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縛られること

8月14日 月曜日 雨   この家にはちょっと手前まで光回線が来てる。テレビも見ようと思えば見れるけど、その手のものは一切引いていない。  その方がいいと思ったから。  とはいえ、これだけ長期に渡ってシャチョー不在ってのもさすがに無理な話なので、近所にauのアンテナが立ったという話を聞いて、auのポケットwifiってやつを借りてきた。こういう性格なので、一番速いやつね。最大ひと月50GBってやつだったんで、それを借りた。  しかーし、さっきから異様に遅いから調べたら、もう50GB使い切ってたのである。がーん。契約書によると、追加はできないとのこと。  こうなると、なんにもできない。オレ、バイクなんで、天気を調べてから出かけないと山じゃたいへんなことになる。  ほんと、脆弱だね。どれだけネットに頼ってるかってことがね。ダサすぎて、泣けてきたけど、なるようにしかならん。  さて、どうしたもんだか。  林業。  この家の木材は林業で名高い日田にあるゴンの山から伐りだされた。山に生えている段階から木材を選定するというシュールな体験をした。  ゴンは色男で毎日、鹿や猪と会っているので、瞳が綺麗なんである。でも、いざ山に入ると格好いいのなんの。林業ってむっちゃ危険な仕事なんである。大げさではなく、気を抜いたら命にかかわる。今はできた息子と二人で山に入るが、当時ゴンはたったひとりで山に入り、巨木を安全に伐り倒し、トラックに積むことができる長さに切り、一人で積み出荷していた。  嘘みたいな光景だった。木って平地に生えてるわけじゃないからね。  いわずもがな、安い輸入材に押されて、林業は瀕死だった。ゴンによると、今、苗木を植えても商売になるのは孫の代なんだと。つまり彼らは100年を見据えて仕事をしてるんである。今期の売り上げが、なんて世界じゃないのである。  ゴンはうちに来ると、壁や天井や梁をしげしげと見つめる。その姿が好きだ。自分が山から切り出した木がこうやって暮らしの中で生きていること。どんな仕事であれ、自分の行為が誰かの役にたっていると実感できるとき、人は生き甲斐を感じるものなんである。  コのせいでまだ実現していないけれど、ゴンJrに壊れてしまったテラスの修復を任せようと思ってる。失敗してもいいから、思いっきりやってほしいな、と。  家を建てたときにゴンが裏庭にこの家の梁の接ぎ木を植えてくれた。それがもう10メートルくらいにはなってるかな。その木の下にうちの犬や家族が眠ってる。

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