前で演奏することになるだろう。校長先生に頼まれたからだ。そこはとても線量の高いところだ。僕らは下見に行った。敷地内にはモニタリングポストが設置されている。淡々と0.85マイクロシーベルトと表示されていた。校庭はここも除染作業中。それでこの数字だ。居合わせた全員が無言になった。間違って欲しくないのは、僕らは生徒や先生、そして親御さんを責めているのではない。そんな資格なんてありゃしない。彼らがどれほど苦しんできたか、まだお会いしてないけど、想像するに余りある。

僕はいったいどんな顔をして演奏すればいいのか分からない。笑顔になれるか?難しい。作り笑顔なんてバレるに決まってる。こんな国にしてしまって、ほんとうにごめんなさいと謝ればいいいのか?そんなことしたって、子供を苦しめるだけだろう。ひどく、苦しい。

僕らは「国民は平等だ」と教えられて育った。いったい、何処か平等なのか教えて欲しい。ここで起きていることは、国家による殺人行為に等しい。あなたの子供がやむを得ない事情で、この学校に通わなければならないと云う状況を想像して欲しい。あり得ますか、それ?

このようなことを解決するには、国民がこの事実を知り、自分のことに置き換えて考え、国を突き動かし、国策で解決する以外に方法はない。方法は、、、ない。

そして。書きたくないけど。一番にぎわっているのは、、、。パチンコ屋なのだった。悲しい。

豊かな漁獲を誇った港。唯一、獲れていたタコすらも、今は獲れていないそうです。

豊かな漁獲を誇った港。唯一、獲れていたタコすらも、今は獲れていないそうです。

嗚呼。

嗚呼。

外で泳ぎたい、という子供の気持ちを非難することは僕にはできない。

外で泳ぎたい、という子供の気持ちを非難することは僕にはできない。

除染作業中の隣町の小学校。

除染作業中の隣町の小学校。

見てください。

見てください。

この物質が撒かれるようです。

この物質が撒かれるようです。

この小学校の線量です。

この小学校の線量です。

おなじく除染作業中の某小学校。

おなじく除染作業中の某小学校。

この小学校の敷地内の線量です。信じたくないです。

この小学校の敷地内の線量です。信じたくない。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

現状、福島県相馬市にて への3件のコメント

  1. 川村 周史 より:

    今日の日記を拝見してコンピュータの前でうんうん唸ってしまいました。相馬市のホームページでも確認してみましたが・・・。

    瀬戸内寂聴さんが大飯原発再稼働のハンストの時に「90年生きてきて 今ほど悪い日本はなかった」とおっしゃっていましたが、現在の状況は第二次世界大戦よりひどい状況だと思います。なぜなら現在の方が放射性物質、核燃料の量が桁違いに多いからです。

    やはり今は戦時中と同じような状況なのだと思います。メディア、情報はコントロールされ、社会にはまるで平時であるかのような強力な力(正常性バイアス)が働いているように感じています。

  2. Hidekazu より:

    いつも色々なこと考えさせられながらブログの方、拝見しております。

    一つだけ友人たちの名誉を守るために言わせてください。
    僕にはゼネコンで働く多くの友人がいます。当日の日記、ゼネコンの人間は働かずにピンハネしてカネを手にする(ともとれる)一文がありました。これだけは完全に誤った認識です。
    ゼネコンの人たちは直接作業をしていないので、何もしていないと誤解している人が多くいます。非常に悲しいことです。では、ゼネコンは何をしているか? 例えば今回の除線作業であれば、除線に必要な機械は何か、処理した土をどこへ持っていくか、どのような手順で作業を進めればよいか、それに必要な人数は・・、等々を総合的に判断して、それぞれの専門業者(いわゆる下請けの方々)にお願いするのです。
    身近なことに置き換えて考えてみてください。例えば、数日にわたるロックフェスティバルを開催するなら、舞台を設置する人、宣伝をする人、トイレを手配する人、いろんな人がいると思います。そして、それを総合的にとりまとめる事務局の人がいると思います。ゼネコンは、まさにその事務局にあたる仕事をしているのです。

    そしてもう一つ付け加えるならば、ゼネコンで働く人の日当は下請けで働く人たちのおそらくは半分以下です。

    ゼネコン=悪とするマスコミが植え付けた風潮に、多くの日本人が同調している現状が残念でなりません。
    少なくともゼネコンで働く僕の友人たちは、どうすればみんなが住みやすい世の中になるかを真剣に考えています。一生懸命働いています。ピンハネしているなんてことは絶対にない。それだけは忘れないでほしい。

  3. より:

    Hidekazuさんのコメントの意味は良くわかります、命を張って作業する人々がいることも、ただ残念な事にこの国のゼネコンのシステムは奇麗事じゃ無い汚れた部分が多いことが事実です。
    私もそんな世界に居たことがあります、大きな事業には利権を貪る暴力団のような業者や天下り業者も多く、また政治家の親族会社が近くにあれば使わなくてはいけない事も多い。
    自分で汚れた汚い事をやっていることが解っていても組織の中ではしょうがない問題も多くあったり。
    だからこのシステムで本当に裏切られているのは最前線で働く人々、そして裏切っている事に後ろめたさを感じながらそうして働くしかない受注業者。
    金で解決できないかも知れませんが中間の会社が無ければもっと現場に対する保障もできるんです、人も増やせるんです。
    その中間にいる貪るだけの業者を育ててしまったのは問題から逃げようとするゼネコン、私もそうでした。
    その業者を入れることによって様々な問題をうやむやにしているんです。

    願わくばHidekazuさんの友人のような真っ直ぐに働いている方たちが報われるように。

    長文駄文でしゃしゃり出てしまい申し訳ありませんでした。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>