日別アーカイブ: 2011年2月19日

60 is cool

2月19日 土曜日 曇り その男の名前はIan Smith、スコットランドからアイルランドに移り住んだローカルミュージシャン。パブからパブへと渡り歩き、ギター1本で家族を養う。初めて会ったのは、アイルランドはドニゴールにある小さな街のパブ。多分、17,8年前の話。 最初から彼とは気が合った。初めて一緒に演奏したときから。かの国のローカル・ミュージシャンのレベルはとんでもないもので、僕は自分がプロフェッショナルであることが恥ずかしかった。訪れる度、彼は地元のディープなセッションに連れて行ってくれ、僕はそこで腕を磨いた。詳しくは書かないけれど、稀にとんでもない人物がそこに居て、フツーに演奏していたりもする。文字を持たなかった人たちの「口承」の文化はほんとうに奥深いのだ。あれは「研究」するものじゃない。分からない曲は弾かずにじっと耳を澄ましていればいい。身体に染み込んできたなら、弾けばいい。ただ、それだけのこと。でも、僕はtradは演奏しない。あれをやったところで、彼らより素晴らしい演奏なんて出来るはずがないから。 年の暮れ。ドニゴールのフジヤマ。エリガル山の麓で、アルタンのオリジナルメンバーである、故フランキー・ケネディーを偲んで音楽祭が催される。彼の偉業をたたえるその祭りはフレンドリーだけれど、神聖な空気に満ちている。そこのステージに立てるよう、手はずを整えてくれたのもイアン。あの場所でノンマイクで演奏したこと。老若男女から割れんばかりの拍手をもらったこと。それが僕にどれだけ力を与えてくれたことか。 彼は僕にたくさんの歌を教えてくれたのだけれど、中でも一番ぐっと来たのが、ドニゴールの人間なら誰でも知っている「the homes of Donegal」。何だか僕のことを歌ってるような気がして、日本語に訳して歌うことにした。それは後にドーナル・ラニーのプロデュースでレコーディングされ、アルタンによって、本国に持ち帰られ、ラジオでオンエアされ、この歌を歌わせたら右に出るものは居ないポール・ブレイディーの耳に届き、来日した際、彼に「ありがとう」と云われるに至った。こんな風に人生は不思議な縁で繋がっていく。悪くない。 10年くらい前、彼は人生初めてのソロ・アルバムをレコーディングしていた。その時彼は50歳。その話を聞いただけで、僕は涙が出そうだった。何と云う情熱。彼はここまでたどり着くのに、毎晩演奏し続けて、35年くらいかかったのだ。信じられない。彼は僕に参加して欲しい、と。もちろんだよ。何だってやるぜ、君のためなら。意気揚々とプロデューサーであるマナス・ラニー(彼はカパーケリーのメンバーで、ドーナルの弟でもある)のスタジオに行ったなら、僕に用意されていたのはハーモニカだった。がっくし、ギターじゃないんだ。でも、その歌は彼の少年時代を歌ったもので、ぐっと来た。アルバムタイトルは「restless heart」。曲のタイトルは「hometown」。彼の心情そのままだった。 かの街の連中が僕の所在を血眼になって探していたのだと。近年、僕はドメスティックな活動に終始していて、6~7年は訪れていなかったのだ。いわく、イアンが60歳になるから、ヒロシからお祝いのメッセージが欲しい、と。こうして、また僕らはぐっと近づいた気がする。返信に「60 is cool. 気持ちは25歳のまま、毎日音楽と向き合ってるよ。お互い素晴らしい音楽を創ろう」、と。 Ian Wow, superb! So you are 60 years old now. Congratulations!! Thank you for being here. In my country, people put on red clothes to … 続きを読む

カテゴリー: 未分類 | 2件のコメント