勇敢であること

2月9日 土曜日 雪

昨夜から、たくさんの雪が降った。giftだった。

崖に行った。ここはエクストリームやダブル・ブラックと呼ばれていて、この山の中でも難易度がもっとも高い部類に入る。吹雪いて前が殆ど見えなくなったりもするので、崖の上で、僕は斜面の状態を目で確かめていた。岩がどこにあるとか、どこが凍っているか、とか。その上でだいたいのルートを決めなければ、僕の技術では危険なのだ。上手い人は何も考えず、その時浮かんだインスピレーションに導かれて突入していく。

後ろから変わった滑り方をする大きな男がやってきた。どんなメソッドも当てはまらないような、細くて長いやじろべえが、雪に斜めに突き刺さっているような滑りだった。彼は僕に挨拶をして、ためらいもせずに崖に突っ込んでいった。脇を通りすぎるとき、我が目を疑ったのだが、彼には左足がなかった。義足もつけていなかった。大きな身体を支えているのは一本のスキーだけ。決断したなら、身体ごとのめり込んでいくようなオーラがあった。

目が見えない人も、身体がまったく動かない人もスキーをする。素晴らしいと思う。もちろん、隣にはサポートする人たちがいる。でも、彼は独りでここにやってきた。そして、僕より勇敢で、LIFEをまったく諦めていなかった。彼が足一本で滑ったから、僕は心を動かされたのではない。彼が自身の可能性を信じている姿にモーレツに感動したのだ。Fear is a man’s best friend。アゲイン。ありがとう。

「根本的な才能とは、自分には何かが出来ると信じることだ」。by ジョン・レノン、アゲイン。

彼がこの崖を下りていった。

彼は吹雪のこの崖を下りていった。

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勇敢であること への1件のコメント

  1. Froggy II より:

    その場面を想像すると…胸の奥でまたひとつ灯がともる。
    誰かの生き方に励まされて生きている自分。

    「あんたは自分の信じてるとおりに生きてるかい?」
    入院中の父に聞かれたことがある。
    「信じるとおりに生きたら、犠牲にするものが生まれる。そんなのキレイごとじゃん」と答えたら、彼は黙ったままだった。
    父が他界して11年経った今、同じ質問をされたらこう答える。
    「まあ、ぼちぼちね。」と。

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