日別アーカイブ: 2014年3月26日

失われる一日、そして「それぞれの愛の欠如」。

3月26日 水曜日 曇り 失われる一日。 僕が乗るべき飛行機がなかなか到着せず、door to doorで丸一日以上かけて、帰りました。駐車場で主人の帰りを黙って待つクルマ、イグゾースト、おふとんの国の住人、卵焼き、菜の花のおひたし、朝粥、バラカンモーニングから流れるディヴィット・リンドレーのラップ・スティール。 全力中年、見事なまでに元気です。たとえ不在連絡票に溢れていたとしても。今から雨が降る前に海沿いを走ってきます。 映画配給会社のアップリンク(僕が云うのも何ですが、素晴らしい会社です)の方が「ダブリンの時計職人」という映画を送ってくださいました。昨日、飛行機の中でようやく観ることができたんです。 何と云うか。 心が震えました。 ————————————————– あくまでも僕の所感です。 この映画は僕にとって、登場人物それぞれの「愛の欠如」を描いたものでした。普段から、そのことに敏感に生きてきたがゆえ、深く揺さぶられたのだと思います。 ものごころがつかない幼い頃に、愛をもって抱きしめられたかどうかが、その後の人生に大きく影響します。DVを受けて育った子が、残念ながら自らもその過ちを繰り返すことが多いように。「無償の愛」を幼少の頃に受けたかどうかはある種「決定的」な問題なのです。見事な中年になった僕にとってでさえ。 ニーチェは「善悪の彼岸」でこう語ります。 「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心ぜよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」。 血に流れる、逃れようがない、自らが内包するモンスター。 かつて、イギリスのヒースロー空港内で、アイルランドに向かうターミナルは差別的なほど遠くに置かれていました。尋常ではない距離を歩かねばなりません。けれど、その小さなターミナルには突如パブが出現し、カーペットは緑色になり、人のいいおじちゃん、おばちゃんに溢れ、彼の国に渡る前からそこはアイルランドになるのです。 それがいつの頃からか、そのターミナルにエグゼクティヴな人たちが増え、携帯電話を手にするビジネスマンで埋め尽くされるようになりました。やがて、そのムーブメントは「CELTIC TIGER」と呼ばれ、土地の値段は上がり、まるで日本のバブルのような状況を呈してきました。 僕は思ったのです。これは彼の国にとって、初めてと云っていいほどの好景気かもしれない。けれど、彼らはこんなことが長くは続かないことを本能的に知っているはずだし、今何を大切にしなければならないのか、ちゃんと考えているだろう、と。あの長く哀しい歴史の中で。 どんな時代であれ、それが何処の国であれ、大切なのは「愛」だけだと僕は思うのです。崩壊したバブルの後、彼の国からこのような映画が現れたことに、僕はひどく励まされます。 多くは語りません。「ダブリンの時計職人」、アンテナにひっかかった方は是非、足を運んでみてください。2014 年3 月29 日(土)、渋谷アップリンク、新宿K’s cinema他全国順次公開だそうです。詳細、トレイラーなどはリンク先のオフィシャルサイトを。 ついしん この映画の音楽、やりたかった。

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