day#013、家に帰る、そしてグレイプバイン

7月22日 火曜日 晴れ

いつまでもこんなバカなことができるとは思っていないけれど。

多くのシンガーが新しい歌を書けなくなるのは動機がなくなってしまうからだと思う。考えてみればそれは理にかなっていて、大人になって、それなりの地位を手に入れてしまえば、市井の人と接したり、社会の矛盾に直接触れ合う機会は激減。セレブリティーであることは表現者にとってはかなり危険なことになる。「ネブラスカ」を今のブルース・スプリンスグティーンが創ることはできない。良し悪しではなく、それは当たり前のこと。

望んだわけじゃないけど、無駄にセンシティヴな感受性がはっきりとある。アンテナが受信してしまうのだから仕方ない。その後の付き合い方を間違えると、それが自分を苦しめることになる。徹底的な経験主義は文献もネットも、要するに机の上のことはなにも信じない。自分が体験したことだけで自分を作り上げていくこと。

記事なんて、誰かの主観が必ず入っている。そこをきちんと差引かなければ、情報として受け取らない。そして、それは断じて「経験」ではない。そこを勘違いするから、おかしなことになる。あくまでも自分の場合。知ったような錯覚を起こすのがいちばん危ない。

自分のためにやったのではない。役目として、この時代に老齢にさしかかったソングライターが歌を届けるには、まずはこの国をできるだけ自分の目で見てみたかっただけ。なんなら、芭蕉のような移動方法がベストだと思う。でもまぁ、それにいちばん近い方法として、イージーライダーに育てられたオレはハーレー・ダビットソンを選んだ。

旅はプロセス。目的地に行くことが旅ではない。だから、自力で地図を読み、天候を読み、たまには雨に打たれ、ドロドロになることに意味がある。予定通りにその場所に着くのは目的にはならない。ただし、ライヴがあるわけだから、できるだけベストの体調で必ずそこに到着することは求められる。書けば、これだけだけれど、これはかなりクリエイティヴィティーが求められる。矛盾するようだけれど、そこにやりがいがある。

ただでさえ酷暑だったから。身体的負担はなかなかなものだった。考えぬいてプロテクター入りのメッシュの上下を着ていたけれど、発汗量が半端なく、ベルトの穴がどんどん細い方へ移動して、ついには穴がなくなってしまった。

ヘルメットをかぶっているのに日焼けして、ある日思った。ちょっとだけ漁師のようないい顔になってきたなぁ、と。望んでいたことだ。嬉しかった。

多くの人に会った。どの街でも「まだこの時代にこんな人がいるんだ」って人物が。そのことに、とてもとても救われる。願わくば自分もそうありたいものだ。どの街でも「まだこんな風景が残っていたか」という出会いがある。そのことにとてもとても救われる。

そして、母なる惑星は破壊が壊滅的に進んでいる。六ヶ所村と福島の浜通りの6号線。ぜひ自分の目で見てください。僕らの欲望のツケを払うのは僕らではなく、未来を生きる子供たち。その厳然とした事実に、自分に吐き気を感じて立ち直るのは難しかった。

ただし、自分は無力なので、という誰もが吐く言い訳はぜったいに言わない。オレは最後の1匹になっても、自分のやれることをやる。

ロックンロールは自分を奮い立たせてきたのだから、自分で演奏することで奮い立たせたのです。ギター一本で。

最終公演地、水戸の最後の曲でついにギターから音が出なくなった。最近のヤイリギターは脆弱だなぁ、と思います。このくらいのハードな旅についてこいよって。じゃなきゃ、相棒とは呼ばないよ。

水戸からの約200キロをひと思いに。

家にたどり着いてびっくり。オレはこんな快適な家に住んでいたことを知らなかった。ここはウェールズ人のオーナー夫妻と不思議な縁で守っているオレンジハウス。家族にも心配をかけてほんとうに申し訳なく。

どんなに疲れていても、その日の終わりに相棒をピカピカにします。それが事故を減らすひとつの方法か、と。なので、今日は隅から隅までピカピカに。あとはバイク屋ですべてのオイル交換を。80キロくらいでハンドルがブレるので、ひょっとするとステアリングダンパーをつけなきゃかも。

リンドバーグにあやかって、自分のバイクを「sprit of Fukushima」と密かに呼んでいます。今回親御さんの介護でくることができなかった友人が贈ってくれた「NO REGRETS」というバックルがシーシーバーにつけられているのです。

大病を患った友人と一緒に仕事ができて、よかった。足を怪我したドラマーと一緒に演奏できてよかった。なにはともあれ、我々にとって最高の財産は健康だから。

もー、みんなに筋トレ教えようかな。笑。

第一次産業のともだち、そして田んぼでの草刈り。学ぶことは山のようにある。田んぼはね、セザンヌの絵より美しい。でも、「ここにムラがあるでしょ?ここに草が生えてるでしょ?」。オレにはぜんぜんわからないんだよ。こうやって、技術は受け継がれてきた。尊いんだよ。だからさ、見ようとさえすれば、見えてくるものはたくさんあるんだ。

テレビとネットを捨てて、旅に出ようぜ。

素晴らしい旅でした。関わってくれたみなさん、ほんとうにありがとう。オレはちょっとだけ、憧れてた漁師になったよ!笑。

さすがに2週間2500キロ、5本のライヴ。帰ってきたらボロボロを通り越して、なんだろう、出汁をとったあとのいりこ、みたいな。

でもね、大好きなグレイプバインが横浜でライヴ。そのお誘い。先日長田進さんと彼らの曲を演奏して、とっても良かったし、鍵盤奏者の高野さんのお誘いだし。

良し!無理してでも行こう。

日本のバンドがここまで到達したのか、という喜びに満たされました。楽曲、演奏力、アレンジ、ダイナミクス、発露、アンサンブル、そしてなによりも田中くんの歌唱力!まじか、あいつすげーな!

素晴らしかった!ほんとうにいいバンド。シングルコイルとハムバッカーのアンサンブル、とってもグッときました。

いろんな風景が目前に浮かんでは消える。肉体性に満ちた精神性の高い短編映画をたくさん見ているような感覚。

ありがとう!行ってよかった。

自分の町に帰って、いつもの店に顔をだして撃沈。家族によると「打ち上げられたモズクのように」寝ていたそうです。笑。

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day#013、家に帰る、そしてグレイプバイン への1件のコメント

  1. yuka より:

    「打ち上げられたモズクのように」
    ぶふふ わかるような気がします(笑)

    尊敬するヒロシさんに
    大好きなグレイプバインの今を気に入っていただけて
    嬉しいです

    エネルギーをチャージして
    またいろんなことにチャレンジしてください
    このブログをみると暖かな気持ちになります
    ありがとう

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