日別アーカイブ: 2025年2月23日

空白の時間をトラディションで埋める

2月23日 日曜日 晴れ 以前のように、日が暮れ、食事を終えて、ソファーに座ってウイスキーを飲みながらアナログ盤を聴く、みたいな、そんな優雅な時間はまったくありません。ほんとうに、まったくない。 では、いつ音楽を聴いているかというと。 移動中の車の中。家で24時間流れている某国のラジオ。ランニング中。こんな感じです。 ある日、ランニング中にふと思った。音楽にのめり込んだきっかけは、10歳の頃(1973年)ビートルズのLET IT BE(映画)を福岡市天神にある洋服屋「フタタ」で見たからです。つまり彼らの解散から3年後。 オレが生まれたのは1963年、ストーンズのデビューの年です。一方ビートルズは1962年。 これまでもビートルズは十二分に聴いてきたのだけれど、彼らのアンビリーバブルな活動(たとえば一年に二枚アルバムを出す契約とか)を時系列に沿って聴き直すことは、わたすが生まれてから、音楽に目覚めるまでの空白の時間を埋めることだと気づいたわけです。 初期のものはモノラルのシングル盤で聴くに限る(ぜひ体験してください。ひっくり返ります。ラジオで流れたときのためにむちゃくちゃに音圧が突っ込まれていて、グルーヴィーで超絶格好いい)んだけど、そんなことをしてたらマニアじゃん。CDは全部寄付してしまったので、オリジナルに近いものを買い直して、ランニング中に聴いています。 これがね。どえらく面白い。 録音に関する技術はほぼビートルズとそのスタッフが生み出したと言っても過言じゃないのかも。ブライアン・ウィルソンと影響を与え合っているのもアリアリとわかるし、ジョージの12弦ギターがバーズに与えた影響とか。このあたり、1月にモーガンにもっと聞けばよかったな。 まぁ、とにかく。とんでもないバンドです。全員がそれぞれにとんでもない。やんちゃなところから始まって、成長のスピード、浮き沈み、爆発に至るまで。世界じゅうを巻き込んで。たとえば昨日は「ラバーソウル(1965年作品)」を聴いてたんだけど、オレ3歳です。おぼろげな自分の原風景とその音楽を擦り合わせてみると、いかにとんでもないことが起きていたのか、よーくわかります。 CHABOさんは「オレはビートルズ、見たんだよ」って1966年の話を昨日のことのように目を輝かせて話してくれるんだけど、そりゃそうだろうなぁ。一生を変えるだけの体験だよなぁ。 ジェフ・エメリック(当時のエンジニア)が書いた「最後の真実」って本をいろんな人が勧めるけど、わたすは読みません。どんなに現場が酷かったとしても、そこから生み出された音楽だけ聴いているだけでいい。 空白の時間を補完することは、未来へと創造力を飛ばすのと同義なんです。その時代の興奮を体験できなかったがゆえ、送り手となった今、どうやってそれを中空に飛ばすのかってことです。ランニング中に時空を超えるんです。精神はワープしてる。それは過去に戻るってだけのことじゃないんです。ってわかるかな?   数日前にうぶけやの包丁の話書いたじゃん? リアクション、ほぼなかったけど、あれはとんでもないインスピレーションをもたらしてくれたんです。だから紹介したの。人形町も今やビル群。そこに当時の店構えのまま(1700年代創業)ひっそりと佇むって、どういうことかわかるよね?料理人や紙切り士がここの刃物じゃなきゃダメなんだって、やってきます。 素晴らしいのは敷居がぜんぜん高くないってところです。わたすのようなド素人にも優しく教えてくれます。下町で脈々と受け継がれてきた伝統。 で、使ってみます。今までの包丁はなんだったのか?と思うくらい切れます。あれから、料理熱が再燃。だって、楽しいんだもん。包丁を動かす行為がただ「切る」ってことじゃなくなってくる。 そんなトラディションをぜひぜひ味わってほしくて紹介しています。オレは兄貴分から伝えられた。素晴らしいものはみんなでシェアして、この伝統が次の世代に受け継がれてほしいって願っています。 で、みんな気になってるのは値段でしょ?サイトにも出てこないしね。わたすのような一般人が使えるダマスカス鋼のもので、3万ちょっとくらいです。これが高いと思うかどうかはそれぞれの判断だけど。 ちなみに、わたすは刃物を研ぐのが趣味だけど、これは自分でやれる範疇にないので、切れなくなったら「うぶけや」に行って研いでもらいます。一週間かかるそうです。でも、それがまたよくないすか? 時空を超えるトラディションを自分の発想や暮らしに役立てる。日々に活気が湧いてきます。 いろいろあるから、反応よければまた違う角度のもの紹介します。ただ紹介するだけってのは糠に釘打ってるみたいで疲れるんです。誰かがまた違うものを紹介してくれる。このblogはそんな善きことが交流する場所にならないかなぁ、といつも夢想しています。   自分自身で作りだした文明についていけなくなっているニンゲンって哀れだと思いませんか?ここは立ち止まって、ほんとうにたいせつにしなきゃいけないものについて考えるべきだと、わたすは思うのです。   澄んだ思考と、命の輝きは似てる。 最後にネイティヴ・アメリカンの素晴らしい詩を。星野道夫さんが日本語で紹介したんだって。   すべての暖かい夜 月光の下で眠れ その光を、一生かけておまえの中に取り込むのだ おまえはやがて輝き始め いつの日か 月は思うだろう おまえこそが月なのだと     … 続きを読む

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