日別アーカイブ: 2023年10月10日

その言葉

10月10日 火曜日 曇り 枕元にある本たち。なぜか新作はベッドで読まず、寝る前に読むものはソローか星野道夫さん。頭の中に深い森や行ったことのないアラスカの風景が拡がって、やがて眠くなる。何度同じ本を読んでも、豊かな睡眠導入剤であることに変わりはなく。旅の間も必ず一冊は持っています。 昨日は「イニュニック」を読んでいて。いったい何度目なんだろう。何度も読んだはずなのに、ある一節がひどく腑に落ちて、その言葉を噛みしめながら眠りに落ちました。夜中に起きても、まだその余韻の中に。いわく。 ———- 「ふつう絵を描く前のキャンバスは真白だね。そこに少しづつ色を塗っていくわけだ。私はいつの頃からか、まず初めにキャンバスを黒く塗りつぶすようになった。その上に色を重ねながら描いていくんだよ。 なぜそんな方法をとるようになったかというと、それは私の人生観が変わってきたからなんだ。私はね、人が持って生まれた一生というものは深い闇に満ちていると思う。この世に永遠に存在するものなど何もない。あらゆるものがいつか消え去っていく。そんなつかの間の人の一生さえ矛盾にあふれているんだからね。 考えてもごらん。このツンドラに咲く花々を美しいと思い、一本の花を地面から引き抜く。なぜその花が抜かれ、隣の花が残ったのか。人生はそんな理不尽さに満ちあふれている。 私は、人が生きていくということは、その人生の暗いキャンバスに色を塗っていくことなのだと思う。それも、どれだけ明るい色を重ねていけるということなんだ。だがね、黒いキャンバスの上にどんな明るい色を塗っても、その下にある黒はどうしてもかすかに浮き出てくる。だから再びその上に色を重ねていく。私はね、生きていくということは、そんな終わりのない作業のような気がするんだ。 ——— 感嘆。 ついしん 「花笠音頭」のCDR、当選者にこれから江ノ島郵便局から投函しまーす。

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